ガートナー ビシャル・トゥリパシ 主席アナリスト

グラント氏に続き、ビシャル・トゥリパシ 主席アナリストが「プリンティング市場動向 ―地域の力学」と題して講演した。

2007年のプリンタ、複写機、MFPの世界市場実績を見ると、出荷台数は対前年比4.5%増の1億3,881万6,422台、出荷金額は同2.6%増の598億ドルだった。先進諸国のように、成熟した市場では、プリンタ、複写機、MFPは、パソコンからは分離される傾向があるが、新興国では、短期的には、飽和状態にまでは至っていない。そこで、同社では、2007-2012年の年平均成長率を、アジア・太平洋が6.13%、中南米は8.86%と予測している。一方、北米のそれは0.2%、日本は1.46%の減でマイナス成長だとしている。

製品別の動向では、単機能インクジェットプリンタの場合、世界のすべての地域で減少傾向となっている。これは、特に北米で顕著だが「短機能の機種が減り、多機能機がより好まれ伸びている」(トゥリパシ氏)からだ。ベンダーは、新興市場ではローエンド製品に注力する一方、成熟市場では付加価値のある製品の拡販を模索しており、製品は多様化、カラー写真向け機種からワイヤレス機まで幅広くなっている。

ページプリンタは2007年には、アジア太平洋、中東・アフリカが2桁成長だった。アジア太平洋は、中国、インド、マレーシア、ベトナムなどの新興市場で依然、エントリレベル製品への需要があったことが牽引力となった。これに対し、北米、日本はマイナス成長となった。同社では、世界市場では台数で2007-2012年の年平均成長率が4%だとしている。

A4フラットベッド型MFPは、全地域で2桁の伸長を果たしている。特に、中南米では、対前年比83%増だった。この背景には、ベンダー側が積極的にMFPを推進していること、ユーザーが単機能のプリンタより、MFPを選んでいる傾向があることや、ベンダーの競争激化による低価格があるという。

付加価値のあるソリューションに注力することが重要

A3フラットベッドMFPは、中東・アフリカ、アジア・太平洋、中南米からの需要により全体では12%成長した。一方、北米では2%の減、日本では1%の成長にとどまっている。この領域では、カラー対応機が伸びており、同社では、カラー機の今後4、5年間の成長率を60%と予想している。2007年の総出荷台数に占めるカラー機の比率は34%だったが、2012年には41%になると同社では見ている。

これらの状況から、先進地域と新興市場では、製品への需要が大きく異なり、成熟市場ではあまり期待できない製品も新興市場では、潜在力があることがわかる。新興市場について同社は「ベンダーは各地域、国ごとの市場の動向、特性を分析し、それぞれの市場に適合した(成長性の高い)製品を選んで、展開すべき」だとしている。

成熟市場については、「スマートMFP」「MPS」がこれからの成長の鍵になるが、トゥリパシ氏は「ハードではなく、ソリューションが求められている。ベンダーは単なるハードを売るのではなく、TCO削減に効果があるなど付加価値のあるソリューションに注力することが重要になる」と述べた。