米AMDがSocket AM3版のAMD Phenom II X3/X4シリーズを発表した。Socket AM2+版のPhenom IIの発表が今年1月だったことを考えると、ちょっと急なSocket変更だが、AM2+そのものは2007年に登場した古い規格であるから、好意的に解釈すればAM3でPhenom IIが本領を発揮すると考えることもできるだろう。

Phenom II X4 810

Phenom II X3 720

そのSocket AM3版のPhenom II。AM2+版とのリリース間隔が短かったことも影響しているのか、発表されたラインナップの位置付けが少々微妙だ。AM2+版とAM3版をあわせたPhenom IIラインナップの全体像もわかりづらくなってしまった印象を受ける。そこで、最初に現状のPhenom IIのラインナップをしっかりと確認しておこうと思う。

まず、Phenom IIはAM2+版/AM3版、クアッドコア/トリプルコアを問わず、製造プロセスは45nm SOIで、ダイサイズは258平方mm、トランジスタ数は約7億5800万とされており、HyperTransportは3.0対応、コアリビジョンもC2で共通だ。CPUコアの世代としては同一世代と見ていいだろう。

左がAM3版で右がAM2+版のPhenom II。ピン穴がない4カ所のうち、2カ所でAM3版の方がピンが少ない

そしてSocketの互換性について。AM3版Phenom IIは内蔵メモリコントローラがDDR2/DDR3に両対応しているため、Socket AM3のマザーボードであればDDR3メモリと組み合わせて利用できるほか、DDR2メモリと組み合わせて既存のSocket AM2+マザーボードでも利用できる。逆にAM2+版Phenom IIはAM3マザーボードでは利用できないので注意したい。

■Socketの互換性
AM2 M/B AM2+ M/B AM3 M/B
HT1.0&2.0 / DDR2-800 HT3.0 / DDR2-1066 HT3.0 / DDR3-1333
AM2 CPU ×
AM2+ CPU ×
AM3 CPU

さて、位置付けが微妙と前述したAM3版Phenom IIのラインナップだが、クアッドコアのPhenom II X4 810と、トリプルコアのPhenom II X3 720(Black Edition)、Phenom II X3 710という3モデルで、うちX3 710は現時点で国内向けリテールパッケージの店頭販売の予定が無い。

加えて、米AMDのプレスリリースには記載されているのだが、少なくとも日本ではリテールパッケージが出回る予定が無いというOEM向けモデルとして、クアッドコアのPhenom II X4 910、Phenom II X4 805という2モデルも存在する。

AM2+版Phenom IIのラインナップはご存知の通りPhenom II X4 940/920の2モデルなわけだが、モデルナンバーからもわかる通り、AM3版のPhenom IIはすべてのモデルがAM2+版の下位に位置付けられている。DDR3メモリを利用できる最新のAM3版Phenom IIだが、AM2+版Phenom IIのラインナップを置き換えるわけでもなく、追加のラインナップ拡充モデルといった意味合いが強い様に見える。

■Phenom II X4のラインナップ
モデル 940 920 910 810 805
対応Socket AM2+ AM2+ AM3 AM3 AM3
メモリコントローラ DDR2 DDR2 DDR2/3
動作周波数 3GHz 2.8GHz 2.6GHz 2.5GHz
HyperTransport Link 1.8GHz(双方向3.6GHz) 2GHz(双方向4GHz)
L1キャッシュ 128KB×4
L2キャッシュ 512KB×4
L3キャッシュ 6MB 4MB
Nominal Voltage 0.875-1.5V 0.875-1.5V 0.875-1.425V
Max Temp 62℃ 71℃
Max TDP 125W 95W
1Kロット時の単価 $225 $195 - $175 -
国内リテール販売 × ×
■Phenom II X3のラインナップ
モデル 720 710
対応Socket AM3
メモリコントローラ DDR2/3
動作周波数 2.8GHz 2.6GHz
HyperTransport Link 2GHz(双方向4GHz)
L1キャッシュ 128KB×3
L2キャッシュ 512KB×3
L3キャッシュ 6MB
Nominal Voltage 0.850-1.425V 0.875-1.425V
Max Temp 73℃
Max TDP 95W
1Kロット時の単価 $145 $125
国内リテール販売 ×

ところが、単純にAM3版Phenom IIの下位ラインナップなのかというと、そう言い切るのもちょっと抵抗がある。AM3版は何と言ってもメモリコントローラが最大の違いだが、HyperTransport Linkの速度が向上していたり、動作電圧の低下による省電力化などAM2+版には無い利点がいくつかある。Phenom IIを購入する際、使用目的によっては果たしてどのモデルがベストな選択なのかが判断しづらいのだ。