仕上がりに不満の残る省電力モード

ではPCゲーマー期待の、ハイエンドGPUを接続した状態での「HybridPower」の実力をチェックしてみよう。前述のタスクトレイ等を使いHybridPowerモードに設定すると、その瞬間グラフィックスカード側のファンが停止する。

結果の数字を見て愕然としてしまうのも無理はない。今回テストした環境では、HybridPowerを選択すると、そのままではチップセット内蔵のGPUしか動作しないようだ(3DMark06以外のテストは省略)。

CPUの省電力機能のように、パフォーマンスが必要とされる局面になると自動的にグラフィックスカードの電源が復活するわけでもなく、登録していたアプリが起動すると通常モードに切り替わる訳ではないのだ。もっとも、今後BIOSやドライバのアップデートで改良される可能性もあるが、テストした限りではかなり不便な機能と言わざるを得ない。

消費電力は?

では最後に消費電力の比較といこう。アイドル時および3DMark06のGAME TEST2実行時の消費電力を比較する。ここでいつもは定番「ワットチェッカー」で計測するところだが、今回はNVIDIAから拝借した「WATTS UP? Pro」を利用している。

今回利用した「WATTS UP? PRO」は消費電力等のデータをロギングする機能を備えたインテリジェントな計測機器だ。ログはUSB経由でPCに吸い上げて分析が可能

それぞれグラフィックスカード単体利用時と比較してみた。9800 GTX+HybridPowerの組み合わせ時の落差は大きいが、先に述べたようにHybridPowerを有効にした時点で9800 GTXは終始飾り物になってしまうので、実用に足る効果があるとは言い難い。

一方、8400 GS+GeForce Boostの組み合わせではピーク時の消費電力が下がるという結果が得られた。理屈で考えれば、グラフィックスカードとチップセットの両GPUが動作する訳だから消費電力は増大しそうなものだが、ピークで15W程度低下している。逆に非対応とはいえ、9800 GTX+GeForce Boostでは消費電力が上がっているため、これは一体何に原因があるのかは今後の検証課題といえるだろう。

HybridPowerの改善に期待

8400 GS+GeForce Boostは効果があったとはいえ、所詮ハイエンドゲームに使える水準のものではない。安価に3D性能をアップするなら、ミドルレンジクラスのグラフィックスカードを追加した方がパフォーマンス的によいものが得られる。

となると評価すべきはHybridPowerだが、現状の仕組みだと肝心の使い勝手が悪いとしか言いようがない。手動でGeForce Boostと切り換えるのもよいが、消費電力が上がり性能もわずかに落ちるモードをわざわざ使うメリットがない。一応電源オプション内に、アイドル状態が続いた場合にSave Powerへモードが切り替わる設定もあるようだが、最低でも登録したアプリによってモードを切り換える機能程度は実装して欲しいものだ。

HybridPowerの使い勝手さえクリアされれば、Hybrid SLIはゲーマーにとってかなり大きな存在となるだろう。ちょっとした実務や調べモノをする際にアイドル時の消費電力を気にする必要はなくなるのだから……。