米Qualcommは、台湾・台北市で開催されているIT総合見本市「COMPUTEX TAIPEI 2009」にあわせ、会場に隣接するホテルにプライベートブースを設けて同社の新技術を展示している。

ミニノートPCにSnapdragonを搭載した「スマートブック」

スマートブックの試作機として展示された、Androidが動作中の「Eee PC」

同社はARMアーキテクチャのモバイル機器向けプラットフォーム「Snapdragon」の提供元で、東芝製スマートフォン「TG01」(日本での機種名はNTTドコモ「T-01A」)が初の採用製品として発表されている。今回、スマートフォンに続くSnapdragonの新しい応用例として「スマートブック」という製品カテゴリを発表した。

近年、IntelのAtomプラットフォームを利用した「ネットブック」などと呼ばれるミニノートPCが人気を集めている。スマートブックは、ネットブックと同じミニノートPC型のボディにSnapdragonを搭載したもので、OSにはLinuxやAndroidなどを利用することが想定されている。言わば「形はミニノート、中身はスマートフォン」という構成だ。

フォームファクタはネットブックとほぼ同じで、アーキテクチャはスマートフォンに近い

ネットブックはフルサイズのPCと同じWindows XPが利用可能なものの、携帯電話のように常時電源をオンにした状態で待機させておくことは、消費電力とバッテリ容量の兼ね合いから現実的な使い方ではない。一方スマートフォンは、いつでも即座にインターネットに接続して使えるのがメリットだが、画面サイズが小さく、文書の編集など長文の入力が必要な作業には適していない。

スマートブックは、低消費電力ながら高速動作が可能なSnapdragonの特徴を活かし、携帯電話と同様の常時スタンバイ状態で、PCに近い用途での利用を実現しようとするもの。ネットブックとスマートフォンの間に位置付けられる機器で、両者のメリットを併せ持つとされる。3G、無線LAN、Bluetooth、GPSなどの通信機能を標準で内蔵することを基本としており、機器の想定サイズは重量2ポンド(約900g)以下、厚さ2cm以下。使い方にもよるが、8~10時間のバッテリー駆動を可能とすることを目標としている。

スマートフォンとネットブックの「いいとこ取り」を狙うスマートブック

展示会場にはスマートブックの試作機が出展され、ASUSTeK Computer、Compal Communications、Foxconn、Inventec、Wistronが製作したマシンが並べられていた。中でもASUSの試作機は、ミニノートPCブームの火付け役となった「Eee PC」にSnapdragonを搭載し、OSとしてAndroidを動作させるといったもので、各国の報道陣から注目を集めていた。各社とも具体的な商品化の予定は未定としているが、Qualcommでは今年中に最初のスマートブックを提供したいとしている。

今回はASUSとCompalがSnapdragon+Androidのスマートブックを試作。現行のAndroidは携帯電話サイズの画面解像度しかサポートしていないため、ミニノートPCの画面へはメーカー各社が独自に対応させている

Linuxベースのスマートブックでは、XandrosやThunderSoftのソフトウェアが採用されている

また、従来Snapdragon(QSD8250/QSD8650)のCPUコアは最大動作周波数が1GHzだったが、これを1.3GHzまで引き上げた「QSD8650A」が新たに発表された。年内のサンプル出荷を予定している。

802.11nチップの新製品

そのほか、IEEE802.11n対応の無線LANチップ2製品が発表されている。「WCN1312」は最大72Mbpsの通信が可能で、ベースバンドプロセッサー、MAC、RF送受信回路などがワンチップに統合されているためモバイル機器での使用に適している。大容量コンテンツなど転送に対応するため、最近では携帯電話等への無線LAN機能の搭載が拡大しており、この市場をターゲットにした製品と言える。もう1製品の「N-Stream Wireless LAN WCN1320」は、4×4のMIMOに対応し最大600Mbpsの通信が可能。いずれも今月中にサンプル出荷を開始する予定。

「N-Stream Wireless LAN WCN1320」を搭載した無線アクセスポイントのリファレンスモデル。家庭内にある複数の機器で同時にHD動画をストリーミングするといった用途に対応している

開発中の磁気共鳴型ワイヤレス充電技術「eZone」。プレート上に置かれたそれぞれの機器の充電状況を認識し、時分割で給電されるよう制御することで、複数の機器に対して同時に最適な充電が行われる