米VMwareは11月10日(現地時間)、携帯電話向けの仮想化プラットフォーム「VMware Mobile Virtualization Platform (MVP)」を発表した。MVPは携帯電話向けのハイパーバイザで、ARMなどのプロセッサと携帯OSの間に中間層を作り、アプリケーション実行環境を仮想化する。フランス企業のTrango Virtual Processorsの技術を基にしている。MVPによりセキュリティや管理面でのメリットのほか、ハードウェア層を抽象化することでアプリケーション開発が容易になるというメリットも享受できる。

Trango Virtual Processors (VP)は2004年設立のフランス企業で、組み込み機器向けのハイパーバイザ技術の開発を行っている。Trango VPのハイパーバイザは複数種類のARMアーキテクチャやMIPSアーキテクチャ上で動作し、Symbian、Windows Mobile(CE)、Linuxなどの各OSをサポートする。シングルコアやマルチコアを問わずに動作し、小さいコアモジュールで各種リアルタイムOSをサポートする点が特徴となる。MVPはこのTrango VPのハイパーバイザ技術を取り込み、VMwareの携帯向け環境として提供するものだ。VMwareのソリューションは各種OSをサポートするものの、サーバ/クライアントともにx86プロセッサが中心で、ARMなどの組み込みプラットフォームをサポートするのは初となる。

VMwareはMVPのメリットとして、複数の異なる用途のシステムを完全に分離できることを挙げている。例えば企業ユーザーが携帯電話を所有する際、仕事用とプライベートで2つの環境を使い分けることがある。MVPではこの2つを1つの携帯電話で実行しつつ、互いを分離し、プライベートでは個人情報にまつわる情報を一括管理して安全性を高めることが可能になるという。またシステムはMVPを通して集中制御が可能なため、管理上からもメリットが大きい。

携帯電話メーカーや同プラットフォーム向けのアプリケーション開発者にとっては、ハードウェアの抽象化でシステム開発が容易になり、製品の市場へのリリースサイクルが短くなるというメリットがあるという。携帯などの組み込み分野はPCほどには標準が整備されておらず、ハードウェアの微細な違いから動作検証などの手間が大きな負担となる。MVPではこれを抽象化して開発サイクルを早めることが可能になる。現状、携帯の製品リリースサイクルが早まる一方で、スマートフォンやマルチメディアフォンなどの製品はより複雑化しており、これを和らげる狙いがあるとVMwareでは説明する。