さて、気になるのが、エコライブオフィスで実際にCO2を削減できているのかどうかという点ではないだろうか? エコライブオフィスはもともと別なオフィスがあった場所を改修して設置したものであるため、年間のCO2排出量の目標値を改修前のオフィスと対比して定めている。改修前のオフィスのCO2削減量が135トンであったのに対し、同オフィスでは試算で41.5%減の79トンに減らせるという。具体的には設備で50トン、働き方で6トン減らすことになっている。

設備で減らすと試算されている50トンのCO2のうち、照明による省エネが30トン、空調による省エネが14トンとされており、空調と照明が省エネのキーとなる。同オフィスでは、照明の省エネを図るために、LEDと自然採光を採用している。

LEDを採用した照明には人感センサーも備え付けてあり、人間の気配が6分間感じられなかったら、照度が落ちる設定になっている。照度は人間が不在の場所では200ルクスになり、人間がいる場所では300ルクス、500ルクス、700ルクスと3段階で調節する。実際、暗い場所の照明の下にいったら、人感センサーがピピっと青く光り、照明が明るくなった。人感センサーは照明と共に空調も調整し、人間の気配を6分間感じなくなったら送風を止めるそうだ。

また、自然採光を取り入れるために、天窓がオフィスエリアの中央に作られている。天窓付近のエリアの照明は他の場所よりも照度が落とされているそうだ。天窓は自動開閉機能付きのサッシを備えており、換気も行う。

写真左が人感センサー付き照明。人の気配を感じると左側のセンサーが青く光る。オフィスの真ん中には自動開閉する天窓が設置されている(写真右)

エコライブオフィスは開設して約半年になるが、CO2削減の目標値の約半分である28トンの削減を達成しているという。このまま順調に行けば、間違いなく目標は達成されるだろう。

同オフィスには、照明や空調のほかにも、省エネに役立つアイテムがたくさんある。それらのほとんどがまだ製品化されていないプロトタイプとのことだが、ここでいくつか紹介しよう。

1つは充電型デスク「マルチタスクテーブル+バッテリユニット」だ。デスクにバッテリを内蔵させて夜間のうちに充電することで、昼間は好きな場所で電気を使いながら仕事をすることが可能になるというものだ。同オフィスでは、他のオフィスで働く人が来社した際に利用しているという。

キャスターが付いているので、電源の場所を気にすることなく好きな場所で仕事ができるク「マルチタスクテーブル+バッテリユニット」

もう1つは「メタボ対策人力発電ステーション」だ。こちらは遊び心がある機器で、机下にあるペダルを漕ぐことで発電が行われるというものだ。発電した電気はPCや携帯電話の充電に用いることが想定されている。仕事をしながら運動できるので、"メタボ対策"ということらしい。「スポーツジムに行く暇がない」と嘆いている人にはうってつけのマシンではなかろうか?

自転車と同様にペダルを漕げば充電される仕組みなので、誰でも簡単に利用できる「メタボ対策人力発電ステーション」

これだけの施設が整っているとなると、気になってしまうのがかかった費用である。下世話だと思いつつも海老澤氏に聞いてみたところ、「改修作業も含めて7億円」という答えが返ってきた。ただ、「コストではなく投資」とのことだ。

海老澤氏は、エコライブオフィスには同社の社長である黒田章裕氏の思想が色濃く反映されていると語る。黒田氏は「環境の保護、業務のパフォーマンスの向上を実現するには、何かを犠牲にする必要がある。それが今までオフィスで確保されてきた快適さ」と考えているという。また、今後温暖化が進むと、これまでのように照明や空調を好きなだけ使うことが不可能な時代がやってくるかもしれないわけで、黒田氏は、そうした状況でも対処できるようなチカラを社員に付けてもらいたいと望んでいるそうだ。「社員には、いかなる状況下でも工夫をして働く知恵を編み出してもらいたい」それが、黒田氏の社員に対する望みだという。

実のところ、エコライブオフィスを取材するにあたり、まだ市場に出回っていないプロトタイプの省エネグッズや緑豊かな屋外・屋内オフィスを見てみたいという、物見遊山の気持ちが多少あった。しかし、エコライブオフィスを訪問してみて、省エネに対する新たな考え方を得たように思う。省エネと言うと、何となく"義務感"が付きまといがちだが、積極的に自然・環境に合わせた生き方・働き方を模索することで、今まで見えていなかったものが見えてきて何らかの変革をもたらすような気がしてきた。省エネに対するイメージが、"守り"から"攻め"に変わったとでも言おうか。資源の節約、コストの削減だけでなく、創造性につながる省エネ活動を目指す企業が増えることを期待したい。