女性がキャリアを歩む上では、アドバイザーの存在も重要な要素となる。「社内において女性社員はまだまだ特別扱いされているところがある。しかし、今後ますます女性の存在が一般的となっていくなかで、困ったときに本音で話ができ、アドバイスをしてくれる人の存在は大きい。ひとつのアドバイスだけでな自分を勘違いしてしまうおそれがあるので、できればアドバイスしてくれる人が複数存在しているほうがいい」と語ったのは日立製作所の吉田氏だ。

さらに、時間の使い方に対するアドバイスも聞かれた。住友スリーエムの中平氏が「責任感が強いあまり、常になにか作業をして、動いているという状況になりがち。でもそんな状況でも、1日に5分10分でもいいので考える時間が必要。日々Todoリストを作成し、それに優先順位を付けていくという作業をしていくなかで、期限のあるものに対しては優先的に手をつけていく。しかし、自身のキャリア形成のためや、最終的なキャリア目標に向かってインパクトを与えることができるものに大しても時間を使ってほしい」と助言したほか、あおぞら銀行のアキレス氏も「ストレスは時間の長さに関係なくたまってくるもの。プライオリティをつけて片付けていくべき」と語った。

今回のイベントでは、新しい試みとして、女性管理職の日常業務を15分の寸劇で表現した「デモ・ロールプレイ」も行われた。女性管理職が陥りがちな典型的な事例を通して、管理職としての上司や部下とのコミュニケーションのあり方や仕事の進め方を考えるという趣旨のもと、消費財メーカーのコーポレーティング部で1年前に営業サポート課長に抜擢された、まだマネジメント職の経験は浅い女性社員を主人公にした寸劇が演じられた。

ロールプレイで設定された主人公のキャラクターは、責任感が強く部下思い。持ち前の行動力とチャレンジ精神で、困難なプロジェクトにも果敢に取り組んでいく反面、組織全体のバランスを考えて仕事を進めるという点では課題が残るという人物像だ。主人公の下には女性1人、男性2人の部下がおり、部長から依頼された企業のイメージアッププロジェクトを取り仕切る女性管理職の奮闘ぶりが描かれた。

主催企業の社員によって行われたデモ・ロールプレイ

ロールプレイ終了後は、これを題材に参加者たちがグループごとにディスカッションを実施。また、パネルディスカッションではパネリストもそれぞれ次のような感想を述べている。

「その場をうまく乗り切るということに終始しているように見えた」(住友スリーエム・中平氏)

「マネージャになって頑張っていこうという熱意が伝わる一方で、行動が空回りぎみな点が端々に感じられた。キャリアアップの過程で自分の立ち位置というのがわかってくるのかもしれない」(日産自動車・鳥羽氏)

「組織を挙げてのプロジェクトの推進が意識されていたのかという点が疑問。部下を活力あるものにしていくかで何をすべきかを考えるきっかけになった」(日立製作所・吉田氏)

組織で働く女性社員のキャリア形成を考えるために開かれた今回のイベント。少子高齢化による労働人口の減少問題や、仕事と家庭生活の両立を実現を考える上で、バックグランドの異なる女性たちがこのように一同に介して情報共有を行う場の開催は、将来の社会にとっても有意義な試みとなる。今回共催の各社では、来年度以降も継続的に同イベントを開催していく意向だ。