JRグループは3月4日、例年より少し早くダイヤ改正を実施した。鉄道事業者がダイヤ改正を行う理由は2つあると筆者は思う。ひとつは利用者に使いやすい運行に改めること。沿線の環境や利用形態は時代とともに変化するから、列車の運行も合わせていく必要がある。もうひとつは鉄道会社の利益を高めること。新たに利用が見込める路線や駅をつくり、列車を走らせる。利用の少ない列車や駅を廃止する。

市販の時刻表のダイヤ改正号を眺めると、これら2つが掲載位置に反映されていた。鉄道事業者の都合も、時刻表の表記方法を工夫すれば便利に見える。

札幌~稚内間(左図)、札幌~網走間(右図)は、改正前の直通運転では4編成必要だった。改正後は短い区間で折り返すため、1編成ずつ減らせる

今回のダイヤ改正で最も大きな変化はJR北海道の特急列車網だろう。札幌~網走間・札幌~稚内間の直通列車が減った。しかし、旭川駅での乗継ぎを実施することで、旭川~網走間・旭川~稚内間の特急列車はダイヤ改正前の本数を維持している。札幌~網走間は改正前の直通列車4往復のうち2往復が旭川駅乗継ぎ、札幌~稚内間は改正前の直通列車3往復のうち2往復が旭川駅乗継ぎとなった。

直通で行けた行路で乗継ぎが必要になる。不便だ。これは利用者のためではない。JR北海道の都合といえる。直通運転したくても車両が足りない。特急形気動車は老朽化しており安全上の問題で使えない。かといって、すべて新型車両に置き換える費用もない。一方、特急形電車は北海道新幹線開業前の特急「スーパー白鳥」で使っていた車両がある。

しかし旭川~網走間・旭川~稚内間ともにほとんどが非電化区間だ。悔しい。運行本数も少なく、電化の投資効果もないかもしれない。函館本線新函館北斗~長万部間、室蘭本線長万部~東室蘭間を電化していれば、こちらに特急形電車を投入し、比較的新しい気動車を旭川~網走間・旭川~稚内間に投入できただろう。いまさら何を……という話だが。

ダイヤ改正後の時刻を記した「JTB時刻表」「JR時刻表」ともに、巻頭の特急時刻表について配置を変更している。前号までは札幌~旭川間「スーパーカムイ」、札幌~網走間「オホーツク」、札幌~稚内間「スーパー宗谷」「サロベツ」を別々に掲載していた。ダイヤ改正号では札幌~網走・稚内間という表にまとめられた。また、JR九州で誕生した特急列車「かわせみ やませみ」「いさぶろう」「しんぺい」は、ページ数を増やすことなく、他の列車の欄を圧縮した上で追加されている。

JR北海道のページでは、「JTB時刻表」が大胆に掲載位置を変更している。函館本線長万部~小樽間、室蘭本線東室蘭~室蘭間・苫小牧~岩見沢間を2ページ見開きにまとめた。札沼線(学園都市線)は単独で2ページ見開き、日高本線と富良野線は組み合わせて2ページ見開きとした。それまでは函館本線長万部~旭川間の時刻を掲載し、その下に短い路線を並べていた。今回の配置変更で、JR北海道のページは4ページの圧縮に成功している。函館本線で5駅が廃止されたことがレイアウト変更のきっかけかもしれない。いや、JR北海道が経営分離した場合に備えたという見方は考えすぎだろうか。

JR北海道で減らした4ページ分をどこに振り向けたかというと、まず2ページは中国地方だ。芸備線三次~広島間で平日・土休日ダイヤが導入され、快速列車が増発された。それまで呉線・芸備線を組み合わせて4ページに収まっていたが、ダイヤ改正号では呉線が5ページとなり、芸備線三次~広島間はそれでも収まりきらず、3ページ先まで続く。可部線も2駅延伸したため掲載枠が拡大。その影響で付近の路線がほとんど配置換えとなった。

残り2ページは高崎線・上越線に振り向けられた。運行本数の増加というより、新前橋駅での接続を見やすく工夫した結果だろう。上越線・吾妻線の普通列車は日中を中心に高崎駅直通が減り、新前橋駅発着となって、両毛線の高崎駅発着の列車と接続する。これを時刻表で示したことで、2ページの増となった。

「JTB時刻表」では、山陰本線も掲載区間の区切りが変わり、舞鶴線は山陰本線京都~鳥取間の時刻表に組み込まれた。他にも福知山線の平日・土休日ダイヤの分離掲載が混合掲載に変わったり、太多線が1ページにまとまったりしている。ダイヤ改正前の2月号までと比べてページ数がずれているので、気をつけたい。

「JR時刻表」の変更点は少ない。芸備線三次~広島間の増発と可部線延伸にともない、中国地方の路線の配置が換わった。合計で2ページ分の増加は、湖西線・北陸本線・IRいしかわ鉄道線・あいの風とやま鉄道線を2ページ減らして対応している。細かいところでは、東海交通事業城北線が平日と土休日で分離された。

時刻表の変化という視点で眺めると、2017年3月ダイヤ改正で最も大きな"事件"は芸備線三次~広島間の平日・土休日ダイヤ導入、快速列車の増発かもしれない。「JTB時刻表」「JR時刻表」ともに、掲載位置の変更という形で苦労がにじみ出ている。