東京商工リサーチは5月20日、2015年「全国新設法人動向」調査の結果を発表した。東京商工リサーチの企業データベース(対象309万社)から、2015年に新しく設立された法人データを抽出し、分析したもの。

2015年に全国で新しく設立された法人(新設法人)は、12万4,996社(前年比4.5%増、前年11万9,658社)にのぼった。2010年以降は6年連続で前年を上回っている。

新設法人年次推移

「不動産業」「宿泊業」など目立つ

産業別の前年比では、10産業のうち8産業で増加した。増加率トップは不動産業の17.8%増。次いで、卸売業16.7%増、農・林・漁・鉱業13.0%増、建設業7.6%増、製造業6.6%増、情報通信業5.8%増、運輸業5.3%増、サービス業他1.1%増の順。不動産業は低金利の中、将来の需要増を見込んだ設立が増加した。卸売業は、化粧品卸やジュエリー製品卸などの伸びが目立った。

2015年産業別新設法人

この一方で、小売業は5.2%減で前年を下回った。内訳では、コンビニエンスストアや中古自動車小売、時計・眼鏡・光学機械小売などで減少率が2桁になった。

業種別では、前年比で各種商品卸が78.1%増(905→1,612社)、各種商品小売が39.8%増(251→351社)と個人消費の持ち直しから流通関連が高い増加率をみせた。また、訪日外国人の増加や東京五輪開催をにらんで「宿泊業」が58.6%増(379→601社)と1.6倍増に。さらに、「製造業」でもパルプ・紙・紙加工品製造が17.6%増(74→87社)、プラスチック製品製造が11.4%増(140→156社)など高い伸びを示し、景気の先行き期待の大きさをうかがわせた。

一方で、電気・ガス・熱供給・水道業は33.3%減(3,301→2,203社)と前年を下回った。これまで太陽光など再生可能エネルギーによる発電を目的とした法人が多く設立され、増加ぶりが際立っていたが、固定価格買取制度の見直しの動きもあって設立ラッシュが一服した格好だ。

資本金別では、「5百万円以上1千万円未満」が2万4,387社(前年比12.7%増)、「1百万円以上5百万円未満」が5万6,171社(同3.9%増)と増加したのに対して、「1億円以上」が416社(同12.6%減)、「5千万円以上1億円未満」が574社(同6.5%減)と前年を下回った。最低資本金規制の撤廃が浸透し、小規模な資本金の法人設立が目立つ。

増加率が高いのは北陸、沖縄県

地区別では、全国9地区のうち東北と中部を除く7地区で前年を上回った。増加率では、北陸が10.2%増(1,656→1,825社)でトップ。次いで、関東6.7%増(5万8,781→6万2,712社)、近畿5.4%増(1万8,956→1万9,973社)、九州3.2%増(1万1,934→1万2,316社)、北海道2.3%増(4,143→4,239社)、四国1.9%増(2,149→2,465社)、中国1.1%増(4,734→4,888社)の順。

2015年地区別新設法人

一方、復興需要に加えて、支援に関わる非営利団体の設立などで増加が目立った東北は3.7%減(5,353→5,156社)で2年連続の減少、中部は1.4%減(1万1,682→1万1,522社)だった。

都道府県別では、東京都が3万7,250社(構成比29.8%)で最多。次いで、大阪府が1万1,042社(同8.8%)、神奈川県が8,387社(同6.7%)、愛知県が5,997社(同4.8%)だった。一方、新設法人数が最も少なかったのは島根県の329社。次いで、鳥取県335社、高知県411社、秋田県419社、福井県449社、山形県が469社の順。

前年との増減率をみると、33都道府県で前年を上回り全国的に増勢が目立った。増加率トップは、沖縄県(1,482→1,708社)と栃木県(1,102→1,270社)の15.2%だった。次いで、富山県14.0%増(578→659社)、徳島県12.6%増(436→491社)、福井県12.5%増(399→449社)、埼玉県11.5%増(5,278→5,887社)と続く。

一方、前年より減少した13県では、東北が4県も含まれ復興需要の一巡を浮き彫りにした。減少率では島根県の9.4%減(363→329社)を筆頭にして、三重県9.1%減(1,070→973社)、大分県8.9%減(906→825社)、宮城県8.6%減(1,912→1,747社)、愛媛県7.9%減(884→814 社)、福島県5.6%減(1,405→1,327社)、鹿児島県5.3%減(1,111→1,052社)、愛知県2.9% 減(6,177→5,997社)と続く。このほか宮崎県が前年同数の775社だった。

2015年の新設法人数を「国税庁統計年報」に基づく普通法人数(最新は2014年度データ)で除して算出した「新設法人率」でみると、沖縄県が8.2%で最も高かった。

沖縄県は、全国平均より高めの失業率を背景に独立、起業意欲が高いほか、創業時に家族・親族などの支援が得られやすい土地柄などが影響しているとみられる。次いで、東京都6.9%、福岡県5.5%、千葉県5.1%、大阪府5.0%の順。これに対し、比率が低かったのは、新潟県2.6%、山形県2.6%、秋田県2.7%、福井県2.8%の順だった。

法人格別「農事組合法人」が前年より7割増

法人格別では、株式会社が8万9,756社(構成比71.8%)で全体の7割を占めた。次いで、合同会社が2万2,053社(同17.6%)、一般社団法人が5,557社(同4.4%)、特定非営利活動法人(N PO法人)が2,540社(同2.0%)、医療法人が1,416社(同1.1%)と続く。

前年比では、集落単位で農家が各自の農地を持ち寄り、農機具の共同所有や、農作業を行う農事組合法人が70.8%増(439→750社)と伸びが目立った。農業生産で非課税の利点があることも影響した。また企業保有の不動産などの資産を譲り受けて証券化する、特定目的会社が24.4%増(127→158社)で不動産市場の活況を反映した。

一方で、介護老人保健施設や有料老人ホーム経営などの社会福祉法人が前年比22.6%減(235→182社)、特定非営利活動法人(NPO法人)が同11.4%減(2,866→2,540社)と減少した。また、高い専門性などのニーズに応えるため法人化が進む専門資格職業の「士業」では、社会保険労務士法人が同50.0%増(66→99社)、税理士法人が同14.9%増(282→324社)だったが、弁護士法人は同1.9%減(103→101社)と前年を下回った。