メール機能が遅れている背景として、孫社長は、「国内の企業は工場の自動化は進化しているが、オフィスの自動化はそれほど進んでない」「日本の携帯電話はこれまで、ワンセグ、ゲーム、音楽配信などいわば『遊び』の機能が重視されていた。そのような機能が世界一だった」と説明。そのうえで、「iPhone 3Gでは、ビジネス用アプリケーションが1,000種類以上用意され、App Storeで簡単に入手することができる」(同)と企業ユースとしてのiPhone 3Gをアピールした。

ソフトバンク 孫正義社長

ビジネスマンの「7つ道具」は、iPhone 3Gに集約される?

iPhone 3Gの業務用途としては、小売業界での商品の受発注業務管理などのような例が挙げられるが、やはり、どこにでも持ち運べ、移動中であっても使用できるモバイル性を活かすことが焦点になる。この日のデモでは、建築業、化粧品業、自動車業界向けの、訪問販売営業の電子カタログや営業ツールの例が紹介された。いずれも多彩な画像、動画までをも利用して、営業活動ができるというものだった。また、企業内システムとの連携機能を活かした製薬業向けの社内イントラネットとの交信、百貨店向けの在庫検索システムといった例のほか、教育業界向けの教材ツール、不動産業向けの物件管理ツールなども示された。

また、孫社長が考案したという運送業向けの配送管理システムの紹介も行われた。同管理システムは、GPS機能を活用してiPhone 3G上に配送ルートを表示、配達先への予想される到着時間を自動的に計算、それをメールで告知し不在配達を防止するといった内容。この業界では「配送に出かけても、2.5回に1回は、配達先が留守で、再度配達しなければならないが、これが1.5回に1回ということになれば、この業界数社で年間3,000万円ほど利益が改善するという計算」(同)になるという。顧客側も、午前中配達というような見通しであれば、長時間待っていなければならないが、このシステムを用いれば「30分から1時間程度の範囲であれば、待っていられるだろう」(同)。このようなシステムがあれば強い競争力になると孫社長は指摘している。

ソフトバンク社内でもすでに「iPhone 3Gを業務に活用し、生産性は一気に上がった」(同)という。孫社長は「パソコン、電卓、カタログ、手帳など、ビジネスマンのかばんに中にあった重いものは、iPhone 3Gに集約することができる。iPhone 3Gにより、人件費、コストを下げ、売り上げ増にもつながる。ビジネスのスタイルが変わる。新しい風を感じてほしい」と述べ、講演を終えた。