NECは今月5日から7日までの3日間、、ITと通信ネットワーク関連の技術を広く紹介する「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2007」を東京・江東区の東京ビッグサイトで開催した。初日に行われた基調講演では、NTTの和田紀夫会長が登場し「NGN(Next Generation Network)が目指すもの」とのタイトルで、同社が目指すNGNの特徴や、NGNがもたらす企業活動や個人生活への影響、社会問題解決への貢献などついて解説。「NGNにより、新たなサービスを開拓、創造していきたい」との意欲を示した。

NTTの和田紀夫会長

ICTの「光」と「影」

現在、ITや通信技術の発展が社会の構造変化を推し進めている。放送と通信、固定通信と移動体通信――パソコン、テレビ、携帯電話など属性の異なるさまざまな情報機器どうしが繋がり合い、幅広い分野でのサービスが融合し、Web2.0、CGMなどネットビジネスの新潮流が出現、ビジネスのグローバル化が進むなど、これまでにはなかった動きが活発になっている。

国内ではインターネットのブロードバンド接続の普及が進み、サービス加入者はFTTH、ADSL、CATVをあわせると2,700万、FTTHだけでも1,000万を超えようかという段階にまで来ている。さらには、昨年(2006年)8月末からは、携帯電話において下り通信速度が最大3.6MbpsとなるHSDPAサービスをNTTドコモが開始し、移動体通信におけるブロードバンド化も始まった。

和田会長によると、ICT(Information and Communication Technology)の進展で「時間、距離、知識偏在の壁をを乗り越えることができる。個人、企業、社会全体に、新しい価値を生み出せる」ようになるという。利便性、効率性、快適性の3つを機軸に、コラボレーションの進展、生活の質向上、スモールビジネスの興隆、雇用・新規産業の創出、コミュニケーションの多様化、多種多様な娯楽機会――といった利点がもたらされる。和田会長は「企業にとっては、新たなビジネスができると同時に、少子高齢化が急激に進む時代に、医療介護、省エネルギー、省電力、環境問題、労働力不足など避けて通れない問題の解決につながる」と話す。これらの要因はICTの「光」の部分である。

一方で、ICTの普及にともなって「影の部分」も浮上してきている。サイバーテロ、システム誤作動による弊害、情報漏えい、学校裏サイトなどネット上での個人攻撃に至るまで、深刻なリスクを作り出している。和田会長は、「これらを克服しなければ、『光』の部分まで使えなくなるのではないかとの危惧している。『光』を伸ばし、『影』をできるだけ小さくしていくこと」を課題として挙げた。

同社では、中期経営戦略で、ブロードバンドユビキタス社会を実現することを目指し、そのため、オープンなネットワーク環境を構築するとしている。その具現化のひとつがNGN(Next Generation Network : 次世代ネットワーク)だ。NGNは「安心、安全で、便利なネットワークであり、産業の競争力を強化、社会的課題を解決し、経済発展にむすびつく」(和田会長)ものと位置づけられている。

NGNを国内ICT産業の推進力に

NGNには、QoS(品質確保)、セキュリティ、信頼性、オープンなインタフェースという4つの特徴がある。セキュリティ面では、回線認証により、なりすましを防いだり、ネットワークの入り口で、不正アクセスをブロックすることなどができるようになる。信頼性の点では、設備の二重化、冗長化を進め、エリアを特定したトラフィックのコントロールができ、急激に大量のトラフィックがあった場合、緊急性の高いトラフィックは優先的に扱われる。

また、NGNのインタフェースは、ユーザーネットワーク間インタフェース(UNI : User Network Interface)、ネットワーク相互間インタフェース(NNI : NetWork-NetWork Interface)、アプリケーションサービスのサーバーネットワーク間インタフェース(SNI : Application Server-Network Interface)があり、「これらの仕様は開示されており、サービスプロバイダーが使用することができる」(和田会長)という。

同社では、NGNを促進するための取り組みの一つとして「次世代サービス共創フォーラム(仮称)」の立ち上げを考えている。「パートナーの要望を聞いて、NGNについての情報を提供するとともに、営業、技術面でのコンサルティング、場合によっては出資までを引き受け、次世代型のサービスを提供しようという企業を支援、NGNの特長を活かしたサービスをつくる場」(和田会長)とすることを目指す。また和田会長は「ゆくゆくは、フォーラムによる成果を広く発信して、海外にも展開する。それが国際競争力強化にもつながる」と話した。

和田会長は「現在、日本は、自動車産業などを中心に、国際競争力はあるが、情報、通信、電気、電子などの分野では、低下しているのではないか。これらの国際競争力の巻き返しのために、NGNを使ってもらえればよい」と語り、NGNを国内ICT産業の推進力としていくことを図るという。日本発NGNの方向性としては「NGNは進化途上の技術だ。国際機関の認定した標準、あるいは事実上の標準など、それぞれの標準に則ったものはあるが、すべての面で固まったNGNというのはいまのところまだない。各国が独自に進めている状況にある。何とか先を走りたい。海外や国際機関の動向もみてはいるが、国内でも来年から商用化が始まる。パートナーといっしょに、NGNの上に新たなサービスをつくり、価値を創造していきたい」と語った。