既存のiPodラインナップを一新したところで、スクリーンに「We're not done yet...」の一文が現れた。そしてAppleが「これまで開発したiPodの中でベスト」とアピールするiPhone搭載のiPod機能を備えた「iPod touch」が発表された。会場からは大歓声である。やはりタッチ操作可能なiPodへの期待は高かったようだ。
ところがスクリーンにiPod touchが映し出された瞬間、聴衆は一気に引いた。外観はiPhoneそのまんまで、iPod関連のアイコンがぱらぱらと並ぶ寂しいホーム画面……。「手抜きにも程がある!」という感じの苦笑も聞こえてきた。マルチタッチによる操作、対角3.5インチのディスプレイでの美しい表示が紹介されても、すでにiPhoneが発売されている米国では目新しくない。
もちろんiPod touchの発表が、それで終わるはずはない。まずは既存のiPodの機能だけを示して見せたのだ。そしてホーム画面の空白スペースをiPod touchで実現する"iPodプラス"の機能で1つずつ埋めていくことで、新たなiPodの利用体験を強調した。その軸となるのは802.11 b/g対応のWi-Fi機能だ。
ホテルや空港など、モバイル環境でホットスポットを利用する際、Webブラウザを用いたログインが必要になることが多い。それができなければ、Wi-Fi機能を備える意味はないとJobs氏。そのためiPod touchは、iPhoneと同様のSafariブラウザを装備する。通常のWebぺージのデザインを崩さずにそのまま表示でき、手軽にGoogleやYahoo!検索にアクセスできる。iPhoneでは英語しか入力できないが、世界的に販売されるiPod touchは多言語に対応。日本語もソフトウエア・キーボードによる入力が可能だ。またYouTubeプレーヤーを搭載し、Wi-Fiでインターネットに接続した環境でYouTubeにアクセスできる。
iPhoneに搭載されているMailやMapsが存在しないが、iPod touchには16GBモデルが用意され、米国での価格は399ドル。Wi-Fi機能とSafariを備えるだけに、iPod機能を優先し、より大容量を求めるiPhoneユーザーには悩ましいところだ。またiPod touchはスリムで軽く、iPhoneのズシっとくる感じがない。これもiPhoneユーザーを悩ませるポイントになりそうだ。
さてiPod touchの価格を発表した後で、「One more thing...」が登場。今回はiTunes Wi-Fi Music Storeだった。iPod touchまたはiPhoneからWi-Fi経由でiTunes Storeにアクセスし、Mac/ PC用iTunes Storeと同様のセレクションをブラウズして直接購入できる。iPod touch/ iPhoneにダウンロードした楽曲は、同期の際にMac/ PCのiTunesに反映される。
さらに、もう1つのサプライズとしてStarbucksとの提携が発表された。ホットスポット・サービスを提供する対応Starbucksを訪れると、iTunes Wi-Fi Music StoreにStarbucksボタンが現れるようになる。Starbucksセクションから店内で流れている楽曲の情報やオリジナルコレクションにアクセスでき、その場で試聴・購入できる。音楽発見を手助けする新たなサービスだ。
Starbucksは独自の文化を持った企業で根強いファンを抱えている。その点ではAppleと共通点があり、ユニークな文化を持つ2つの企業の結びつきは会場で非常に好意的に受け止められていた。