仕事と育児・介護との両立支援や、女性労働者の能力発揮を促進するための模範的な取り組みを推進している企業を対象に、厚生労働大臣が年に1回表彰する制度「均等・両立推進企業表彰」の2008年度の受賞企業がこのほど決定した。

舛添厚生労働大臣の祝辞を代読する北村厚生労働省大臣官房審議官

同制度は、1999年度から厚生労働省が実施してきた、女性労働者の能力発揮を促進するための積極的取り組み(ポジティブ・アクション)を称える「均等推進企業表彰」、および仕事と育児・介護の両立支援や多様で柔軟な働き方を労働者が選択できるような取り組みを行う企業に対して贈られる 「ファミリー・フレンドリー企業表彰」の2つの表彰制度を2007年度から統合したもの。以降は、女性の能力発揮を促進する取り組みを評価する"均等推進企業部門"と、ワークライフバランスへの取り組みを表彰する"ファミリー・フレンドリー企業部門"の部門別に、それぞれ「厚生労働大臣優良賞」「都道府県労働局長優良賞」「都道府県労働局長奨励賞」を選出し、さらに両部門にまたがって実績が認められた企業に対しては最高の栄冠となる「厚生労働大臣最優良賞」が贈られている。

同賞は、それぞれの部門ごとに設定された基準を満たした企業が自主的にエントリーした中から選ばれる公募制。しかしその応募基準は厳しく、たとえば"ファミリー・フレンドリー企業部門"の「厚生労働大臣優良賞」では、次世代育成支援対策推進法に基づく認定を受けている、または認定を目指していることが条件のほか、"育児・介護休業法を上回る育児・介護休業制度が導入されていること" "育児・介護休業終了後は、原則として原職または原職相当職に復帰させることが就業規則等に明記されていること" "年次有給休暇の取得率が、企業全体で平均して50%以上であること"など、厳しい複数の基準をすべてクリアできていることが条件となる。また、最高賞にあたる「厚生労働大臣最優良賞」の場合、過去に"均等推進企業部門"または"ファミリー・フレンドリー企業部門"の「厚生労働大臣優良賞」を受賞し、受賞後さらに取り組み成果が進んでいると認められ、かつ受賞していないもう一方の部門の表彰基準を満たす企業であることが求められる。

そんな中、2008年度の大賞にあたる「厚生労働大臣優良賞」を受賞したのは、ベネッセコーポレーション。同社は1999年度に「ファミリー・フレンドリー企業表彰」の労働大臣優良賞を受賞。現在、同社の育児休業制度は、法で定められた育休期間終了直後の4月14日まで取得が可能で、女性の育児休業者は過去3年間で90%を超えているという。また、同社のワークライフバランス支援制度で特筆すべき点は、男性の利用者が高いことにある。男性社員の育児休業利用者は2006年度に7人、2007年度に12人と増加傾向にあり、管理職の取得や、3カ月以上の期間取得した実績も報告されている。さらに、介護休業に関しては、対象家族ひとりにつき通算1年以内で複数回の取得が可能。過去3年間の利用者は、管理職を含む男性2人、女性9人が取得している。

また、勤務時間の短縮制度では、子が小学校3年生まで利用が可能で、過去3年間に女性130人が利用。さらに、事業所内託児施設も運営され、過去3年間に男性6人、女性22人が利用しているほか、小学校3年生までの子を持つ社員に対しては時間外労働や深夜業の制限も設けられている。介護の場合、通算1年の短時間勤務が認められており、男性社員による利用実績も報告されている。

一方、女性の能力発揮の機会を促進する"ポジティブ・アクション"の取り組みでは、女性人員の配置の少なかった営業部門などにおいて女性の採用を積極的に促し、女性比率のアップにつなげたことが評価を受けた。また、女性管理職の登用を図るために、管理職昇格選抜試験の女性の合格者数の増加を目標に掲げ、受験を奨励したり、社内外へのキャリアアドバイザー、キャリアカウンセラーを配置するなど、女性のキャリア形成に関する相談・支援体制を整備。その結果、同社の女性管理職の割合は、2008年1月1日現在で、係長クラス37.3%(全国平均24.5%)、課長クラス25.7%(同15.1%)と、全国水準よりも高いレベルを示している。

そのほか、"ファミリー・フレンドリー企業部門"の厚生労働大臣優良賞に、埼玉県東松山市の輸送用機械器具製造業のボッシュ、長野県上田市の電気機械器具製造業のシナノケンシ、大阪府大阪市の医薬品製造販売業の参天製薬の3社が選出された。ボッシュは育児休業中の社員への月額2万5,000円の育児支援手当ての支給や、年間5日までの80%有給の子の看護休暇など休業中の経済的支援、シナノケンシは社長自らが両立支援に対する方針を示し、職場環境の整備に努めた点、参天製薬は人事部門と従業員組合の労使共同による両立支援促進プロジェクトを発足させ、多様な支援制度を整備した点などが主に評価され、受賞に至った。なお、2008年度の"均等推進企業部門"受賞企業は、該当者なしとなった。

「均等・両立推進企業表彰」厚生労働大臣賞受賞者

厚生労働省「均等・両立推進企業表彰」厚生労働大臣賞表彰式の様子