米Verizon Wirelessは6月5日 (現地時間)、米通信会社Alltelの買収で、AlltelおよびAtlantis Holdingsと合意したと発表した。Verizon Wirelessは約59億ドルを支払い、さらにAlltelの負債222億ドルを引き受ける。総額281億ドル相当の取引となる。株主や関連機関の承認を経て、年末までの完了を目指すという。順調に成立すれば、米国最大の携帯電話事業者が誕生する。

Alltelは米国の34州で1,300万人以上の契約者を持つ。この中にはVerizon Wirelessがサービスを提供していない57の地方市場が含まれる。両社は同じネットワーク技術を採用しており、サービス統合の技術的なハードルが低く、合併コストも抑えられる。また管理業務の統合によるコスト削減や、ローミング料の支払いが不要になるなどメリットの多い組み合わせだ。両社ともにLTE導入を視野に入れたサービス・ロードマップを示しているが、Alltel契約者にとっては将来のサービス・アップグレードがより安定したものになる。

米2位の携帯通信会社であるVerizon Wirelessは、通信大手のVerizon CommunicationsとVodafoneの合弁会社だ。Alltelが身売りを模索し始めてから、過去に2度買収を検討したものの具体化しなかった。昨年5月にGoldman Sachs Group傘下GS Capital PartnersとTPG Capitalが275億ドルのLBO(レバレッジド・バイアウト)でAlltelを買収した。今回Verizon Wirelessが合意したAtlantis Holdingsは、GS Capital PartnersとTPG Capitalが設立した受け皿会社である。Verizon CEO Ivan Seidenberg氏は「1年前の競りは、今日よりも高額な取引だった」と述べており、今回は通信業界で進む再編の波にフィットする形で合意にこぎつけた。

現在米1位のAT&Tの2008年3月末時点での契約者数は7,140万人。Verizon WirelessがAlltelを買収すれば契約者数が8,000万人を超す見通しだ。合併プロセスでは両社のサービスが重複する地域などでの資産売却や整理が行われるが、それでも独占が問われるのは避けられないだろう。今後の司法省および連邦通信員会 (FCC)の対応が注目される。