講演する山之内秀一郎氏(7月26日、東京国際フォーラムにて)

少し前になるが、7月に行われた「日立uVALUEコンベンション2007」(日立製作所主催)の併設イベント「イノベーションサミット2007」(日経ビジネス主催)の講演にて、JR東日本元会長 山之内秀一郎氏が「最も成功した民営化」と言われるJR東日本のイノベーションについて語った内容を紹介したい。2001年に長年の悲願だった自動改札実現の一環として「Suica」を開発、導入して以来、その発行枚数は2,000万枚を突破。民営化以降、安全性向上及び顧客サービス向上をモットーに同社が取り組んできた組織面、技術面、サービス面でのイノベーションとは?

国鉄からJRへ。その民営化の成果は数字に顕著に表れている。国鉄時代の1983年度と、JR7社の2004年度の業績を比較したところ、成果は一目瞭然だ。

年度 1983年度(国鉄) 2004年度(JR7社)
営業収入 3兆2,989億円※ 14兆3,058億円
営業損益 ▲1兆8,412億円※ 1兆7,208億円
列車キロ 6億2,934万8,000km 7億3,649万2,000km
職員数 35万8,045人 12万9,374人
列車キロ/職員数 175万8,000km/人 569万3,000km/人
※助成金3,383億円を含む

JR東日本単体で比較した結果は以下のとおり。

年度 1988年度 2005年度
営業利益 1兆5,657億円 1兆8,831億円
列車キロ 2億2,568万km 2億6,006万3,000km
輸送量 50億6,800万人 59億1,000万人
社員数 8万2,500人 6万7,710人
鉄道運転事故件数 376件 137件

国鉄に入社し、民営化を支えたJR東日本元会長である山之内秀一郎氏は語る。

今回、いいタイミングでお話をさせていただく機会を得て感謝をしております。"いいタイミング"と言いますのは、今年は国鉄からJRへ民営化してちょうど20年経ちます。郵政民営化などもありましたが、もっとも劇的な格好で改革を行ったのは国鉄だと思っております。今年はSuicaがスタートするなど、その20年の成果がハッキリ出た年だと思います。ユキビタス社会の先がけとして、非常にいいタイミングではないでしょうか。

世界で初めて鉄道が開通したのが1830年、日本は1872年ですから、鉄道はすでに1世紀半以上の歴史がある最も古い産業です。それですら、これだけのイノベーションができる。いや、イノベーションをしなければいけない。その結果がいかに需要に響くか、という話をさせていただきます。