データベース(DB)といえば、一般的には統合された基幹システムで稼動しているというイメージが強いが、このところ、モバイル機器や家電をはじめとする電化製品の高機能化や、RFIDの導入による現場レベルでの情報化の進展などによって、機器内や各拠点に細かく配置する組込みDBに注目が集まっている。そうした中にあって、アイエニウェア・ソリューションズは5月10日に「SQL Anywhere 10」日本語版(SQL Anywhere)をリリースした。SQL Anywhereは、国内のガソリンPOSレジ等へのソフトウェア組込みDBとしてはトップシェアを誇るという。同社プリンシパルコンサルタントの森脇大悟氏に、組込みDBの現状と、SQL Anywhereの特徴について話を聞いた。

アイエニウェア・ソリューションズ プリンシパルコンサルタント の森脇大悟氏

「組込みDBには、大きく2種類ある」と、森脇氏は説明する。

1つは一般的に組込みシステムと呼ばれているハードウェアに組込まれるDB。最近の家電や自動車の電装製品やその他電子機器には、機器を制御するためのマイコン用ソフト/ハードが内蔵されている。その機器内部のコンピュータシステムに組み込んで使用するソフトウェアを組込みソフトウェアと言い、一般的にはそれ向けのDBを組込みDBと言う。これらのハードウェアのOSがハードウェアの高機能化とともに、TRON系のハードに近い環境からWindows CEやEmbedded Linux系のよりリッチな世界にシフトする中で、組込みDBの定義も少しずつ変わりつつある。同社では、Windows のPC系のOSで稼動するPOS端末のアプリケーションに使用されているDBも、特殊端末であるPOS端末とともに出荷されることからハードウェア組込みDBと呼んでいる。

また、最近になって日本でもリリースされたスマートフォンの市場が盛り上がりつつあり、製造した製品の検査/点検を行うためにスマートフォン上でDBを稼動させ、それがセンターのDBと同期をとるという形態で用いられることもある。しかし、このような場合は、モバイルDBと呼ばれている。

もう1つの組込みDBは同社が「ソフトウェア組込み」と呼んでいるもので、パッケージソフトなどに組み込まれるものだ。これは一般的には「同梱」と呼ばれているものに近い。「これらのエンドユーザーは必ずしもITに詳しいわけではない。本来の業務が忙しいため、DBのメンテナンスに手間をかけたくないと考えている。そんなユーザーにも使ってもらうには、メンテナンスフリーであることが求められる」(森脇氏)という。

また、ソフトウェア組込みについては、「従来とは異なる分野でニーズが高まっている」(森脇氏)と補足する。従来は大型機が必要だったが、PCの高機能化によりダウンサイズが可能になった分野がそれだ。最近では、従来はIT化が難しかった全国に散らばる業務拠点にもITシステムを導入できるようになった。センターと各拠点の端末とを結ぶシステムではWebが用いられることが多いが、「各拠点の通信環境は必ずしもブロードバンド化されているとは限らない。また、端末を拠点の外に持ち出して業務を行うこともあるため、ネットワークに接続されていなくても業務を継続できるようにしておく必要がある」(同)。そのため、通常のアプリケーション内にDBを組み込むケースが増えているという。