ニコンの「D700」は35mm版フルサイズの撮像素子を搭載している。気になるのは、やはり画像周辺での画質性能である。そこでセットレンズの「AF-S VR Zoom-Nikkor ED 24-120mm F3.5-5.6G(IF)」と、「AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8G ED」を撮り比べて比べてみることにした。D700本体のインプレッションは近日中に掲載する予定。

新しいカメラには新しいレンズ?

カメラで撮影した画像は、中央部よりも周辺部のほうが画質が劣るのが普通。光量落ちをはじめ、歪曲やシャープさ、像の流れなど、いろいろな弊害が発生する。D700のようなフルサイズ一眼レフでは、特にその傾向が強く現れる可能性が高い。もうひとつ、D700での心配は、セットレンズとしてVR 24-120mmを使っていることだ。これはVR(手ブレ補正機構)の初期に登場したレンズで、発売からすでに5年が経過している。最新フルサイズのD700と組合せるのはどうだろう? という心配もなくはない。対する24-70mmは手ブレ補正機構こそ搭載しないが、設計は新しく、昨年暮れに登場したばかり。ズーム全域で開放F2.8という明るさも魅力だ。

まず外見から。VR 24-120mmは比較的コンパクトなズームレンズで、重さは575g。24-70mmはそれよりふたまわりほど大きく、重さは900gもある。ズーム倍率の高さや手ブレ補正機構の搭載も併せて考えると、VR 24-120mmのほうがはるかに機動力が高い。しかしD700で使うことを考えると、レンズの機動力は圧倒的なメリットにはならないだろう。というのも、D700そのものがかなり大きく、重いからだ。D3(1240g)に比べれば軽いとはいえ、D700は995gもある。実際に手にしても、D700と24-70mmの組み合わせは悪くない。バランスもいい。

単体での価格はVR 24-120mmが9万4000円なのに対し、24-70mmは26万円。実売ではこれより2割引き程度で売られていることが多いが、それでも価格の差は非常に大きい。それに見合うだけの画質差があるか、興味深い点だ。

D700とセットでも販売される「AF-S VR Zoom-Nikkor ED 24-120mm F3.5-5.6G(IF)」。価格は9万7,800円。本文中では「VR 24-120mm」と表記

昨年末に発売されたばかりの「AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8G ED」。価格は27万3,000円。本文中では「24-70mm」と表記

D700の撮像素子。プロ機のD3と同じ1210万画素のフルサイズCMOSセンサーを使用している。周辺などの描写が気になるところ

人気のニコン「D700」。オープンプライスだが、レンズキットで約39万円、本体だけなら32万円程度で販売されている(マイコミ価格情報)の平均価格。8月1日現在)

D700はフルサイズ(FXフォーマット)はもちろん、APS-Cサイズ(DXフォーマット)のレンズも使用できる。今回はすべてFXで使用

周辺の光量落ちはVR 24-120mmのほうが強い

まずは周辺の光量落ちから見てみよう。ワイド端はどちらのレンズも焦点距離が24mmとなる。VR 24-120mの開放であるF3.5ではかなり周辺が暗く、ほぼ完全に周辺落ちを無くすためにはF8程度まで絞る必要があった。24-70mmの開放F2.8もさすがに光量落ちはあるが、落ち具合は少なく、VR 24-120mmの絞りF4と同じくらい。F5.6あたりまで絞ればほとんど光量落ちは目立たなくなる。ワイド端では、どちらも開放から2段ほど絞れば光量落ちがカバーできるようだ。

ちなみにテレ端での周辺光量落ちも調べてみたが、これはどちらも少なかった。VR 24-120mmでは絞りに関わらずほとんど気にならないレベルで、24-70mmはF4よりも絞りを開けるとほんの少し暗くなる。しかしこれも周辺が落ちるというより、全体が少し暗くなって、中央が明るく残るようなイメージだった。シーンによってはほとんど気にならないだろう。

VR 24-120mmのワイド端で絞りを変えて撮影し、周辺の光量落ちを比べた
AF-S VR 24-120mm F3.5-5.6G / L+Fine(JPEG) / 24mm(FX) / 絞り優先AE / ISO 200 / WB:オート / PC:スタンダード

F3.5

F4

F5.6

F8

F11

F16

F22

24-70mmのワイド端で絞りを変えて撮影、周辺の光量落ちを比べた
AF-S 24-70mm F2.8G / L+Fine(JPEG) / 24mm(FX) / 絞り優先AE / ISO 200 / WB:オート / PC:スタンダード

F2.8

F4

F5.6

F8

F11

F16

F22

ワイド側の歪曲収差はVR 24-120mmのほうが良好

次は歪曲収差をチェックした。ワイド端ではVR 24-120mmのほうが収差が少なかった。24-70mmは少々樽型収差が現れる。テレ端ではその逆で、24-70mmがほとんどの歪みのない正しい形の像になるのに対し、VR 24-120mmでは糸巻き型収差が現れた。歪曲量をトータルで見ると同じくらいだろうか。そう考えると、ズーム倍率の大きなVR 24-120mmはよくできている。

VR 24-120mmのワイド端で撮影。撮影距離は約2.4m
AF-S VR 24-120mm F3.5-5.6G / L+Fine(JPEG) / 24mm(FX) / 絞り優先AE(F11、1/20秒) / ISO 200 / WB:オート / PC:スタンダード

24-70mmのワイド端で撮影。撮影距離は約2.4m
AF-S 24-70mm F2.8G / L+Fine(JPEG) / 24mm(FX) / 絞り優先AE(F11、1/20秒) / ISO 200 / WB:オート / PC:スタンダード

VR 24-120mmのテレ端で撮影。撮影距離は約13.4m
AF-S VR 24-120mm F3.5-5.6G / L+Fine(JPEG) / 120mm(FX) / 絞り優先AE(F11、1/25秒) / ISO 200 / WB:オート / PC:スタンダード

24-70mmのテレ端で撮影。撮影距離は約7.8m
AF-S 24-70mm F2.8G / L+Fine(JPEG) / 70mm(FX) / 絞り優先AE(F11、1/25秒) / ISO 200 / WB:オート / PC:スタンダード