「インテリジェント・エコ(技術による地球環境への負担低減)」をキーワードに、環境配慮を推進するテレビづくりに取り組んでいるソニーはこのほど、廃校となった区立中学校を利用した東京・IID世田谷ものづくり学校にて、19日に発表した省エネ性能を強化した液晶テレビ「ブラビア V5/J5シリーズ」の体験会を開催した。

2階のプレゼンテーションルームでは、19日に発表されたばかりの「ブラビア V5/J5」がオールラインアップされていた

ソニーマーケティング ディスプレイMK部 粂川滋氏

まず、ソニーマーケティング ディスプレイMK部 粂川滋氏が登壇し、「液晶テレビ市場の需要拡大と国内概況」について語った。粂川氏は冒頭で、「2011年の地上アナログ放送の停波まで3年を切った今年、世界経済の急激な落ち込みの中においても、液晶テレビ市場は堅調に拡大していくと予想される。そのなかで、2000年ごろに液晶テレビを購入した"先鋭層"と、初めて液晶テレビを購入するブラウン管ユーザーからという2つの買い替え需要が見込まれる」と語った。さらに「特に、ブラウン管ユーザーに多い『主婦層』などに訴えかけるテーマの"エコ"を押し出した省電力性能の拡充を図っていくとともに、ブラビアの商品戦略として『環境』『画質』『佇まい』の3つを軸にした商品展開していく」と説明。これにより、2011年までに1,000万台を超える販売台数を見込んでいるという。

V5シリーズに搭載されている3つの新機能(人感センサー、省エネスイッチ、明るさセンサー)を体感することができた

真っ暗な部屋における明るさセンサー使用時では、約79Wにまで消費電力を抑えることができるという(スタンダードモード時)

また、IID世田谷ものづくり学校の5つの教室を生かした、省エネ機能の体験コーナーやデザインギャラリーなどの展示も用意。3階と2階に設けられた「省エネ機能体験」ルームでは、V5シリーズの省エネ技術特性について、学校の教室ならではの"黒板"を生かした熱心な解説が行われた。

利用者の能動的なアクションによって節電できる方法について、体験コーナー担当者は「画質モードを、スタンダードモードへ選択するだけで、一番明るいダイナミックモード使用時の約144Wから約95Wに抑えることができる。そこに、新搭載の明るさセンサーを加えることで真っ暗な部屋の場合、約79Wまで消費電力を抑えることができる」と紹介。また、「待機電力の節電術として、主電源を落とした後に『省エネスイッチ』を入れるだけで、従来の約0.06Wからほぼ0Wに抑えられる」としていた。さらに、こだわりの絵作りについて「派手な絵作りができるダイナミックモードに目が行きがちだが、家庭で長時間視聴するには、目がチカチカするほどの明るさ。ソニーでは、家庭での使用に向いたスタンダードモードで、一番良い画質になるように絵作りしている」と明かした。

4つの画面サイズと4つのカラーバリエーションを持ったJ5シリーズ。合計で16パターンから好みのテレビを選ぶことができる

テレビの背面に取り付けた枠にHDDレコーダーをセットするだけで、気軽にテレビデオ感覚を味わうことができる

1階には、ブラビアのデザインギャラリーや省エネ技術体験コーナーなどが設けられていた。デザインへのこだわりを意味する「佇まい」について、「J5シリーズは宝石をテーマにしたデザインで、クリスタルブラック、アンバーブラウン、サファイアブルーの3色では、画面の内側のフチにはマットな質感を用いており、外側の湾曲したフチ部分は半透明になっている。実は両方とも同じ素材を異なった加工で表現している」(デザインギャラリー担当)とアピールし、「"原石"を磨いて宝石のような美しさを表現したいという想いが込められている」としていた。

右から、8年前に製造されたブラウン管テレビ、現在店頭に並んでいる最新モデル、今回発表されたV5(すべて40V型)

4mmという極細のHCFLバックライトを開発することで、約40%の省電力化を実現した

このほか、V5シリーズに新搭載されたテレビ用細管化HCFLバックライトの省電力性能の実力を試す省エネ技術体験コーナーでは、CCFLバックライトを搭載した従来モデルと、ブラウン管搭載のテレビ、V5シリーズの3つの消費電力を比較。HCFLバックライトの現物展示も行われていた。

ブラウン管テレビに使用されていたカバーなどの資源を、自社加工して新製品の一部部品に再利用している

細かく砕かれたあと、ペレット状にして加工しやすい形にする

なお、同社では10年以上前からテレビ用難燃性プラスチック素材の自社循環を目指した取り組みを開始し、2008年春以降に発表したブラビアから自社循環の仕組みを導入している。今回の新製品においても全機種の一部部品に自社循環材を使用しているという。

世界経済だけでなく家電業界にも不況の波が押し寄せるなか、薄型テレビ市場は地上アナログ放送の停波による特需が見込まれており、これに合わせて各社とも、さらなる機能の充実や技術開発が必至とみられる。今後、薄型テレビにおける「選択基準の多様化」が進むなか、「エコ」や「省エネ」性能に特化するなど、商品価値が高められた"選ばれる薄型テレビ"が求められるだろう。