シスコシステムズは28日、小規模ブランチ向けサービス統合型ルータ「Cisco ISR 880/860シリーズ」4製品および、顧客とサードパーティのアプリケーションに対するルータのアプリケーションプラットフォーム「Cisco Application eXtension Platform(AXP)」を発表した。
「エンパワードブランチオフィス」で従来の課題を払拭
副社長の平井康文氏 |
エンタープライズ分野の戦略について副社長の平井康文氏は「付加価値の創造や市場競争力の強化、企業の経営革新をサポートすることにより、"ICT(Information and Communication Technology)"の価値を高めていきます」と語る。
ICTの価値向上では、まずルータやスイッチなど各種ネットワーク機器をベースに、ネットワーク構成込みのアーキテクチャ最適化を図る「コアネットワーク・インフラストラクチャ」が第一の注力ポイントとなる。このコアネットワーク・インフラストラクチャを土台として、あらゆる仮想化をキーワードとしたマネジメント系の「データセンター3.0」と、ワークスタイルの変革に寄与するビジネス系の「ユニファイドコミュニケーション」という上位層のソリューションを提供していくという。
「"データセンター3.0"や"ユニファイドコミュニケーション"はあくまでICT分野の言葉であり、経営者層に対しては"バーチャリゼーション"と"コラボレーション"という位置付けでメッセージを送りたいですね」(平井氏)。こうした基盤上に、従来のチャネルパートナーだけでなく、ISVやコンサルティングファンドなどを含めたアライアンスパートナーと、「ビジネスアプリケーション」分野での連携関係を築いていく予定だ。
これらを支えるのは、同社が提唱するサービス指向型ネットワークアーキテクチャ「SONA(Service Oriented Network Architecture)」である。ネットワークレイヤーでの位置付けとしてはキャンパス、データセンター、ブランチオフィスという3種類のロケーションが想定されており、その中でも今回はブランチオフィスを対象とした小規模ブランチ向けサービス統合型ルータ「Cisco ISR 880/860シリーズ」および、ルータのアプリケーションプラットフォーム「Cisco Application eXtension Platform(以下、Cisco AXP)」が発表された。
従来のブランチオフィスでは、統一性のないデータやボイスネットワーク、錯綜する無線LAN、複雑なセキュリティやコンプライアンスの脅威、限られたモビリティや貧弱なディザスタリカバリシステム、ブランチオフィス内や本社間における一貫性のないソリューションなど数多くの課題を抱えていた。そこで同社では「Unified Communications」「Integrated Security」「Application Performance」「Mobility」の4つを大きな柱とした「エンパワードブランチオフィス」を提唱、ブランチオフィスをより良いものへと変えていくという。
小規模ブランチに最適なCisco ISR 880/860シリーズ
Cisco ISR 880/860シリーズは、小規模ブランチやリモートワーカーに最適化されたサービス統合型ルータだ。コンパクトな筺体に加えて、ファイアウォールやURLフィルタリング、VPN機能、侵入検知(IPS)といった強固なセキュリティ環境を実現。また、IEEE802.11n Draft 2.0対応やセンター集中管理が可能なLWAPP対応など充実のモビリティ、さらには設定管理用のGUIツールによるオールインワンの扱いやすさも兼ね備えている。
ラインナップは「Cisco ISR 861」「Cisco ISR 861W」「Cisco ISR 881」「Cisco ISR 881W」の4種類で、Cisco ISR 861WおよびCisco ISR 881WがIEEE 802.11n Draft 2.0対応モデル。販売開始は7月を予定しており、Cisco ISR 881Wのみ9月になるという。なお、米国で発表されたCisco ISR 861の参考価格は449ドルだ。
IEEE 802.11n Draft 2.0対応の小規模ブランチ向けサービス統合型ルータ「Cisco ISR 881W」 |
Cisco AXPで更なる運用コスト削減とサービス統合を実現
Cisco AXPは、従来製品「Cisco ISR 1800/2800/3800シリーズ」に対応するアプリケーションプラットフォームで、サービス統合型ルータによるインフラストラクチャの統合および運用コストの削減効果を拡大、さらにはホスティングやカスタムアプリケーション、ネットワークサービスの統合を可能にしている。具体的には、Linuxアーキテクチャをベースとした統合環境と、ダウンロード可能なSDK、広範囲をカバーする「Cisco CLI」や「Cisco IOS API」などで構成。CPU、メモリ、ディスクリソースのセグメント化により複数のアプリケーションをサポートできるほか、C、Python、Perl、Javaのアプリケーションを実装するための認定ライブラリも提供される。
パートナープログラムとしては、開発キットSDKやドキュメント、デベロッパーフォーラムなどを提供する「デベロッパーパートナー」と、共同マーケティングや認定を行う「ソリューションパートナー」を用意。将来的にはリセールやOEMを行う「ストラテジックパートナー」も導入する予定だ。
提供形態は、Cisco ISRに搭載するハードウェアモジュール「NME:Network Module」および「AIM:Advanced Integration Module」の2タイプで、今回は「AIM-APPRE-102-K9」「NME-APPRE-302-K9」「NME-APPRE-522-K9」の3モデルが発表された。なお、日本における最初のAXPパートナーとしては米NICEのUCソリューション、米Avocentのネットワーク管理ソリューションを予定。WAASによるブランチWindowsサーバサービス「WAAS Virtual Blade」については、今夏以降に詳細が発表されるという。
そのほか、Cisco ISR 1841/2800/3800シリーズに対応する3GワイヤレスWANモジュール「HWIC-3G-GSM」も発表された。こちらはGSM/UMTS/HSDPA対応のSIMカードを搭載しており、IP-VPNなどのバックアップ回線やイベント会場での臨時設置に適しているという。