オペレータの課題は投資リスク
すばらしいサービスやアイディアがあっても、最終的にはインフラ技術がないと成立しない。テレコムインフラ分野のベンチャー企業であるBlueslice Networks(カナダ)のCEO、Stephan Ouaknine氏は、土台の問題を指摘する。「アイディアを実現する技術が必要だ。さらには、すばやく実装する必要がある。オペレータは機能ごとのアプローチではなく、さまざまな機能に対応するソリューションとして導入しないと、コストや管理は膨大なものになる」。オペレータは現在、(端末メーカー、サービスプロバイダなどとの競争だけではなく)固定とモバイルの融合の対応にも迫られている、とOuaknine氏は続ける。
Blueslice Networksは、統合されつつあるインフラ機器市場に参入したベンダだ。同社の強みは、ソフトウェアによるインテリジェンス。インフラ分野に新しい風を吹き込もうとしている。
そのようなインフラを購入するのはオペレータだ。だが、投資はリスクも含まれる。Trinkl氏は、オペレータの課題を次のように説明した。「インフラ投資が収益を生んだ例は少ない。これはモバイル業界の大きな問題だ。技術にマーケティングアプローチ、売上げのアプローチがない」。
Trinkl氏によると、インフラを提供するベンダは顧客の振る舞いを予想できないことから、オペレータは不確かな状態のままリスクを背負うことになる。これは、最終的には、これは顧客への請求書(=価格)になる。そしてGoogleに対し、「Googleはインフラに何か貢献するつもりはあるのか?」と問う。
GoogleのWesley Chan氏は、Googleでもインフラ技術選択は悩みの種であり、リスク共有モデルは確かに必要だと認める。
Appleはコントロール、Googleはプリインストール
Chan氏は、米Verizon WirelessによるSMS利用料金の値上げに対し、航空会社などがサービスを停止した例を挙げる。BluesliceのOuaknine氏も、英国で、英TruphoneのモバイルVoIPサービスをT-Mobileがシャットダウンした例を挙げた。「技術的にはさまざまなことが可能だが、競争により、オペレータなどの企業は実現を妨害している」という。
同じような例といえるのが、NokiaがNseriesの一部機種に搭載していたVoIPクライアントの搭載を一部で停止したことだ。これについて、Vasara氏は、「市場に合わせて各機種をカスタマイズしている」とコメントした。
Birkschulte氏はオペレータの動きは「当然」という。「オペレータの収益の85%は音声で、Truphoneはこれを脅かす脅威だ。定額制になるとさらに悪化する。オペレータに限らず、あらゆる企業が85%の売上げを脅かすものがあればシャットダウンするだろう」とBirkschulte氏。
Birkschulte氏はさらに、(画期的であるはずの)「iPhoneもアプリケーションをシャットダウンしている」と述べ、Appleも「AppStore」をコントロールしていると指摘した。さらには、「Androidではあらゆるアプリケーションをダウンロードできる」というGoogleに対し、「Googleは全員の売上げを奪おうとしている」と攻撃する。「Androidには、検索、カレンダー、メールなどGoogleのアプリケーションがプリインストールされている」とBirkschulte氏。Googleのモバイルにおけるビジネスモデルを、「オープンではなくプロプライエタリだ」と批判する。
オペレータの囲い込みは以前から指摘されていた問題だ。「閉じたモデルは必ず終わる。AOLが良い例だ。日本のイーアクセスはきちんと収益を上げている」とTrinkl氏。Vasara氏は「消費者の信頼を得ることが大切。そのためには、容易にしつつ、選択肢を提供していくことが大切ではないか」と述べた。