日本オラクルは、中長期の戦略概要を発表、「SaaS事業に全社を挙げて注力していく」(新宅正明社長)とともに、それぞれの企業内でシステムを保有する既存形式とSaaSが共存する「ハイブリッドモデル」の提供を主眼とし、さらにこの両方の領域で「ナンバーワンを目指す」(吉川剛史 執行役員 事業戦略統括経営企画室長)ことを明言した。同社はいまの時点が「従来型のコンピュータソフトがサービス化していく黎明期」(同)と捉え、長期的には「サービス化」モデルに移行いくしていく考えだ。また、国内企業を買収する可能性も示唆した。

企業で利用されるITは、かつての、大型汎用機全盛時代には特定の1社がすべてを提供していたが、オープン化が進み、ハード、ソフト、システム構築などをそれぞれ別々の企業が請け負うようになり、現在は、ソフト業界での再編が始まり、買収/合併による、統合化が進行している。次に来るのは、SaaSの時代ということになる。

吉川氏は「これまで、ハードとソフトは連携しつつ、競合してきたが、ネットワーク経由でソフト/ハードの機能が提供されるというかたちで、ハード/ソフトは浸食を受けている。その一環がSaaSだ。SaaSは、ソフトをリプレースするというのではなく、このような潮流への需要を牽引している」と述べ、すべてがSaaS化するわけではなく、企業はそれぞれの状況に応じて、SaaSか自社内でシステムを保有する形式のどちらかを選択するようになり、長期的にみれば、すべてがサービス化する方向に向かうだろうが、中期的には双方のハイブリッドが広がる、とみており、「オラクルの強みは、SaaS、自社保有型の両方をもち、柔軟に良いかたちで提供できること。どちらか一方だけでは需要は大きくならない。オラクルはこれらの両方でナンバーワンを目指す」としている。

新宅社長は「SaaSでは、一定の規模がなければ、収益性は上がらない。強い製品と汎用的な製品、この2つがSaaSでは重要になる。米オラクルが買収した企業の製品で、これらを整える。また、オラクルはSaaSをグローバルで展開しているので、世界中から、最もコストの低いリソースを利用することができる。これは重要なポイントだ」と話す。

日本でのSaaS市場動向について同社は「日本と海外との違いは、経営者の関心が、日本版SOX法に向いていることだ。いま、SaaSを試してみるより、まず、セキュリティを強化して、内部統制を整える。こちらの投資が先になる。一方、GRC(Governance、Risk、Compliance)に先行して取り組んでいるところでは、いままで、こんなシステムで運用していたのか、との声が聞かれる。内部統制のあとに、ニーズが来る。時間のずれだ」(吉川氏)とみている。

一方、米オラクルが次々と企業買収を進めていることにともない、日本オラクルが取り扱う商品は「5年で10倍に増えた」(新宅社長)という。そこで、成長戦略にとってパートナーとの協業が非常に大きな要因として浮上してくる。「自助努力で本体を拡大するのは重要だが、外部からのレバレッジ(てこ)」(吉川氏)による効果にも期待、エコシステムの構築を図る。

また、買収戦略について吉川氏は「日本では、ブロードバンド化が進展し、モバイル環境も進んでいる。この二つの領域から、オラクルが必要とする技術があれば、日本発で、世界で使用できるものを丹念に探す。日本だけに閉じている企業がある」と語り、日本企業を買収する可能性に言及した。