米Advanced Micro Devices(AMD)は7月17日(現地時間)、2008年第2四半期(4-6月期)決算を発表した。同四半期の売上は13億4900万ドルで前年同期比では3%の増加、直前の第1四半期との比較では7%の下落となる。ライバルである米Intelとの競争激化や期待のクァッドコアプロセッサ"Barcelona"が製造問題で当初の予想を下回る水準に売上が低迷したことで、AMDは現在経営危機に陥っており、同社株価は数年前の3分の1以下の水準にまで落ち込んでいる。役員らの離脱が相次ぐなか、同社はHector Ruiz氏に代わり社長兼COOだったDirk Meyer氏をCEOへと昇格させる人事を発表したほか、旧ATIの事業だった組み込み機器やデジタルTV向けチップの製造からの撤退を決断するなど、コア事業への集中に向けた新体制で戦略の刷新を図る。

同四半期のAMDのGAAPベースの純損失は11億8900万ドルで、このうちの9億2000万ドルが撤退を決めた組み込み機器/デジタルTV向けチップ事業の赤字である。同社は2006年に54億ドルでカナダのGPUメーカーであるATI Technologiesを買収したが、当初の見込みほどは合併効果が得られない状態が続いていた。AMDのCPU技術とATIのGPU技術を組み合わせた「Fusion」プロセッサや、今後躍進が期待できる組み込み機器やデジタルTV向けチップ事業だったが、Fusionは投入スケジュールが段階的に遅れてきており、一方の組み込み/DTV分野も当初見込んだほど市場が成長していない。その間に、AMDの稼ぎ頭だったOpteronプロセッサはIntelとの競合でASP(平均販売価格)が落ち込み、x86としては初のネイティブなクァッドコアプロセッサである「Barcelona」は製造問題で当初の出荷目標を達成できず、買収したATI関連事業のみならず全社的な不調に陥っている。

こうした経営危機のなかでAMDに求められるのは性急な事業改革だ。ATI買収費用に端を発するコスト問題など、固定費だけでも大きな負担を抱えており、CPU/GPUなどコア事業にリソースを集中させることで体制のスリム化を図る。現在のAMDはBarcelonaの製造問題もあり、製品ロードマップが不明瞭になっている。事業体制の見直しは、今後のロードマップを整理するきっかけとなりそうだ。

また同日、AMDはこれまでのHector Ruiz氏に代わり、社長兼COOだったDirk Meyer氏をCEOへと昇格する刷新人事も発表した。Ruiz氏は昨年の時点ですでにCEO引退計画を示唆しており、今回の事業体制刷新での正式発表になった。

AMD株は17日のニューヨーク市場の取引で前日比4.74%アップの5.30ドルで取引を終えたが、その後一連の決算発表とトップ刷新人事表明を受け、時間外取引で米東海岸時間(EDT)の午後8時の時点で7.18%下落の4.91ドルとなっている。