米国でも7月11日午前8時(現地時間)に「iPhone 3G」が発売された。米国各地で数百人規模の長い行列ができ、多くの人が発売の瞬間を待っていた。だが、そんなiPhone人気に加えて、今回は世界各国での同日発売である。時差の関係で最後となった米国で発売される頃になると、アクティベーション用サーバの反応が極端に遅くなるというトラブルが発生した。自宅でiTunes v7.7を使ってアクティベーションを完了できるため、とりあえずサービス契約だけを行ってiPhone 3Gを持ち帰った人が多く、販売開始されたもののiPhone 3Gの本格デビューには至らないという状態がしばらく続いた。

米国では通信キャリアAT&Tの販売店とApple StoreでiPhone 3Gを購入できる。昨年の初代iPhone発売日には、サンフランシスコ市にあるApple Storeのフラッグシップ店で購入したが、今年はスタンフォード大学近くで、シリコンバレーのエンジニアがより集まるパロアルト店に並んだ。昨年Steve Jobs氏が突然来訪し、Bill Atkinson氏が行列に並んでいた店舗だ。

午前4時、発売の4時間前にPalo Alto店に到着。すでに約60人が行列を作っていた。先頭は9日の夜から並び始めたという。行列の先頭の方にJailbreakを送り出している面々がいるという話が伝わってきたが、最後まで真偽を確認できず。もしかすると60人の伝言ゲームの結果かもしれない……。

キャンプ組はテントやマットレスを持参

午前5時半ぐらいから伸び始めた行列

午前5時半を過ぎ日の出と共に行列が伸び始めた。午前6時過ぎにApple Storeのスタッフが水とコーヒー、購入やアップグレードに必要な情報(クレジットカード、ソーシャルセキュリティ番号、携帯サービスのパスワード/PINなど)をまとめた カードを配布。開店に向けた準備が始まった午前7時半頃には200人を超える列になり、カウントダウンと共に午前8時に開店した。

開店にあわせてシャンパンを準備する人

開店直後、行列の前方はテレビ局やラジオ番組からインタビュー責め

昨年はiPhone端末を販売するだけで、携帯電話サービス契約やアクティベーションは購入者がiTunesを使って自宅で行った。そのため店内ではApple Storeのスタッフが次々にiPhoneを手渡し、クレジットカードを処理して、1人あたり2~3分のペースで購入希望者を消化していった。今年はサービス契約やアクティベーションをApple Store内で完了するため、事前に1人あたり15分程度はかかると言われていた。店内のスタッフは40人超。これなら2巡目には順番が回ってくると計算していたのだが、なかなか最初の購入者があらわれない。30分が過ぎたころに、やっと1人目が大きな拍手に送られて出口へと向かった。2人目は、さらに5分後というペース。

水色のTシャツを着ているのがApple Storeのスタッフ

Palo Alto店で最初のiPhone 3G購入者

45分ほど待ったところで順番がまわってきた。Apple Storeのスタッフに必要な情報を伝えて、AT&Tとのサービス契約はスムーズに進んだ。問題はここからで、購入したiPhone 3Gを店内でMacに接続してアクティベートしてくれるのだが、そのサーバの反応が遅く、最初に入店したグループに店内のMacがずっと占領されたままだという。残りの作業は、自宅で完了することを勧められたので、そのままiPhone 3Gを抱えて午前9時頃にApple Storeを出た。

初日用に用意された台数については教えてくれなかったが、ジーニアスバーの後ろには100個以上の箱が積み上げられていたし、「開店前に並んだ人の分は十分にある」と言われた。店を出たら、裏の方でFEDEXのトラックから次々に積み荷がおろされていた。これがiPhone 3Gの追加とは限らないが、店内の雰囲気では昨年同様、モデルにこだわらなければ行列に並ばなくても購入できる可能性がありそうに思えた。ちなみに行列に並んでいた時に、先頭の方からどのモデルを購入したいかというアンケートが回ってきた。60人目のところでは、16GBのホワイトモデルが半分以上を占めていた。16GBのみのカラーでレアだからだろう。ただ店内での売れ行きを観察していたら、ブラックの方が好まれているように見えた。

初代iPhoneユーザーもアップグレード立ち往生

自宅に戻ってすぐにiTunesを使ってアクティベーションを試みると、iPhone 3Gは認識されるものの、「iTunes Storeにアクセス中」の状態のままでアクティベーション・プロセスに進まない。ネットで他の購入者の様子を調べてみると、iPhone 3Gばかりではなく、初代iPhoneをiPhone 2.0にアップグレードした人もトラブルになっているようだ。初代iPhoneにiPhone 2.0を導入すると再アクティベートになり、その際にIPhone 3Gと同じサーバにアクセスする。そこで止まってしまうため、初代iPhoneも未アクティベーション状態になってしまうそうだ。試しに手持ちの初代iPhoneを接続してみたところ、iPhone 2.0の配布が中断されていた。Apple側がアクティベーションの混雑に対処した模様だ。

その後、15分おきぐらいにアクティベーションを試み続けて、午後1時半過ぎにアクティベーション画面があらわれた。そこからのプロセスは簡単で、Apple IDを入力し数クリックで完了。データ同期が始まった。

今回、米国では発売初日のアクティベーション停滞という、イメージを悪くしかねない形でiPhone人気を証明してしまったが、そのトラブルを差し引けばAppleの準備体制は整っていた。実際、店内でのアクティベーションをあきらめた自分のケースでは10分強で購入できたのだ。Appleは発売前にWebサイトや電子メールを通じて必要な情報やドキュメントのリストを配布していた。さらに行列に並んだ人に対してスタッフが1人ずつ必要情報の所持を確認し、個々の質問に答えていた。アクティベーションの問題についても、理由を述べた上で、自宅で完了する方法、うまくいかない場合の対処法やサポートへの連絡方法などをきちんと説明していたので、予想外のトラブルもなんとか乗り越えられそうな安心感があった。