総務省は2日、「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」の第5回会合を開き、携帯サイトの審査・認定を行うために設立が予定されている第三者機関の概要を明らかにした。だが、検討会の構成員からは、「第三者機関に国がどこまで関与するかあいまい。公権力による検閲でないことを明記すべき」などの意見が出た。

総務省で開かれた「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」第5回会合

増田寛也総務大臣は昨年12月、携帯電話事業者に対し、未成年者による携帯利用に際しては、違法・有害サイトを閲覧できないようにするためにフィルタリングサービスに原則加入させるよう要請。だが、NTTドコモなどのフィルタリングサービスでは、同社などが認めたサイトでないと閲覧できない「ホワイトリスト方式」を採用しているため、SNSやブログの一部が閲覧できなくなるなど、その弊害が指摘されてきた。

総務省ではこうした指摘を受け、現在は携帯事業者に委ねられているフィルタリングサービスの運用の改善などについて、同検討会で議論を重ねてきた。今回開かれた第5回会合では、これまでの検討結果を受け、事務局が「携帯電話フィルタリングサービスの実効性ある普及を目指して」と題した中間取りまとめの骨子案を示した。

骨子案では、現状の携帯フィルタリングサービスについて、「小学生から大学生に至るまでの世代に同じ内容のフィルタリングサービスしか提供できないなどの画一性がある。また、必ずしも有害とはいえないブログやSNSもブロックされてしまう」などと課題を指摘。

その上で、こうした課題を解決するため、利用者側で閲覧したいと考えるサイトのアクセス制限を解除することができるシステムの構築を提案。さらに、「どのサイトをアクセス制限の対象外(あるいは対象)とするかの基準を作成し、同基準に基づいてコンテンツ事業者から申請のあったサイトを審査・認定する独立した第三者機関を設置すべき」と提言した。

第三者機関の性格については、「行政、コンテンツ事業者、通信事業者からある程度独立していることが重要」とし、「コンテンツの多様性を考えると、複数の第三者機関が基準を作成することが望ましい」と言及している。

骨子案の説明の後に行われた質疑応答では、携帯事業者から「第三者機関の審査・認定結果の適用時期をいつにするかが骨子案では明確でなく、現状のまま既存契約者に対する適用を行うと現場に混乱をきたす可能性がある」との意見が出た。

また、奈良先端科学技術大学院大学 教授の山口英氏は、「アジアの友人から『日本はいよいよセンサーシップ(検閲)を始めるのか』と聞かれた。誤解を招かないためにも、中間取りまとめ案では、第三者機関による審査を『公権力による検閲ではない』と明記すべきだ」と述べた。

東京都地域婦人団体連盟の長田三紀氏も、「第三者機関の位置づけについて、『行政からある程度独立』と記述されており、国の関与の度合いが明確でない。中間取りまとめでは、完全に独立したものであると明記すべきではないか」と主張した。

総務省では、今回の検討結果を受け、「今月25日に行われる第6回会合で中間取りまとめ案を提示、議論した上で4月中に中間取りまとめをし、今秋には最終取りまとめを行いたい」としており、今後の議論の行方が注目される。