国内大手10社が集結!! 「PM格言カルタ大会」

先月31日、国内大手ソリューションベンダである日立システムアンドサービスが「PM格言カルタ大会」を開催した。試合は1チーム3名によるトーナメント形式。同社をはじめ、NECソフトやNTTデータ、野村総合研究所など国内大手10社が最強のベンダの座をめぐり発熱した戦いを繰り広げた。

ソリューションベンダ10社の10チームが参戦 - たたみの上の真剣勝負が繰り広げられた

今回、参加したベンダはNECソフト、キーウェアソリューションズ、野村総合研究所、住生コンピュータサービス、大和総研、ティージー情報ネットワーク、トキメック情報システムズ、TIS、NTTデータ、日立システムアンドサービスの10社。会場には日立システムアンドサービスの本社が使用された。この戦いの勝敗は、チーム全体で獲得した札の合計枚数で決まる。初戦から決勝までを制したチームが優勝となるトーナメント形式だが、個人で獲得した札の枚数で決まる個人賞も設けられた。

大会では、「PM格言カルタ」というカルタが使用された。これはPM(プロジェクトマネジメント)に関する格言をカルタとしてまとめたもので、日立システムアンドサービスの前取締役社長である名内泰藏氏が考案した。このカルタにより、楽しみながら実践的なPM論を学ぶことができるという。ちなみに、このカルタは「名内泰藏 PM格言カルタ」として昨年(2007年)12月1日から同社Webサイトで販売されている。

『PM格言カルタ』の作者で、日立システムアンドサービスの前取締役社長・名内泰藏氏

大会の冒頭では、同社の人財開発部部長である石川拓夫氏が挨拶。「カルタ大会を通してPMの真髄に触れてもらい、いろいろなものを持って帰っていただきたい。新年から明るい話題を振りまいて、ぜひ業界を盛り上げていきたい」とこの大会にかける思いを語った。

開会の挨拶を行う石川拓夫氏

続いて、PM格言カルタの産みの親である名内氏が登場し、「PM講話」を行った。同氏からは「私が最近とてもショックだったのは、去年あたりから大学の情報学科や電子・電機系学科が定員割れしたり、受験者の入試の最低点が過去最低だったという話。学生の間でIT人気が下がってきており、非常に残念だ。盛り上げていかなければならない」と、将来のIT業界の先行きを案じる発言もあった。

また、同氏は昨年4月にPM論の入門書『曖昧性とのたたかい』を出版している。これは日立製作所において、1969年の旧国鉄の座席予約システム MARSをはじめ、1972年の東海道・山陽新幹線の列車運行管理システム COMTRACなど、国内外の官公庁、金融関連企業の大規模システム中心に取りまとめを行い、数々のプロジェクト成功に導いた経験や実績をもとにして執筆したもの。「著書のなかで安全標語みたいなつもりで130個ぐらいの格言を入れたところ、『カルタにしてみたら』という話があり、整理してみたところカルタができた」との誕生秘話も語られた。さらに、「あいうえおで順番に並べると結構ばらつきが多い。いちばん多いのは『し』で15個もある。苦労したのは『ん』です」と、制作にあたっての苦労話も披露し、「カルタにすることでPM論を楽しく学べる。そして覚えやすい。みんな大変忙しいので、本を読んでも記憶に残らないだろうから、カルタを活用してほしい」と述べた。

試合のようす - 最強のベンダが決定!!

本大会では、初戦から各ベンダがヒートアップ。真剣勝負に挑む気合に会場内は熱気に包まれ、方々から「ハイ」という威勢のいい声が乱れ飛んでいた。しかし、対戦が進むにつれ、長時間の正座姿勢に足のしびれを訴える選手が続出。勝負は集中力と札を取るスピードに加えて、我慢強さが大きく左右する結果となった。

試合開始前には、並べられた札を記憶する時間として1分間が与えられる。目の前の札を凝視し、札の並びを覚える参加者たち

1枚の札を巡り四方から手が伸びる接戦。チーム内で札を取り合う光景もしばしば

初戦から3回戦まで駒を進め、見事に決勝戦に挑んだのは、GEM2(日立システムアンドサービス)とteam Daiwa(大和総研)の2チーム。対戦の結果、過去2回の大会を連覇しているteam Daiwaを下し、ホームグランドでの勝負となったGEM2が優勝の栄光を勝ち取った。また、個人賞にはTISの南部実朗氏が輝き、副賞である任天堂の「wii」を受け取った。

決勝戦に挑んだ、GEM2(日立システムアンドサービス)とteam Daiwa(大和総研)の2チーム

表彰式の最後には石川氏が再び壇上に立ち、「せっかく仕事をする以上は楽しいほうがいい。業界全体を盛り上げて、いい方向にしていくことを期待している」と挨拶を行い、大会を締めくくった。

優勝は日立システムアンドサービスのGEM2。「試合結果が査定に響く」という、かなり必死な状態で接戦を制した

個人賞1位のTISの南部実朗氏。「若手を連れてきたので、ちょっと遠慮があって有利だったかも」とコメント

覚えておきたいPM格言

なお、名内氏が講話のなかで紹介した、カルタに収録されている格言の一例は以下のとおり。

「何も得 ないのに報告 するものか」

上司にとって部下からの報告は必須である。しかし、その結果怒られるだけなら、本来部下は不都合なことは報告しない。どんな報告に対してもマネージャはせめて受け止めて、的確な対応やアドバイスをしなければならない。プロジェクトマネージメントは、オープンな環境でやらないとうまくいかないというのが、プロジェクト管理の基本。

「寝ていても 考え続けりゃ 解も出る」

よい設計、管理というのは、考えることを忘れては生み出せない。「とにかくやってみたほうがいい」という考えもあるが、巨大なプロジェクトの場合には、そうすると中身がぐちゃぐちゃになってしまう。寝ている間にも夢を見るくらい考えることに没頭すると、よいアイディアが浮かぶと言われているが、限られた納期で無限に時間を割くわけにはいかないから、最低1週間なら1週間と自分でタイムリミットを決めて考えに考え抜くことが必要。

「ユーザと ベンダ隔てる 馬鹿の壁」

ユーザは"馬"だと思って発注したが、ベンダは"鹿"だと思ってやっているちうような食い違いが両者の間に存在する例が多い。こうした両者の間の大きな壁は、ユーザとっては不満になり、ベンダにとっては不幸になる。プロジェクトの安定化を図るには、いかに壁の厚さを減らすかが大切。定義書の曖昧性を取り除くよう、両者が努力しなければならない。

絵札と読み札のほか、解説書が同梱されている『PM格言カルタ』。日立システムアンドサービスのWebサイトにて2,100円で販売