日本オラクルは、経営管理の洗練化により企業競争力の向上を図る製品「Oracle Enterprise Performance Management System」(以下、Oracle EPM System)と、同社の新たなEPM(Enterprise Performance Management: 企業の業績管理)戦略を紹介する「Oracle Enterprise Performance Management Summit」を東京・港区内で開催した。基調講演には、米OracleのBusiness Intelligence and Performance Management シニア・バイス・プレジデント John Kopcke氏が登壇、「Oracle Enterprise Performance Management 企業の持続的成長を支える経営/財務マネジメント~オペレーショナル・エクセレンスからマネジメント・エクセレンスへ~」と題し、「マネジメント・エクセレンス(卓越した経営管理)が競争優位をもたらす」と強調した。

「Oracle EPM System」は、米Oracleが2007年6月に買収した米HyperionのBI(Business Intelligence)製品と、従来のオラクルの経営管理、分析ソリューション群を統合した、企業の業績管理ソリューションと位置づけられている。Kopcke氏は、Hyperion製品が、Oracleの技術体系に完全に統合され、同社がオープン性を堅持し、あくまで標準のアーキテクチャを基盤にEPMソリューションを整備したと指摘、「Oracleは競合より2年は進んでいる。必要な機能はすべて提供できるが、他社の技術との統合もできる」と話す。

これまで、多くの企業は「オペレーショナル・エクセレンス(卓越した業務遂行)」を推進してきた。製品調達/生産管理などに注力、できるだけコストを削減すると同時に、たとえば製造業では、品質の向上化に努めた。ここでは、ERPやCRMが大きな成果を上げ、かつては内製化されていたバックエンドシステムにパッケージが入り、業務プロセスも定義が明確になり整然としてきた。だが一方では、経営管理への取り組みは「複雑化している」(Kopcke氏)ため、「標準化、簡素化された経営管理のプロセスが必要」(同)となる。

Kopcke氏は「オペレーショナル・エクセレンスは現在でも必要であり、やめてしまってはいけないのだが、もはや、これだけでは競争優位性をもたらさない、マネジメント・エクセレンスが差別化要因になる」と述べ、マネジメントを合理化する「スマートさ」、激変する環境に迅速に応答、実行する「敏捷さ」、企業全体で十分に情報を共有し、同一の方向性をもって行動できる「連携」の3つが、マネジメント・エクセレンスを成功させるために重要になる、と説く。

「オラクルは、マネジメント・エクセレンスを実現させるため、『Oracle EPM System』を提供している」と、Kopcke氏は語る。「Oracle EPM System」は、「Oracle Fusion Middleware」とBI基盤を中核に、パフォーマンス管理アプリケーション、BIアプリケーションが動く。さらに、この基本構造の統一性を活かした、情報アクセスのための根幹となるのが「Oracle EPM Workspace」だ。「EPM Workspaceはブラウザをベースに、シングルサインオンで、さまざまな機能にアクセスできる」(Kopcke氏)。

また、「Oracle Hyperion Strategic Finance Fusion Editon」は、中長期的な計画のシナリオ分析を担う。たとえば「原油価格が1バレル○○ドルになったら、どんな影響が出るか」(同)といったようなシミュレーションができる。「Oracle Hyperion Financial Data Quality Management Fusion Editon」は、財務データの正確性と内部統制を保証するデータ連携ツールで、顧客情報の正確性などを検証し、他のEPMアプリケーションと連携する。

基調講演に先立ち、挨拶した日本オラクルの社長最高経営責任者 遠藤隆雄氏は「日本企業はかつて、『改善』を掲げ、オペレーショナル・エクセレンスに注力してきた。それが主流であり、製造業は、価格が安く、良質な製品を供給することに努力してきたが、昨今、それだけでは必ずしも十分だとはいえなくなってきた。オペレーショナル・エクセレンスとマネジメント・エクセレンスは表裏一体といえる。この両方を実行していける企業が強くなる」と語った。

日本企業の競争力は「技術面では世界的に高水準にあると評価されているが、経営管理や会計監査の面では高くない。マネジメントの点で、全体の競争力の足を引っ張っている」のが実情であると、遠藤社長は指摘する。「企業を取り巻く環境は大きく変化し、厳しさを増しているなか、未だに、経験と勘に依存した経営がみられるのではないか。さまざまシミュレーションにより問題点を発見して、正確な情報に基づき、すばやく判断すれば、修正することができる」(遠藤社長)。同社のEPMの目指すところは、ここにある。