デルは13日、仮想化ソリューション強化のため、新型サーバや新ソフトウェアのOEM提供、およびストレージのアセスメントサービスを開始すると発表した。

仮想化の推進を通じて「Simplify IT」を実現

デルでは2006年9月から仮想化ソリューションを提供開始、2008年2月にはストレージ仮想化機能を搭載したiSCSIストレージ「EqualLogic PS5000シリーズ」を発売したが、今回は仮想化に最適な新サーバおよびサーバ仮想化ソフトウェアラインナップを追加、ストレージのアセスメントサービスを開始することにより、さらに幅広い顧客層に向けてEnd to Endの仮想化ソリューション事業を展開していくというもの。

デル アドバンスド・システム・グループ本部長の町田栄作氏

事業展開の背景として、アドバンスド・システム・グループ本部長の町田栄作氏は「デルでは昨年よりITを簡素化し導入しやすくする「Simplify IT」を提唱していますが、3つの柱として、コンセプトに基づいた新製品の投入、ソフトウェアベンダーを含めたアライアンスの強化、顧客によるIP(Intellectual Property:知的財産)の戦略的な取得があります」と語る。今回の発表は、仮想化の推進を通じてSimplify ITを実現しようというものだ。

町田氏は米DELLとVMwareが顧客に対して行った仮想化による効果の調査結果を示し、「プロビジョニングの時間短縮や稼働率の向上、ダウンタイムの縮小などを含めて仮想化の導入で大きな差が出ています。このように仮想化はTCOの削減だけでなく、ITライフサイクルの中でも明確な効果を打ち出していける時期に来ています」と語る。さらに、第三者機関の調査では2006年から2011年の間で仮想化の導入は年率40%以上の伸びを示しており、実際にデルでも日本法人だけで前年度2倍以上のライセンス売上を望める状況に来ているという。

米DELLとVMwareが顧客に対して行った仮想化による効果の調査結果

パフォーマンスやI/Oの拡張性向上に加え、SDカードスロットを備えた新サーバ

今回発表されたラック型サーバは、中小規模のシングルサーバ構成に適した2U2ソケットの「PowerEdge R805」、および4U4ソケットの「PowerEdge R905」で、いずれも仮想化に最適化されたもの。AMDのクアッドコアOpteronプロセッサの搭載に加え、R805には現行製品と比べてメモリスロットが2倍となる16個のDIMMスロット(最大128GBメモリ)を採用、R905ではさらにその2倍となる32個のDIMMスロットにより、最大256GBのメモリ搭載を実現している。

また、両製品ともに4ポートのギガビットNICを備えるほか、R805は4つ、R905には8つのPCI Expressスロットを搭載することでI/Oの拡張性を向上。2008年下半期には、10ギガビットEthernetにもオプションで対応する予定だ。

2U2ソケットの「PowerEdge R805」に関する主なスペック

4U4ソケットの「PowerEdge R905」に関する主なスペック

対応するサーバ仮想化ソフトウェアについては、従来の「VMware Infrastructure 3」に加えて、新たに「VMware ESXi 3.5」と「Citrix XenServer 4.1」の提供が開始される。また、R805/R905には内部USBコネクタだけでなくSDカードスロットが装備されており、「VMware ESXi」か「Citrix XenServer」が組み込まれた状態で提供されるのも特徴だ。

デル エンタープライズ・マーケティング本部 サーバ ブランドマネージャの浦上義一氏

その他の仮想化ソフトウェアとしては「Oracle VM」をサポート、「MS Hyper-V」にも順次対応する予定だが、エンタープライズ・マーケティング本部 サーバ ブランドマネージャを務める浦上義一氏は「Oracle VMとHyper-Vに関して今のところSDカードで提供する予定はない」とコメントしている。

新製品を含むPowerEdgeサーバの仮想化ソフトウェア対応状況

システム環境および顧客要件から見た各サーバ製品の位置付け

「PowerEdge R805」に搭載されたSDカードスロット。VMware ESXiやCitrix XenServerは、SDカードやUSBメモリなどのFLASHストレージにインストールが完了した状態で出荷される

新サーバの販売は本日より開始され、価格はR805が53万7,600円から、R905が81万7,950円から。サーバ仮想化ソフトウェアについてはVMware ESXiがサポートを含めて10万円程度、Citrix XenServerは「Express Edition」が3,000円、「Enterprise Edition」が35万3000円となっている。

「PowerEdge R805」の内部

「PowerEdge R905」の内部

ストレージ・アセスメントサービス開始で管理の簡素化と柔軟な拡張性を実現

新たに開始されるストレージのアセスメントサービスについては、ストレージ利用状況の調査、拡張要求に関する実現性の分析、バックアップやリカバリの機能評価、仮想化構成案の提示といった内容が含まれている。これにより、投資費用の削減やストレージ管理の効率化、アプリケーションパフォーマンスの向上を図ることが可能になるという。価格は基本的に個別見積もりとなるが、機器25台分の最小構成で70万円程度。サービス開始時期は5月下旬を予定している。

日本AMD マーケティング本部エンタープライズプロダクトマーケティング部の山野洋幸氏

また、記者発表会にはゲストスピーカーとして日本AMD マーケティング本部エンタープライズプロダクトマーケティング部の山野洋幸氏も登場した。R805/R905に搭載されているクアッドコアOpteronは、従来製品と比較してCPUコアやキャッシュ、浮動小数点演算の大幅な改良が図られている。さらに、仮想化環境に対して優れた性能を発揮する「Rapid Virtualization Indexing」、仮想化ソフトウェアを支援する「AMD-V」なども備えており、山野氏は「クアッドコアOpteronは単なるクアッドコアプロセッサではなく、仮想化ソリューションのパフォーマンスを最大限に発揮できる製品です」と語った。