Googleが4月7日(米国時間)に発表したGoogle App Engineは興味深いWebアプリケーションプラットフォームだ。デプロイや管理の手間が減り、スケーラビリティもGoogleで取り組んでくれる。最近ではアカウントあたりのアプリケーション数上限が3から10へ引き上げられたり、成功は確約されていないがPerlに対応させる取り組みも進められている。FacebookやMySpaceといったソーシャルネットワークもWebアプリケーションプラットフォームサービスを提供するなどPaaSが普及しつつある。

この状況は必ずしも諸手を挙げて歓迎していいものではないのかもしれない。Josh Catone氏がSitePoint Blogsで公開しているWhy Closed Platforms Could Ruin the Web (なぜクローズドプラットフォームクラウドはWebを台無しにするか)において興味深い内容がまとめられている。Josh Catone氏はJonathan Zittrain氏やNick O’Neill氏の言葉を引用しながら、将来のWebは以前のようなクローズドな世界に戻ってしまうのではないか、ということを紹介している。

Google App Engineは便利なプラットフォームだが、最後のたずなを握っているのはGoogleであって開発者ではない。プラットフォーム提供者は意向にそわないアプリケーションを削除できるポジションにいる。PCにインストールされたアプリケーションを、アプリケーション開発者が制御したり削除できるなんてことはできないが、こうしたクラウドプラットフォームでは可能というわけだ。iPhoneに危機回避措置としてアプリケーションの制御をAppleから実施できる、いわゆるキルスイッチがあることも先日報道された。このように、サービスやAPIは提供されているがプロダクトはクローズドであったり制御権が特定の組織に所属した状態が、最終的にWebを台無しにする、というわけだ。

Google App Engineのようなクラウドコンピューティングは今後ますます普及することになるとみられる。またPCと違い携帯や小型のガジェットからのインターネット接続が増えることで、プラットフォームの制御権がユーザから特定のベンダに集約される事態にもなりつつある。Josh Catone氏のドキュメントはそのあたりが端的にまとまっていてわかりやすいので興味がある方は一度チェックしておくとよさそうだ。