NEC、N705iμの生産ラインを公開 - 世界最薄の折りたたみ3Gが生まれる現場

NECは、報道関係者向けに携帯電話の生産技術・製造の中核拠点である「埼玉日本電気(NEC埼玉)」の工場見学会を開催した。見学会では、厚さ9.8mmの「N705iμ」の開発を実現したNEC埼玉の開発・生産技術の説明や生産ラインなどを公開した。

NEC埼玉は、1984年にNECの移動通信事業の中核生産基地として設立され、自動車電話やパーソナル無線機などの生産からスタートした。現在は携帯電話および基地局装置の開発・設計から製造までを行う、開発・生産技術の拠点になっている。1993年からは、多機種同時生産により対応しやすいセル生産方式(※)を採用しており、消費者ニーズの多様化・マルチキャリア対応によるメーカー生産機種の増加などに対応できるという。

※ベルトコンベアによる分業型の流れ作業ではなく、各作業者が複数の工程を担当する形の生産方式。工程間の滞留時間短縮が期待できるほか、多品種少量生産に適しているとされる。

NEC埼玉の九鬼隆訓社長は、同社の強みとして、短期間で生産体制を確立できる点や生産機種の変動に対応できる点を挙げ、「開発部と商品企画の段階から関わり、開発・設計から製造までを一貫して行える」とアピールする。

説明会では、NECモバイルターミナルプロダクト開発事業本部長の田村義晴氏が、NECが得意とする折りたたみ式携帯電話の小型化・薄型化の実績について説明。「折りたたみ式携帯電話は、電話機を閉じた状態にすると筐体の部分が重なる構造になっている。携帯電話を薄くするには必然的に、筐体・部品の薄型化が必須になってくる」と語り、ステンレスや樹脂などの異素材を一体化して成型する「ハイブリッド筐体技術」やLSIの小型化・薄型化、PF面積を削減するなどのデバイス面での薄型化の取り組みを説明した。

今後のNEC携帯電話の方向性については「折りたたみ型を基本としつつ、さらなる薄型化や基本性能を強化し、ユーザーの感性に訴える商品を作っていく」とし、NGNや固定電話との連携、ネットワーク・サーバーとの連携などの新サービスの創造し「シナジーを出しながら連携していく」と語った。

また、折りたたみ型の第三世代携帯電話としては世界再薄という厚さ9.8mmを実現した「N705iμ」に投入された技術について、をNEC埼玉 携帯端末開発部 技術課長の祐川正純氏が説明した。

N705iμは、厚さ9.8mmを実現するため、従来機と比較して約30%の薄型化を図った液晶パネルや、厚さ0.9mmの薄型スピーカーを開発したほか、従来2枚のLSIで実現していた機能を1枚で実現するといったチップの統合や、LSIの上にもうひとつのLSIを搭載することで実装面積を削減するPoP(パッケージ・オン・パッケージ)を採用するなど、薄型化の工夫を行っている。筐体強度を保つため、ステンレスと樹脂で一体成形された素材による「ハイブリッド構造」を採用したという。なお、ハイブリッド構造は、NEC中央研究所が開発した薄型実装技術と、NEC埼玉の商用機開発部隊の"知恵"と"工夫"によって実現した技術だという。

工場見学では、N705iμの液晶モジュールや電話機本体の組み立て工程が公開された。前述の通り、生産ラインは、ラインごとに異なる機種を生産することが可能となっている。長さ11m程度のラインに12人の作業員が並び、流れ作業で携帯電話機を組み立てる。1台あたり10分で完成し、1ラインにつき、1日に約1,000台生産されるという。なお、作業員の熟練度などにより生まれる作業の遅れなどに対応するため、隣り合う作業員の作業を手伝う「助け合い(応受援)」が取り入れられている。

また、NEC埼玉では、レゴブロックを使用した擬似ラインで訓練する「ものづくり道場」という取り組みも行われている。作業員への技術指導や作業効率の改善を目的としている。

そのほか、NEC埼玉で生産された歴代の携帯電話も展示されている。NEC初の自動車電話「TR5E800-2B」、ショルダーホン「TZ803AI」や初代FOMA携帯電話の「N2001」など、懐かしい機種から最新機種までが並ぶ。