続いて提示された富士通の新しい提案が、「フィールド・イノベーション」だ。ITの価値をさらに高めるためには人の知恵をもっと活かす必要がある、との認識を踏まえ、人やプロセスやITの役割を見える化し、活動に関わる人々の知恵を活かして改善していくという目標が掲げられている。

富士通が考える「見える化」

ここでいう「フィールド」とは、「課題を発見し、その解決のために設定する対象領域」と定義され、必ずしも一般的な意味での「現場」とは一致しない。担当者の立場によってもフィールドの範囲が変わってくるが、最初のステップとなるのがフィールドの構成要素となる人、プロセス、ITの可視化(見える化)だという。たとえばITではブラックボックス化しており、内容がよく分からないことが珍しくないが、これでは課題を把握することも困難になり、改善は難しい。同氏はピーター・ドラッカーの「測定できないものは管理できない(If you can't measure it, you can't manage it.)」という言葉を引きながら、「改善は"見える化"から」というアプローチを強調した。つまり、富士通のいう「フィールド・イノベーション」とは、対象領域を明確に設定した上で構成要素を可視化し、その上で具体的な改善プロセスを実行していくという取り組みであり、必ずしもITのみに限定せず、さまざまな角度から人、プロセス、ITを継続的に改善していくというものであり、そのためのサービスを提供していくことになる。

同氏が紹介した事例では、富士通が導入した独自の人間観察手法でもある「ワーカー分析」を適用し、観察やインタビューを通じて問題点を見つけ出して改善したことで、業務効率が大幅に向上した例がいくつもあるという。ただし、中には人の動き方やプロセスを改善しただけで大幅な効率向上が実現したが、ITには何も手を加える必要がなかった例もあったことが、やや冗談めかして紹介されていた。

さらに、こうした"フィールド"を対象とした業務改善の取り組みは富士通社内でも実践されており、従来、属人的な努力で何とかしてきたソフトウェア開発の現場でもシステマチックな手法による効率的な取り組みによって生産性の向上が図られ始めているという。

"The FUJITSU Way"

同氏はJSOX対応についても言及し、「リスクを明らかにする必要は理解できるが、富士通の経営が苦しい時期になぜそんなことをしなくてはいけないのかと思った」と本音を明かしつつ、「つまりプロセスを明らかにするということであり、社内の業務プロセスが"見える化"されることで無駄や無理、ムラも明らかになる」という効果があることを指摘し、同社による「まず見える化から」というアプローチの正しさを印象づけた。

最後に同氏は富士通の今後の取り組みについて、「ITソリューションからビジネスソリューションへ」という大目標を掲げ、その上で富士通自身がフィールド・イノベーションを実行する「フィールド・イノベーター」になっていくと宣言した。