「特撮監督も映画監督も、そんなに違いはない」

――これまで神谷監督は『日本沈没』(2006年)や『L Change the WorLd』(2008年)など実写映画の特撮監督を多く経験されています。今回は技術者から映画全体を見る表現者の立場になられたわけですね。

神谷「特撮監督といっても、僕は純粋な技術者ではないんです。結局、役者に芝居をつけてるのか、怪獣に芝居をつけてるのか、炎や爆発や壊れるモノに芝居をつけてるのかの違いだと僕は認識してるんです。だから何かに芝居をつけたり演出をするという意味では、そんなに変わらないです。世の中の映画監督には『特撮屋あがりが何やってんだ』なんて言う人もいますけれど、そんなに違いがあるとは思っていないです。僕に限らず、元特撮マンで現在は監督をしているという先輩方も同じだと思います」

――特撮監督から映画監督の立場になって、実際、どういった違いを感じましたか?

神谷「今回、脚本作りからずっと携われたことは非常に面白かったです。僕と脚本の菅正太郎さん、そしてプロデューサーの皆さんで月に何回かディスカッションして、アイデアを出し合ってプロットにまとめてもらいました。監督として、こういう作業に最初から携われたので、これまでより濃密に作品にコミットできた感じはあります」

――監督ご自身は今後、どのようなスタンスで映画作り携わっていきたいとお考えですか?

神谷「もともと特撮監督をやっていて、去年あたりから監督もやり始めたので、監督の仕事はぜひやりたいです。ただ特撮も好きなんで、特撮監督という仕事もやっていきたいです。ただ、いま特撮という仕事自体がどんどん世界的に滅亡の危機に瀕しているとも思うんですよ」

――それは、どういう意味でしょうか?

神谷「フルCG映画を作っておいて言うのも何ですが(笑)、CGというものが登場して以来、多くのプロデューサー達は『そのシーンはCGでやればいい』という話にしかならないんですよね。それでCGのスタッフの方から『これはCGでやるのは難しいので、実写素材を撮って欲しい』という要請があって、初めて特撮を使用するというパターンしか最近はあり得ないんです。だから、どうしても特撮をやるためには、自分で監督してコントロールするするしかない。そういう意味では監督もやりつつ、特撮監督もやるというスタンスでできるといいなと思いますね」

――まずCG、そして特撮というのが、現在の映画制作の現状なんですね。

神谷「前に一緒に仕事をした押井守さんが、小難しいことをよく言うのですが(笑)、名言のひとつだと思ったのは『デジタルの出現によって、全ての映画はアニメーションになる』と……。『CGだろうと実写だろうとアニメーションだろうと、全てが映像を作っていく要素のひとつでしかない。それを組み合わせて作っていくのがこれからの映画監督である』とも。この意見には僕も賛成ですね」

――最後に、映画業界や映像分野を目指す若者にアドバイスをお願いします。

神谷「日本の映画界・映像界って、みんながフリーランスなんで、食えたり食えなかったりするときがあるわけです。そんな中でも僕らは好きだからやっていける。でも最近はそれに耐えられない若者もすごく多い。好きだけど安定した職業に就きたいといって辞めちゃう人が多いんです……。好きでどうしてもやりたいのなら、やり続けることが大事だし、それが出来ないのなら『そんなに好きではないのでは?』って思います。いかにモノを作りたいという情熱があるか、人生を棒に振ってでもそれに賭ける覚悟があるかないかの差じゃないかと思うんですよね。とにかく経験がなくても制作現場に入れば、技術は後からついてきます。僕は、もう人生、棒に振ってますから(笑)。これしかできないですから」

『バイオハザード ディジェネレーション』(ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント配給)は10月18日より新宿ピカデリー、梅田ブルク7、名古屋ミッドランドスクエアシネマほかにて2週間限定世界先行上映

(C)2008 カプコン/バイオハザードCG制作委員会

インタビュー撮影:中村浩二