ソニーは、2006年度連結業績を発表した。売上高は対前年同期比10.5%増の8兆2,957億円、営業利益は同68.3%減の718億円、税引前利益は同64.4%減の1,020億円、当期純利益は同2.2%増の1,263億円だった。同社の中核であるエレクトロニクス分野の好調により売上高は過去最高となったが、プレイステーション3(PS3)の発売で、値下げや、先行投資などが影響して、ゲーム分野が赤字に転落したことや、金融分野での減益で、全体の営業利益は大幅に減少した。ゲーム分野は2007年度も損失が続く見通しだ。

売上高は過去最高

エレクトロニクス分野の売上高は同16.9%増の6兆505億円、営業利益は同22.67倍となる1,567億円だ。牽引車となったのは、液晶テレビ「BRAVIA」、パソコン「VAIO」、デジタルカメラ「サイバーショット」など。「VAIO」の販売/出荷台数は同30万台増の400万台で、そのうち海外では310万台、ノート型が好調だった。2006年度は第2四半期に、同社製リチウムイオン電池セルを用いた、デル、アップル、レノボのノートパソコン用電池パックに不具合があったことにより、それらの回収と、自主交換プログラムの実施にともない512億円の引きあて金が発生したが、外部顧客向け売上の13%増、対ドル/ユーロの円安効果などが貢献、営業増益となった。ただ、前年度の営業利益には、ソニー厚生年金基金の代行返上益(同分野で645億円)が含まれている。

同分野復調の一つの指標となっていたテレビ事業は、売上高が同32%増の1兆2,350億円、営業損益は225億円の赤字だが、前年度に比べ740億円改善した。液晶テレビは大型製品、フルHD対応製品を中心に前進、全地域で販売が好調に推移し、630万台を出荷した。一方、ブラウン管テレビは市場全体が縮小、680万台から470万台に減少している。需要のある地域では販売を継続するが、液晶への移行を進め、2008年3月期で生産を終了する。また、液晶リアプロジェクションテレビは「厳しい状況であり、損失が拡大した」(湯原隆男コーポレート・エグゼクティブSVP)。

同社は2007年度の液晶テレビの出荷台数を1,000万台と見込んでおり、テレビ事業は「07年度通期で黒字化する見通し」(同)だが、「ソニーのテレビビジネスは第3四半期がピークになるが、第1四半期(に黒字化すること)は難しい」(大根田伸行執行役EVP兼CFO)。「25-30%低下した2006年度より若干穏やかだが、液晶テレビは価格下落が依然大きい。20-25%程度下がるとみている」(同)状況が背景にある。

半導体事業は、売上高が同57%増の7,800億円、営業損益は100億円の損失で、前年同期比で240億円改善した。2006年度はPS3向けが貢献した。同事業での外販比率は「およそ30%で、残り7割の大半はゲーム分野向けだ。外販比率は概ね25-30%で推移している」(湯原SVP)という。この分野での2007年度の設備投資は、同200億円減の1,300億円となる。

エレクトロニクスは営業利益が大きく伸びた

ゲーム分野は、売上高が同6.1%増の1兆168億円。PS3の発売によりハードは日米欧とも増収となった。しかし、営業損益は2,323億円の損失(前年同期は87億円の利益)に転じた。PS3の発売では、製造コストを下回る価格による販売で赤字を計上したとともに、PS3プラットフォームの立ち上げ関連費用が影響した。ハードの売上はPS3が550万台、PS2が同12%減の1,420万台、プレイステーション・ポータブル(PSP)が同41%減の836万台で、いずれも減収となった。ソフトの出荷本数は、PS3向けが1,320万本、PS2向けは同13%減の1億9,300万本、PSP向けは同30%増の5,410万本だ。PS2向けは減収で、ソフト全体としては減収となった。

PS3の06年度生産出荷目標は600万台だったが、550万台に留まった。そのうち、販売店への出荷数は「360万台程度」(大根田CFO)だという。日米市場での生産遅延が響いた。2007年度は1,100万台を目指す。だが「2007年度も残念ながらゲーム分野は赤字が残る」(同)見込みだ。「2007年度は(PS3の)コストダウンが進む」が、それでも、製造コストが販売価格を上回る、いわゆる「逆ザヤ」は「解消できない」(同)ため、ゲーム分野は赤字を脱することができない。大根田CFOは「ゲームの黒字化はいまのところ、2008年度の見通しだ。逆ザヤはできるだけ早く解消したい」と述べた。

大根田CFOによれば、日本、北米、欧州の最近のゲーム機シェアは次のようになる。日本ではPS2が18%、PS3が20%、任天堂のWiiは58%。北米ではPS2が33%、PS3は8%、Wiiが16%。欧州ではPS2、PS3がそれぞれ30%ずつで、Wiiが30%弱。地域により差はあるが、PS3が際立って優位にあるといえるところはない。PS3の値下げについて、大根田氏は明言を避けたが、逆ザヤ解消とは相反することになり、どうなるかは不透明だ。同社は今後「ソフトの充実化に努める」(湯原SVP)意向だが、ゲーム事業は決して平坦ではなさそうだ。

PS3投入にともない、ゲーム分野は赤字に

エレクトロニクス分野は、かなり顕著に回復してきたといっていいだろう。その背景について大根田執行役は「中鉢(良治社長)も就任以来何度もいっているが、ソニーは顧客の立場に立った商品開発が不足してしまった。そのあたりのマインドセット(意識変革)が大きい。技術者の独りよがりの開発ではなく、真に求められている商品が売上を伸ばし、利益確保につながった」と話す。それでも、課題はまだある。2006年度の「HDD&フラッシュメモリー内蔵型携帯オーディオ」は550万台の見込みに対し450万台で、2007年度は500万台の見通しだ。大根田CFOは「この市場の多くは日本で、米国ではシェアは低く、戦いになっていない。この領域では、オーディオだけでなく映像を含めたビジネスでもどって来たい」と語る。

2007年度通期の連結業績見通しは、売上高が同6%増の8兆7,800億円、営業利益は同6.13倍の4,400億円、税引前利益は同4.12倍の4,200億円、当期純利益は同2.53倍の3,200億円としており、2007年度末に営業利益率5%との目標は「達成できる見込み」(大根田CFO)だ。構造改革の点では、同年度末までに2,000億円のコスト削減、65の製造拠点のうち11カ所を統廃合、20%のモデル数削減、人員削減1万人、資産売却は1,200億円としていたが、2005、2006年度までで、コストは1,750億円減、製造拠点数は9カ所を統廃合、モデル数は20%減、人員は1万2,000人削減、資産売却は2,010億円に上り、同社は進捗状況は予定通り、としている。また、エレクトロニクスの15分野で撤退、縮小などを検討、すでに10分野で対応しているが、新たにコンピュータ用ディスプレイ、CRTプロジェクションテレビ、標準型デスクトップパソコンのビジネス終了を明らかにした。

大根田伸行執行役EVP兼CFO(左)と湯原隆男コーポレート・エグゼクティブSVP