日本IBMは、Webアプリケーションをエンドユーザーが手軽に作成できるマッシュアップ製品「IBM Mashup Center V1.0」と、Web2.0機能を強化したポータル製品「WebSphere Portal 6.1」を発表した。

2つの製品が受け持つ「ポータル」と「マッシュアップ」は、1画面でさまざまな情報を閲覧できるという点で似ており、2つの差は情報の見せ方にある。ポータルは情報を表示する小窓「ポートレット」を1画面に並べてパーソナライズしたものだ。一方、マッシュアップは既存の情報やサービスを組み合わせて、新たなアプリケーションとし、1画面内で情報を重ね合わせて見せるのが特徴となっている。

ポータルとマッシュアップの違い

日本IBM ソフトウェア事業 ロータス事業部長 澤田千尋氏

Web2.0型アプリケーションの構築と維持管理について、日本IBM ソフトウェア事業 ロータス事業部長の澤田千尋氏は「全社員が利用するポータルなど利用者数が非常に多いものと、グループレベルで頻繁に利用されるアプリケーションは従来型プログラマやWeb開発者が構築し、IT部門が維持管理を行うことが望ましい。一方、利用者は少ないが大きな価値を持つアプリケーションを構築する手法としてユーザー自身がマッシュアップを利用するものが今後伸びると考えている」と語った。

Web2.0型アプリケーションの構築と維持管理

特に、非常にニッチながら大きな価値を生み出す「シチュエーショナル・アプリケーション」は、その時々で必要になるものを迅速に開発し、使えるようにすることが重要となる。IT部門に開発を依頼しているのでは間に合わないため、必要としているユーザー自身が構築できることが望ましい。これを実現するのが「IBM Mashup Center V1.0」だ。

「IBM Mashup Center V1.0」はプログラミング不要の組み立てツール「Lotus Mashups」と、外部データを「Lotus Mashups」で活用できるように部品化する「infoSphere MashupHub」の2つで成り立っている。

「infoSphere MashupHub」で作られた部品は「カタログ」と呼ばれる機能に格納され、「Lotus Mashups」で利用できるようになる。さらに、IT部門等がプログラム記述を行って部品制作を行う「WebSphere sMash」を組み合わせることで、より高度な部品も活用できるようになる仕組みだ。

IBMが提唱する新たなマッシュアップ環境

「Lotus Mashups」と「infoSphere MashupHub」の役割

「Lotus Mashups」はブラウザ上で利用できるため、ユーザーはブラウザで開いた画面上でプルダウンメニュー等から部品を選び、ドラッグ&ドロップで部品同士を重ね合わせたりしながらアプリケーション構築を行うことになる。部品としては、Google等で公開されているガジェット、ウィジェット等を利用することも可能だ。「使い方を覚えてしまえば、場合によってはExcelよりも簡単に使える。現在、ITリテラシーは全体で底上げされており、エントリーレベルのユーザーでも使いこなせると考えている」と澤田氏は語る。

発表会ではデモンストレーションとして、新規プロジェクトのメンバー選定を補助するアプリケーション構築が行われた。白い画面にプルダウンメニューから選んだ部品を重ねて配置するだけで、顔写真入りのメンバー表を表示し、写真を選択するとそのプロフィールに加えて3年分の評価が表示され、そこからメッセンジャーで本人にアクセスすることができる、というアプリケーションがわずか数分で構築された。

簡単な操作で複数データソースを参照するアプリケーションを開発するデモ

同時に出荷される「WebSphere Portal 6.1」は、Ajaxを導入するなどWeb2.0機能を強化したこと、セキュリティ強化が行われたことなどが特徴だ。ポータル作成はより簡易になり、管理の容易化も行われている。

WebSphere Portalのロードマップ

この2製品は、日本IBMの注力しているSOA戦略の一環であり、ビジネスフロントエンドの統合を推進するものとなっている。販売戦略としては、「WebSphere Portal 6.1」は社内外のコンサルティング会社との協業、従来のLotusビジネスパートナーだけではなくWeb系ビジネスパートナー重視が挙げられた。「IBM Mashup Center V1.0」に関しては、Lotus、WebSphere、Information Managementという3つのブランドが一体となり、技術者コミュニティを中心に市場を開拓するとしている。

100VU(Value Unit:機種別サーバー単位課金)での価格は、「WebSphere Portal 6.1」が757万9,000円。「IBM Mashup Center V1.0」が629万2,000円となっている。「IBM Mashup Center V1.0」は20ユーザー単位の価格も設定されており、こちらは37万1,800円。

また、「IBM Mashup Center V1.0」を構成する「Lotus Mashups」と「InfoSphere MashupHub」は単体購入も可能だ。「Lotus Mashups」は100VUで317万5,000円、20ユーザー単位で18万7,400円。「InfoSphere MashupHub」は100VUで311万8,000円、20ユーザー単位で18万4,500円となっている。