Nokia(フィンランド)は昨年12月に英Symbianの買収を完了し、非営利団体Symbian Foundationの発足に動いている。Symbian Foundationでは、スマートフォンで最大のシェアを誇る「Symbian OS」、それにNokiaが開発する「S60」を中心にSymbian OS向けの2種類のUI(UIQとMOAP)を統合したUIをオープンソースとして提供することを約束している。

NokiaでS60研究開発担当上級副社長を務めるDavid Rivas氏に、S60の開発、Symbian Foundationの展望、競争などについて話を聞いた。

Nokia S60研究開発担当上級副社長 David Rivas氏。「日本市場撤退は残念な決断となったが、将来、なんらかの形で対応できると信じている」とコメントした

――Nokia社内のS60開発チームとSymbian Foundationとの関係を教えてください

Symbian Foundationには、Nokiaが買収したSymbianの資産を寄贈します。S60については、NokiaのS60開発チームがSymbian Foundationにコードを寄贈することになります。NokiaはSymbian Foundationをベースに製品を開発します。

Symbian Foundationは6カ月おきに最新のOSをリリースします。最初のバージョンは今年半ばにリリースされると予想しています。

――Nokia社内で進んでいるS60の開発動向について教えてください

現在取り組んでいることは、性能やユーザーインタフェース技術の改善のほか、強化という点ではタッチ技術の統合、グラフィックスやマルチメディア技術、代替入力方法のサポートといった部分に重点を置いています。また、無線技術やハプティックバイブレーションなどのハードウェア拡張もサポートしています。マルチプロセッサが利用されるようになるとも予想しています。

ユーザーインタフェースでは、タッチ、キーボード、その他のインタラクティブな入力方法に注目しています。

――(S60に統合されるUIである)NTTドコモのMOAP(Mobile Oriented Applications Platform)にはどのような期待をしていますか?

Symbian FoundationにおけるNTTドコモの存在は大きく、富士通やシャープなどのハードウェアベンダは重要な役割を占めると見ています。Symbian Foundationにさまざまな貢献してくれると期待していますし、確固たる理由から、NTTドコモがSymbian Foundationの端末を採用すると期待しています。

――UIがS60に統合されることで、Nokiaの支配が強くなるなどの懸念の声はありますか?

設立時、UIをひとつにすることで参加企業と合意しました。まずS60に統一したものでスタートし、今後メンバー企業からの貢献を付け加えていくことになります。Symbian Foundationは非営利団体で、参加企業はまったく同じ権利を持ちます。明確なガバナンスルールもあり、Nokiaの支配が強くなることはまずありません。

UIフレームワークがひとつであること、包括的なOSがひとつであること、これは非常に重要です。分断化を懸念する開発者に、明確なメッセージを提示するものです。Symbian Foundationで最大の功績は、Symbianの分断化を防いだことと言えるでしょう。

――逆に、端末メーカーの個性がなくなってくる可能性は?

そのようなことはないと思います。Samsung、Sony EricssonなどSymbian Foundationのメンバー企業はどこも、UIを通じで自社端末の差別化を図ろうとしています。

重要なことは、携帯電話業界ではもはや、どのメーカーであっても1社で1台の端末をすべて開発することはできない時代になった、ということです。端末設計に必要な機能は非常に複雑で、どのメーカーも自社ですべてをまかなう余裕はありません。

選択肢は、Windows Mobile、Symbian Foundation、それにある種のLinux(AndroidとLiMo Platform)に限られています。Windows MobileはどれもMicrosoftの端末に見えます。私が見た限り、Androidの2機種は似通っています。違いを実感できるのは、Symbian Foundationです。つまり、UIを通じで端末を差別化したい携帯電話メーカーは、Symbian Foundationを選択する傾向にあるということです。Symbianではそれが可能だからです。Symbianプラットフォームでは、カスタマイズの余地は多く広く深く残されています。