仕上がり設定は「標準」「ソフトに」を中心に

最近どのメーカーもバリエーションを増やしているカラーモード。「風景」や「ポートレート」など、シーンに合わせて絵づくりを変更する機能だ。フィルムカメラでもシーンや好みに合わせてコダクロームやベルビアなど使い分けていたわけだから、カラーモードの多様化はけっして悪いことではない。

ニコンのカラーモードは長く「仕上がり設定」という名前だったが、「D3」「D300」から「ピクチャーコントロールシステム」というあか抜けた名称になり、新しい世代のカラーモードへと進化した。……思ったのだが、D60では以前の「仕上がり設定」のままとされた。思うに、「ピクチャーコントロールシステム」は、設定を合わせればカメラが異なっても同じ絵作りの画像が得られるというコンセプトをもっている。D60はそれに合致させられなかったか、なんらかの理由でそうしなかったのではないか。推測の範囲だが。

D60の仕上がり設定は、「標準」「ソフトに」「鮮やかに」「より鮮やかに」「ポートレート」、そして「白黒」の6種類。もちろんカスタムも可能だ。カラーの5種類は、絵の傾向としては大きくは違わない。主に彩度とコントラストが変化する。各モードの傾向はそれぞれの名称のとおりだが、「より鮮やかに」はいくらなんでも色が立ちすぎるし、暗部がつぶれる。せいぜい「鮮やかに」止まりだろう。個人的には「標準」でも色がキツく感じることがあるので、「ソフトに」を常用してもいいのではないか。意外にいいのが「ポートレート」だった。「ソフトに」ほどゆるくなく、階調がよく表現される。立ちぎみの青も少し穏やかになるようだ。

仕上がり設定のメニュー。それぞれの微調整はできないが、「カスタマイズ」で独自の設定が可能

彩度の高い被写体を撮影し、部分ヒストグラムを比べたのが下の図
AF-S DX 18-55mm F3.5-5.6G VR / L+Fine(JPEG) / 50mm(75mm相当) / マニュアル(F8、1/60秒) / ISO 100 / WB:マニュアル

D60。各モードでの変化はそれほど大きくはない

こちらはD40x。D60と比べて大きな違いはない

「仕上がり設定」を変更して撮影した。左:標準、中央:ソフトに、右:鮮やかに
AF-S DX 18-55mm F3.5-5.6G VR / L+Fine(JPEG) / 44mm(66mm相当) / マニュアル(F6.3、1/250秒) / ISO 100 / WB:オート

左:より鮮やかに、中央:ポートレート、右:白黒

立ちすぎる「青」

D60の絵づくり全体については、D3やD300と同じ傾向にあるとしていいだろう。細部まで緻密に描写し、それをベースに質感を表現する。場合によっては重苦しささえ感じるほどだが、ニコンらしい真面目な絵づくりには好感をもてるところ。ホワイトバランスもずいぶん安定したように思う。以前は正確なホワイトバランスを追うあまり、少しレンズの向きが変化しただけで色がガラッと変わることもあったが、D60ではあまりそれを感じなかった。いい意味で鈍になっている。

しかし、D60を使っていて結局最初から最後まで気になったのはういて見える青だった。晴天時の日陰がまるで霜が降りたように青く写る。日陰なのだから青いのは当然だが、それが強調されるため、まるで冬のように見える。空の青さも妙な具合になることがあった。本来なら明るくて白く淡くなるはずの空が、ペッタリと青く塗られてしまう。書き割りの背景のようにも見える。

結局のところ、色を乗せすぎではないか。一時、色乗りの良し悪しでカメラが評価されるような傾向があり、色乗りがいい=いいカメラのように言われたこともあった。それに応えようと必死に色を乗せていった結果がこれなのかもしれない。青以外の赤や黄、緑も非常によく乗っている。しかし青ほどは気にならない。青のコントラストを強くするとヌケが良く見え、わかりやすい絵になるというメリットはある。しかしやりすぎると違和感を感じやすいという両刃の剣でもある。その見切りがもう少し上手くできないものかと思う。

明るさを変えてマクベスのチャートを撮影し、各色の明度の変化をまとめたのが下のグラフ
AF-S DX 18-55mm F3.5-5.6G VR / L+Fine(JPEG) / 55mm(83mm相当) / マニュアル(F5.6) / ISO 100 / WB:マニュアル / 仕上がり:標準

D60とD40xを比べたが、基本的な特性はほぼ同じ。シアンとマゼンタのカーブが大きく交差しているのが気になる。また、まったく同じ露出なのに、D60のほうがカーブが下に位置している。それだけ色が乗りやすい特性だと考えられる

ホワイトバランスは、オートでも2次元的な補正が可能。青が立ちやすいので、赤~黄色方向に少し補正しておくといいかもしれない

プリセット ホワイトバランスの変化
AF-S DX 18-55mm F3.5-5.6G VR / L+Fine(JPEG) / 42mm(63mm相当) / プログラムAE(F5.3、1/80秒) / ISO 400 / 仕上がり:標準

よく晴れた暖かい日だったが、日陰が霜の降りたように青くなってしまった
AF-S DX 18-55mm F3.5-5.6G VR / L+Fine(JPEG) / 52mm(78mm相当) / 絞り優先AE(F5.6、1/250秒) / ISO 100 / WB:オート / 仕上がり:標準

空が塗りつぶしたように青い。実際はもっと淡い色なのだが
AF-S DX 18-55mm F3.5-5.6G VR / L+Fine(JPEG) / 55mm(83mm相当) / 絞り優先AE、補正-0.3EV(6.3、1/800秒) / ISO 400 / WB:オート / 仕上がり:標準