NECソフトは7月16日、同社初となるプライベート・イベント「ソリューションフォーラム2008」を開催。東京大学大学院 経済学研究科で教授を務める伊藤元重氏が基調講演を行うとともに、会場に設置された展示コーナーでは同社の最新ソリューションが紹介された。

NECソフト初となるプラベート・イベント。社員みずからが製品を紹介

基調講演では、伊藤氏が「新しいビジネスチャンスをどう活かすか」と題した講演を行い、会場を埋めた約700名の聴衆に向けて、グローバリゼーションとデジタライゼーションが進むなかで、今後、企業はどうビジネスを行っていくべきかを提言した。

同氏は、まず、世界経済が過去30年で最も速いスピードで変化していることを指摘。この変化の原動力になっているのは、グローバリゼーションとデジタライゼーション(デジタル化という技術革新)の2つであるとした。

グローバリゼーションについては、企業の生産や流通の拠点が世界規模で行われていることを、EMS企業の台湾Hon Hai Precision Industry(鴻海精密工業)を例に挙げて説明。同社は、「Foxconn(フォクスコン)」ブランド で、AppleのiPodやiPhone、ソニーのVAIOやプレイステーション、NokiaやMotoloraの携帯電話などの生産を請け負っており、同社最大の生産拠点は中国深セン市の工場にある。同工場の従業員数は数十万規模に達し、単なる組み立て工場ではなく、メーカーとしての技術開発力を有するまでに成長した。このようなグローバル化が、流通、航空、金融など、さまざまな業種・業界で急速に進んでいるという。

その一方で、デジタライゼーションにともなって、ほとんどすべての情報がコンピュータ処理されるようになり、経済、科学、社会、司法などさまざまな分野で大きな影響を与えるようになったと説明。例えば、ワインを収穫する時期の降雨量や温度、地域のデータを分析することで、ワインの専門家をしのぐほどの品質評価ができるようになっていることや、薬品やその副作用、患者データなどを蓄積・分析し、客観的な視点で病院を評価するといった取り組みも進められていることを説明した。

その上で、伊藤氏は、「グローバリゼーションとデジタライゼーションがますます世の中を変えていくなかで、ビジネスは、スマイルカーブを描く。サプライチェーンの上流と下流においては利益を出すことができるが、中間ではビジネスができなくなる」と指摘。上流(素材、部品)については、企業規模にかかわらず、高い世界シェアを持っている企業が多いことを示す一方、下流(小売り、サービスなど)についても、iPodの例を挙げながら、「製品」「ブランド」「ビジネス・モデル」の3条件をそろえることで成功している企業は多いとした。そして、今後のビジネスのあり方としては、上流で勝負するか、下流で掘り下げていくかといった選択が重要になってくると講演を締めくくった。

一方、会場では、NECソフトの各ソリューションが展示され、性別年齢層推定システム、RFIDによる資産管理システムなどについては、実際に体験できるコーナーが設置されていた。

「FieldAnalyst」の画面。カメラに写る人の映像から顔部分を自動的に検出し、性別年齢を推定する

性別年齢推定システム「FieldAnalyst」は、カメラに写る人の映像から顔部分を自動的に検出し、その顔のパーツや輪郭などの情報から、性別や年齢を推定し表示するシステム。イベントやキャンペーンで来客者の属性を把握するといった利用のほか、推定された性別・年齢をもとに、広告や商品を自動的に表示するといったデジタルサイネージとしての利用が可能。

性別・年齢を認識する際は、属性のデータのみをリアルタイムに処理し、映像を蓄積しない仕組みであるため、プライバシー権や肖像権を侵害することはないとしている。同社によると、これまでに商業施設、企業ショールームなど、4例の稼働実績があるといい、カメラや設置代をのぞいたソフトの価格は200万円からという。

「RFIDPassChecker」のRFIDゲート

「RFIDPassChecker」で利用するRFIDタグ

また、RFIDによる資産管理システム「RFIDPassChecker」は、社内持ち出しに制限がある物品などにRFIDタグを添付し、RFIDゲートでそれを検知するというシステム。RFIDの特性を利用し、かばん内にある複数の物品を同時に検知するといったことが可能なほか、物流・倉庫管理などで入出庫を自動チェックできるとしている。ログ管理、アラート通知といった基本的な機能、ICカードや赤外線センサとの連携する機能も備える。社員証と連携させたうえで、ID管理システムによる本人認証を行うといった使い方も可能という。

会場では、このほか、Ajaxや携帯電話に対応したWebメールシステム「WitchyMail」の最新版や、ハードディスク暗号化システム「PointSec」、ファイル保護ソフト「Webコンテンツプロテクター AE / Webブラウザプロテクター AE」などといった同社製品を組み合わせたセキュリティ・ソリューションの展示も行われた。