12月10-11日の2日間、東京都千代田区の東京国際フォーラムにて、IDGジャパン主催の技術イベント「SaaS World Tokyo 2008」が開催されている。
「クラウドコンピューティング」という概念の浸透を背景に、経営層や技術者から強い感心が寄せられているSaaS技術。同技術を扱う大規模イベントだけあり、初日の基調講演は、メイン会場の定員をオーバーし、ライブ中継となったサテライト会場でも立ち見客が出るほどの盛況ぶり。最新技術の利用価値や活用法を探ろうと、熱心にメモをとる参加者も数多く見受けられた。
本稿では、同イベントの中から、初日に行われた基調講演、米Salesforce.com プラットフォーム アライアンス & サービス プレジデントのPolly Sumner氏による『Your Success. Our Cloud. ~ クラウドコンピューティングで、すべての企業に成功を。』をピックアップし、その模様をお伝えしよう。
クラウドコンピューティングモデルの3つの特徴
米Salesforce.com プラットフォーム アライアンス & サービス プレジデント Polly Sumner氏 |
Sumner氏の講演では、クラウドコンピューティングのメリットや、同分野におけるSalesforce.comの取り組みなどが紹介された。
氏は、まず米Gartner バイスプレジデント兼最上級アナリスト Yefim Natissi氏の言葉を引用しながら、クラウドコンピューティングモデルの特徴として以下の3要素を列挙した。
- マルチテナント
- 利用に応じた課金モデル
- 柔軟に縮小、拡大
これらのうち、「マルチテナント」とは、複数のテナントが巨大なプラットフォーム上でリソースを共有しつつ、独立したかたちでアプリケーションを運用していくことを意味する。環境構築作業が不要で、立ち上がりが早いなどのメリットが生じる。
一方、「利用に応じた課金モデル」については、その名のとおり、利用量に応じた従量課金モデルのことで、Sumner氏は「従来型とは異なるユニークなビジネスモデル」と表現した。将来を見越してリソースに余裕を持たせるといった対応が不要であることから生まれる利点で、特に初期投資においては大きな違いが生まれる。
そして、「柔軟に縮小、拡大」は、そのときどきの必要量に応じてリソースやアプリケーションを縮小、拡大できるという特徴を指す。必要なときに必要なものだけを利用できるという柔軟性は、クラウドコンピューティングの大きなメリットの1つに数えられる。
以上のような特徴を備えるクラウドコンピューティングモデルは、「これまで十分なシステム費用を確保できなかった中小規模の企業で特に有効」(Sumner氏)だという。実際、Salesforce.comでも中小規模の企業を中心に導入が進んでおり、有償利用社数は全世界で5万1,800社に上る。今年度の第3四半期だけでも4,100社が新たに契約。「年間売上も10億ドルを突破した」(Sumner氏)と言い、同モデルの有効性が急速に認知され始めていることを示した。