新発売されたカシオの薄型コンパクトデジタルカメラ「EXILIM ZOOM EX-Z400」(以下、EX-Z400)には、動画と静止画の合成を行う「ダイナミックフォト」機能が搭載されている。ダイナミックフォト機能はどのような意図で搭載されたのか、またその魅力について、EX-Z400の企画を手がけられた今村圭一氏に語っていただいた。

動く被写体を連続20コマ撮影し、その被写体をカメラ内で切り抜いて別の静止画と合成する「ダイナミックフォト」機能を搭載した「EX-Z400」

――新機能ダイナミックフォトを搭載したEX-Z400の開発コンセプトについてお教えください。

今村圭一(以下、今村)「Zシリーズは標準的性能で多くの方に使っていただくスタンダードなコンパクトデジタルカメラで、国内においては中核を担うモデルとなっています。これまでEX-Z100、200、300と作ってきましたが、このところ画質の底上げが繰り返されており、EX-Z400ではEXILIMエンジン4.0を搭載し画質が飛躍的に向上しています。

カシオ計算機 QV事業部 開発統轄部
商品企画部 今村圭一氏

従来、スタンダードモデルでは"シャッターを押すだけでそのまま撮れる"という、ベーシックな基本性能を追いかけてきました。今後もこうした基本性能の追求をしていきますが、一方で"キレイに撮れる"、"失敗なく撮れる"基本性能がある程度完成の域に入ってきたという感もあります。EX-Z400では工場出荷状態のまま何も設定しなくとも、夜景はブレずにキレイに撮れますし、逆光補正や被写体の追尾も自動で行われます。

また、EX-Z400の場合は開発当初から、基本的なカメラの性能とは全く別に"使い方の革新"を考察していました。カシオにはもうひとつ『HIGH SPEED EXILIM』という一連のシリーズがありますが、こちらはデジタルカメラにおける"撮り方の革新"を追求しています。高速連写により必ずアタリの一枚が存在している、"シャッターチャンスを逃さない"という考え方に基づいています。今まで写真には"撮る楽しみ"と"見る楽しみ"がありました。それとは別の違った楽しみ方があるのではないか、という発想から生まれたのが『ダイナミックフォト』です」

――売れ筋のコンパクトデジタルカメラにダイナミックフォト機能を搭載したのはなぜですか?

今村「デジタルカメラのスタンダードを変えていこうと考えたのです。各社の売れ筋商品を比較してみると、見た目も機能も大きく変わらず、なかなか差別化できていません。そういう中でカシオができることとというのは、全く新しい市場を作っていく、あるいはスタンダードジャンルをガラっと変えて、新しい価値を生み出し需要を興すことだと思っています。ですからこれからは『ハイスピード』と『ダイナミックフォト』の2つの流れで、写真の"撮り方"と"使い道"を少しずつ変えていこうとしています。

「BS(ベストショット)」機能の「動くキャラクター」モードで、キャラクターの切り抜きが作成できる。その後、再生機能にあるキャラクター貼付けで合成する

ダイナミックフォトというのは被写体を切り抜いて、全く異なる背景(静止画)に合成する機能です。それをEX-Z400に搭載したのは、単に合成機能を持つカメラを作りたかったからではありません。創造力をかき立てる"創る楽しみ"を提供するカメラを作りたいと思ったからです。今回発表しましたダイナミックフォトは、あくまでスタートラインです。ゆくゆくはもっと違う使い方、楽しみ方を提案していくつもりです。

そもそも世界初の液晶を搭載したデジタルカメラ『QV-10』をリリースした当時、フィルムカメラをデジタルカメラに置き換えようという意図はありませんでした。液晶モニターを搭載することで撮ったその場で見て楽しむ、パソコンとつないで楽しむというような画像コミュニケーションツール的な意味合いが大きかったのです。今回のダイナミックフォトもカメラで撮って見て楽しむというだけじゃなく、創ることを通して周りの人とのコミュニケーションが生まれるものにしたいと思っています。デジタルカメラが単なる"写真機"を超える可能性は、実はこういうところにあるのではないでしょうか。こうしたところに発想を向けるのがカシオのものづくりの原点だと思います」……続きを読む