ネットレイティングスは23日、都内で会見を開き、インターネット利用動向調査サービス「Nielsen Online」によるインターネット利用実態を発表した。

これによると、2008年4月における家庭でのウェブ総利用時間は約9億2,900万時間となり、前年同月に比べて約18%増加していることがわかった。一方、総ページビュー数は前年同月比3%減の804億ページビューに留まっているという。

ダイアルアップが主力だった2001年4月の1億1,601万時間/151億ページビューに比べると大幅に増加しているが、ページビューの増加は頭打ちの状況となっている。

ネットレイティングス 萩原雅之社長

ネットレイティングス代表取締役社長兼ニールセン・オンラインチーフアナリストの萩原雅之氏は、「2006年までは総利用時間、総ページビュー数は連動して増加してきたが、2年前からページビューが伸びなくなっている。すでにページビューが増加するという時代ではなくなっている。インターネット人口は微増しているが、1人あたりの月間ページビューは2年前の2,077ページビューがピークであり、2008年は1,667ページビューと、約4年前の水準になっていることが影響している。原因は、ストリーミング、フラッシュなどのリッチコンテンンツの増加に加え、Ajaxなどのクリックを減らす技術の普及を背景に1ページあたりの滞在時間(利用時間)が伸びていることにある」と分析した。

総PV数と総理用時間の推移

1ユーザーあたりの平均PV数の推移

ブロードバンドの普及によって、読み込み時間が短縮。一時的に1ページあたりの滞在時間が減少する傾向があったが、ここ数年、リッチコンテンツの普及によって滞在時間が増加したという。

同社の調査によると、2005年4月には31秒だった1ページあたりの滞在時間は、2008年4月には41秒に拡大している。

「今後2、3年もページビューが増加しない傾向が続くだろう。ウェブサイトの価値判断のベンチマークとして、ページビュー指標だけでなく、利用時間の指標をあわせて利用することが重要になる。ネット広告では、露出時間に連動した料金体系やインプレッション単価の引き上げも課題となる」と指摘した。

同社によると2008年4月時点の家庭におけるネット利用人口は4,827万5,000人。前年同月に比べて8.0%の増加となっている。そのうちYahoo!の利用者は4,224万人、Googleの利用者は2,856万2,000人、楽天の利用者は2,614万2,000人となっている。また、「50代以上のM3、F3層が増加しており、今後こうした層がどういった使い方をするのかといったことがマーケティングの観点からも必要である」とした。今年3月時点でネット利用人口の23%にあたる1,112万人が50歳以上となっている。

2008年は企業のCGMプラットフォーム利用が増える傾向

一方、同社では、2008年の注目動向として、「ここ2、3年で確立したCGMプラットフォームの企業における活用が増加するだろう」とした。

Q&AサイトやWikipediaなどの知識・経験プラットフォーム、YouTube Channelをはじめとする動画プラットフォーム、Amebloなどのタレントブログプラットフォームが企業で活用されるようになるとした。

日本ではとくにQ&Aサイトの利用が多いという傾向があり、Yahoo!知恵袋の利用者数は1,261万5,000人、教えて!gooの利用者数は780万9,000人となっており、前年比3倍に増加している。「1,000万を超える利用者規模に達するというのは、予想がつかなかった。Wikipediaでも、米国よりも日本におけるリーチ率のほうが高い」としている。

知識・経験共有プラットフォームの利用が急増

Q&AサイトやWikipediaの利用率は米国以上

こうした傾向をベースに、企業が営業活動や告知活動、マーケティング戦略において、有効な手段として、投稿型のプラットフォームを利用する傾向が今後増えると見ている。

「例えば、旅行ひとつをとっても、お客様の声やクチコミ情報を利用して、宿泊施設の評価を高めることができる」などとした。

また、動画プラットフォームでは、政党や企業がYouTube Channelを利用するケースが増加することを指摘。「すでに東芝がノートPCのキャンペーン、日本コカコーラがふるふるシェイカーでYouTube Channelを利用したマーケティングを行っている。今年は、こうした企業が動画を利用したマーケティングが増えてくることになるだろう」と予測した。

タレントブログプラットフォームでは、Amebloを例にあげて、利用者数が急激に増加していること、さらに「Amebloで現在最も人気なのは上地雄輔さんのブログで、100万人前後が訪問している。これは一時のブログの女王と呼ばれた人たちと比べて、訪問数が圧倒的に多い」という。

Webブラウザ以外からのトラッキングも可能に

同社では、今年10月からNielsen Onlineによる視聴率調査を変更することを発表した。

萩原社長は、「当社から提供するソフト、サービスのバージョンアップではなく、視聴率の使い方、概念が変わるものになる」と位置づける。

NetView新システムと呼ばれる新たな調査方法では、これまでの調査対象である2万人/7,000世帯を4万人に拡大。家庭からのアクセス調査だけでなく、家庭および職場データの提供を新たに開始する。

また、これまでのProperty/Domain/Siteではなく、Parent/Brand/Channelを標準としたチャンネル集計、ブランド集計方式を導入するほか、インスタントメッセンジャーや「iTunes」「Windows Media Player」などのWebブラウザ以外のアプリケーションからの利用もトラッキングする。

家庭と職場からのアクセス調査を標準にしていく

チャンネル集計・ブランド集計を導入する

「サンプル数の増加により訪問者が少ないサイトに関するレポートが可能になるほか、職場での閲覧比率が高いサイトでもフェアな評価が可能になる。また、サイト側の都合で複数のURLが利用されていても、束ねた数値での利用が可能になる。Yahoo!オークションの場合も、これまではURLが細かく分類されていたが、これがひとつで集計できるようになる」としている。

2008年4月から新NetViewのオフィシャルプレビューを開始。週次データでは、9月20日から10月10日のデータ、月次データは2008年10月度から正式に提供する。現行システムは9月のデータ更新をもって終了する。

なお、同社では、近いうちに携帯電話におけるネット視聴率調査を開始する考えがあることを明らかにした。