出光興産 情報システム部 企画課 澤井隆慶氏

ガートナー ジャパンは7月15、16日、SOA(Service Oriented Architecture)をテーマにした自社イベント「SOAサミット2008」を開催。初日に行われたゲスト基調講演で、出光興産 情報システム部 企画課の澤井隆慶氏は、SOAに基づいた共通基盤の構築や全体アーキテクチャ設計での取り組みについて説明した。

澤井氏はまず、同社が抱えていた課題について紹介。ユーザーのビジネスニーズに合わせてシステム開発を進めていくなかで、個人や個別チームの意思決定のもとでのアプリケーション開発やパッケージ導入が増え、システムが複雑化していったと説明した。

そして、このような局所最適の問題点としては、「アプリケーションのデータ構造を引き継ぐかたちでシステム全体が構成されることになるため、ビジネス機能の追加、更新にあたって、システム全体に影響を及ぼすことになる」ことを挙げ、開発コストや運用コストが増え、個々に対応することも難しくなった結果、システムが硬直化するとした。

ESBの導入で課題を解決

こうした課題を解決するため、同社では、エンタープライズ・サービス・バス(ESB)を導入し、個々のアプリケーションが共通のデータモデルにアクセスするような基盤を構築。具体的には、個々のアプリケーションに依存する要素をプロキシ・サービスとしてサービス化し、それらを標準プロキシを経由させて、共通化のビジネス・サービスにすることで、個々のアプリケーションのデータモデルの差異を吸収させたという。

「サービスコンシューマとサービスプロバイダを分離し、その間に標準プロキシを"ヒンジ"として挿入させ、疎結合させた。これにより、業務のニーズに応じて、アプリケーションの変更やインフラの変更を行っても、システム全体に影響が及ばなくなった」

現在は、この基盤をベースとして方式設計を共通化し、アプリケーション開発を進めている。実際、「レガシー・システムにデータが残っていたとしても、そのデータ構造がシステム全体にまで引き継がれるといったことはなくなった」といった効果が得られているという。