オシアナスの心臓部に、タフムーブメントが搭載されているのは既にご説明したとおり。"タフ"という言葉には、G-SHOCKに代表される耐衝撃技術、長寿命、ソーラー化など、時計の性能進化を追求し続けるカシオ技術陣の開発思想が込められているという。そんなタフムーブメントには以下の4つの特長がある。針ズレを自動で補正する「針位置自動補正機能」、世界6局の電波に対応した「マルチバンド6」、ムーブメント自体の耐衝撃性を向上させた「ハイブリッドマウント構造」、そして大容量ソーラー充電システム「タフソーラー」であること。そのうち、「ものづくり」において一番のポイントとなるのが針位置自動補正機能だ。針位置自動補正機能とは時計自身が針の位置を認識していて自分で補正する機能だ。

帯電防止仕様スーツ、導電仕様ブーツ、マスク、帽子を着用しないとムーブメント製造の現場には入れない

従来のムーブメントは、簡単に説明すれば、針を取り付けた時点で基準値(原点位置)が決まる。ところがタフムーブメントの場合は、部品の段階ですでに基準値が決まっている。タフムーブメントでは各歯車に穴がついており、その穴位置が合ったところが基準値となっているからだ。製造プロセスでは、それがピッタリ合うように組み立てを行わなければならない。従来は歯車と歯車の噛み合わせに気をつけて組み立てればよかったが、タフムーブメントでは歯車を組み合わせつつ、さらに穴位置を合わせるというより高度な組み立てが必要となってくるのだ。

新たに作られた「高精度生産ライン」

タフムーブメントを製造しているライン。まだ手作業の部分が残っているが、ステップバイステップで自動化を進めており、今春にすべて自動化される

タフムーブメントを組み立てるために新たに作ったのが高精度生産ライン「CA07」だ。ムーブメントは部品そのものがミクロンオーダーであるため、多少のゴミが付着しても機能しなくなる。そのためこのCA07はクリーン度が「Class1000」に保たれた部屋にある。ちなみにClass1000とは一辺が1フィートの立方体の中の空気に、1ミクロンのゴミが1,000個以下というクリーン度のこと。この部屋の床には小さな穴が空いており、上から流れてきた空気は床を通り抜けて床下のフィルターで取り込まれるようになっており、かなり厳重だ。

ポイントとなる歯車の部分の組み合わせは自動化されている

CA07のポイントは(1)穴位置を正確に合わせて組み立てること、(2)磁石と穴位置を合わせること、の2つであるという。時計の心臓部(モーター)には磁石(ローター)が入っていて、ローターは電気を与えない状態では特定の位置で停止する。この停止位置も基準値に関わってくるので、磁石と穴位置も合わさなければいけない。

機械が歯車を回転させながら、レーザーセンサーで穴の位置を確認して載せていく。複雑な穴はカメラで確認して組み入れ、最終的にそれぞれの歯車は穴の位置が合うようにして組み込まれる

さらに通常の時計の製造では着磁を最後に行うが、タフムーブメントでは組み込んだときに磁石の停止位置を合わせる必要があるため、着磁してから組み込む。部品は金属でできているため、磁化されると取り扱いが難しくなる。これをいかに行うかがポイントとなるという。タフムーブメントを生産するにはそれだけ高い技術が必要となるのだ。この後、待ちかまえるのは最終検査……。