米事情:ほとんどのプライムタイムTV番組はオンラインで視聴可能

織田氏によれば、マーケティング関連のイベントの中では、ニューヨークで開催された「ad:tech」が世界最大級のものであるという。今回の特別セミナーでは、"デジタルテクノロジーはすべてのメディアをどのように変革していくのか"という「ad:tech New York」におけるテーマを軸に米国事情についての説明を行った。

日本ではようやくオンライン・ビデオサービスが浸透し始め、2月5日にはインターネット動画配信事業の「第2日本テレビ」から、2009年1月に単月黒字を達成したとの発表が行われるといった話題も出てきているが、米国においてはその比ではないようだ。織田氏いわく「プライムタイムのTV番組は、ほとんどすべて"無料"でオンラインでの視聴も可能となっている」。これに伴い、オンライン・ビデオサービス上での広告の利用が上昇し、それに関連して、視聴動向の調査は複雑化を見せている様子とのことだ。

すでに米国のプライムタイム番組の20%はオンライン視聴とのこと(IMMIの調査結果)

例えば、News CorpとNBC Universalが合弁して、2008年3月にサービスを開始した「Hulu」は、TV番組の配信を行っているが、「YouTube対抗」とも言われる同サイトは、2008年10月の動画視聴回数ランキング(米comScore調べ)で第6位に浮上し、急成長を見せている。第1位はダントツで「Google Sites(=YouTube)」なのだが、「2009年における広告費では、HuluがYouTubeを超えるだろうと言われている」という。織田氏は、米Integrated Media Measurement (IMMI)の調査結果を示し、「米TV番組がオンラインで視聴される割合は20%であり、その年齢層を見ると25~44歳が30%を占めている。これは、たぶん皆さんが想像するよりも高い数値だろう」と説明した。また、NBC放送がオンライン、モバイル、ビデオ・オンデマンドを使って取り組んだ「北京オリンピック」のクロスメディア放送を事例に挙げ、利用者の様々なニーズに細かく応えることのできるという"新しいTV視聴形態=テレビデジタル化"の実状を語った。

CMもカスタマイズの時代へ

続けて、ケーブルテレビやIPテレビにおける「個別ターゲティング」について説明が行われた。全米テレビネットワークやローカルテレビ局が注目している「Addressable TV Ad(アドレス可能なTV広告)」と呼ばれるTVターゲティング広告である。

"広告主が追跡可能な広告サービス"を提供するテクノロジーのことなのだが、米国ではVisible WorldやINVIDI Technologiesといった企業がテスト版のサービスを提供しているという。例えば、INVIDI Technologiesが提供する「IntelliSpot」は、第三者調査機関からのデータを統合し、地理、日時、デモグラフィック(人口統計学的な属性データ)、メディア/番組のジャンルといった細かい視聴者分類を行った後、ターゲットにあわせたCMのカスタマイズができてしまうというものだ。ターゲティングはもとより、ロングテールも視野に入れたサービスと言える。

織田氏は、視聴者自身が選択できる広告システムなどをデモビデオを使って紹介していたが、その内容を文章だけで伝えるのは非常に難しい。ad:tech Tokyoではこうした最先端のネット広告システムのデモも見ることができるだろう

このようなテレビ分野のターゲティング広告、あるいはインタラクティブ広告の配信技術に関しては、既にMicrosoftも目を付けており、この分野に必要な技術の一部を手に入れるため、昨年(2008年)6月、Navic Networksを買収した。Navic Networksのアプリケーションは、北米における3,500万台以上のセットトップボックス(STB、※)にリーチしており、今後、この資産を利用してテレビでのインタラクティブ&ターゲティング広告を展開しようという狙いのようだ。

家庭用のテレビに接続して、双方向通信を可能にする端末。ケーブルTV放送や衛星放送、地上波テレビ放送(デジタル放送、アナログ放送)、IP放送(ブロードバンドVODなど)などの放送信号を変換することによって、一般のテレビでの視聴が可能となる。