Javaで「さくさく感」のある開発を

Ruby on Railsのブレイク以降、PerlやRuby、Pythonなどのスクリプト言語によるWebアプリケーション開発が注目を集めている。たしかにこれまでのJava開発では重厚長大なフレームワーク、膨大な設定ファイル、ソースコード修正時のアプリケーションサーバの再起動など面倒なことが非常に多かった。これと比べRuby on Railsでは"Conversion over Configuration(設定より規約)"の考え方に基づき、設定ファイルを極力減らす工夫をしていたり、ソースファイルを修正してすぐに動作確認ができるなど、迅速な開発が可能であり「RailsはJavaの10倍の生産性」という宣伝文句にも頷ける一面があるのは事実だ。

しかし、これらはすべて過去の話だ。

本書『Seasar2によるスーパーアジャイルなWeb開発』は、国産のDIコンテナSeasar2の開発者であるひがやすを氏が、Seasar2を活用し、Javaでもスクリプト言語に勝るとも劣らない「さくさく感」のある開発を実践する方法を解説したものだ。

Doltengを使用したTeeda、S2Daoのチュートリアル

その名の通り、"シーサー"のイラストが目印

Seasar2そのものはDIコンテナであり、実際にWebアプリケーションを開発するにはSeasar2と連携して動作するWebフレームワークやデータベースアクセス用のフレームワークが必要となる。本書ではChapter 3でWebフレームワーク「Teeda」、Chapter 4でデータアクセスフレームワーク「S2Dao」の利用方法が解説されている。また、開発環境としてEclipseプラグイン「Dolteng」を採用し、操作手順はまさに手取り足取りという表現がしっくりくるほど親切丁寧にスクリーンショット付きで説明されているため、Seasar2やTeeda、S2Daoをはじめて使うという人でもTeedaやS2Daoの利用方法を学習することができるだろう。Chapter 5ではJavaBeanどうしの変換を行う「S2Dxo」についても簡単に触れられている。

TeedaとS2Daoの説明はDoltengを使い、比較的短いサンプルを作成し動作を確認する、という手順の繰り返しで進んでいく。必要なファイルの作成やコーディングはDoltengがサポートしてくれるし、Seasar2のHOT deploy機能によりアプリケーションサーバを再起動しなくてもすぐに動作を確認することができ、さらにRubyなどの動的な言語と異なり、Javaの場合はEclipseが提供するコード補完やリファクタリングなどの機能を利用することができるのだ。そのため、本書の手順に沿ってサンプルを動かしてみることで、ひが氏の言う「さくさく感」のある開発を実体験することができるはずだ。PCの前に座り、実際にサンプルを動かしながら読み進めてこそ価値のある書籍といえるだろう。

内容には物足りなさも

一方で、本書はあくまでステップ・バイ・ステップのチュートリアル的な内容となっており、わかりやすさを重視したためかサンプルも実践的なものとは言い難いものが多い。フレームワークの解説も触りの部分に留められており、実際にTeedaやS2Daoを使ってWebアプリケーションを開発する際には、Web上のドキュメントなどを別途参照する必要があるだろう。著者の狙いからは外れているかもしれないが、たとえば付録としてTeedaやS2Daoのリファレンスなどを含めておくことで、導入学習だけでなく実際の開発時にも長く使える書籍になったのではないだろうか。

また、本書では「開発者が意識する必要のないことは説明しない」というポリシーが貫かれているのだが、本書を読み進めていくには前提条件としてJavaやSQLに関する基礎知識が必要だ。つまり、本書がターゲットとしている読者は「すでにWebアプリケーション開発経験があるがSeasar2を使うのは初めて」というJava開発者であり、まったくの初心者ではないと考えられる。ならばある程度踏み込んだフレームワークの技術領域について触れても良かったのではないかと思う。

Seasar2の現状と今後

さて、実はSeasarプロジェクトではすでにTeeda、S2Daoに代わる新たなフレームワークが登場している。それが「SAStruts」と「S2JDBC」だ。Seasar2を利用したWebアプリケーション開発は今後、本書で解説されているTeeda/S2Daoの組み合わせからSAStruts/S2JDBCの組み合わせにシフトしていくものと考えられる。

こういった技術動向の変化の速さはコミュニティ主導のオープンソースプロジェクトならではだが、将来的にはSAStrutsとS2JDBCの利用方法を解説した本書の改訂版の登場にも期待したいところだ。

『Seasar2によるスーパーアジャイルなWeb開発』

ひがやすを 著
技術評論社発行
2008年3月26日発売
B5変形判 216ページ
ISBN 978-4-7741-3436-9
定価2,499円(本体2,380円)

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