投資先としても魅力的!? ジョホールバルの『イスカンダル計画』

「マレーシアのジョホールバルで、大規模な都市開発『イスカンダル計画』っていうのが進められていて、不動産投資の候補として面白そうなんだけど、投資セミナーに行ってみない?」

友人に誘われ都内の某高級ホテルで行われた投資説明会に参加してみた。担当者が気候や物価、英語の教育環境など移住先としてのマレーシアの魅力を次々とアピールする。最近では不動産価格高騰に悩むシンガポール人が、国境を挟んでマレーシア側に不動産を買う例も増えているらしい。実需が旺盛な分、移住せずとも投資先としても魅力的だという。

80平米の2LDKの新築マンションが約3,000万円。マンションの建設前の前売り(プリセール)価格だ。東京都葛飾区の新築マンションとほとんど同じ価格で驚いた。完成と同時に「竣工プレミアム」を2~3割上乗せして転売できるという。なんだか胡散臭くてとても買う気にはなれない(と言っても、買いたくても買えないが…)。だがそうした筆者の思いとは関係なく、「今回は特別に1ユニットだけ販売枠が残っている」という担当者の売り文句に、会社の役員風の男性は個別相談を申し出ていた。

イスカンダル計画とは何やら大げさな名前だが、『宇宙戦艦ヤマト』に出てくる「イスカンダル星」とは関係はない(はず)。同計画が進められているジョホールバルといえば、1997年サッカー日本代表が初めてワールドカップ出場を決めた「ジョホールバルの歓喜」で知られる。シンガポールと海峡を挟んで向かい合う街だ。「イスカンダル計画」の実態を調べるべく、週末を利用して、マレーシアの首都クアラルンプールとジョホールバル、そしてシンガポールに行ってみることにした。

「エアアジア」を利用してクアラルンプールへ--意外に"アバウト"な面も

マレーシアといえば、日本でも知られるようになった格安航空会社(LCC)エアアジアの本拠地だ。さぞかし安いだろうと思ってエアアジアの料金を調べてみたが、羽田-クアラルンプール往復で5万8,000円。旅行会社のツアー商品でも6万円代のものがあるくらいなので、決して安くはない。とはいえ、LCCの乗り心地を確かめたかったので、エアアジアを選んでみることにした。

エアアジアの機内。普通の飛行機と変わりがない

予約からチェックインまで全てネットで完了する。ウェブチェックインを済ませ、搭乗券を印刷して持参すればよいのだが、そこには「7キロ以上の荷物には追加料金が必要」とデカデカと書かれていた。荷物を預けるのは全て有料。機内持ち込みでも無料なのは、7キロ以内で1個までだ。

今回は仕事ではなかったから良かったものの、パソコンその他諸々の仕事道具やスーツを持ち運ぶビジネスマンには"7キロ制限"はキツい。搭乗口に行ってみると、案の定、ビジネスマンらしき人はいなかった。搭乗前に荷物の重さを量られるのかと予想していたが、何も調べられることなく、機内に乗り込んだ。結構、アバウトだなという印象だ。

席はほぼ満席。座ってみた感じでは特に狭いということもない。ただ、モニターが付いていないので、映画を見て暇つぶしということができない。客室乗務員には日本人スタッフも何人かいた。遅れがよく指摘されるLCCだが、定刻出発。約8時間でクアラルンプールに到着した。

売店にビールはなくイスラム国を実感、コーラには「ハラール」のマーク

到着してから知ったのだが、着いたのはLCC専用空港だった。クアラルンプールの市街地からは50キロ離れていて、バスで1時間半かかる。これだけが唯一不便なことだった。途中で気が付いたのは、多くの分譲住宅があったことだ。しばらくナツメヤシの林の中を抜けていったが、高速道路に入ると真新しい戸建て住宅がいくつも見えてきた。

LCC専用空港からクアラルンプールに向かうバス内。男性が読む新聞をのぞくと、サムスンの広告だった

市街地が近づいてくると、有名なツインタワーが遠くに見えてきた。同時に大渋滞にはまってしまった。午前8時ごろであったため、朝の通勤ラッシュなのだろう。イオンモールまである。すでに発展途上国でなくなっていると感じた。

クアラルンプール中央駅でバスを降りる。ちょっとトイレにと駅の中に入ると、その近代的なことに驚かされた。改札は全て自動で、整然と列車に乗り込んでいた。北海道の観光宣伝の看板も見かけることができた。

クアラルンプール中央駅にある、「北海道」の広告

朝だというのに、30度は超えていそうだった。この暑さだけが東南アジアを感じさせてくれる。旅に出たという開放感も手伝って、缶ビールを飲もうと売店のドリンクコーナーを覗いたが、ビールはなかった。やはり、イスラム国だからだろうと想像した。その代わりにコーラを買ってみると、側面に見慣れぬマークがあることに気が付いた。「ハラール」のマークだ。

ハラールマークが入ったダイエットコーラのペットボトル

イスラム教では、豚肉を食べてはならないという戒律があるが、それ以外にも食肉の処理方法、輸送方法などについて細かな規則が定められている。マレーシアは、この「ハラール」の認証で、イスラム教各国でのビジネスの拡大を狙っている。

後から気が付いたが、マクドナルドの店頭にもきちんとこの「ハラール」マークが掲げてあった。マクドナルド、ケンタッキー・フライド・チキン、スターバックス、セブン-イレブン、伊勢丹、紀伊国屋書店など、日本でもみかける店舗が街のいたる所にあった。

街はどこでも清潔、「こういう街って、すごく伸びそうだよね」

クアラルンプール中央駅からモノレールに乗り込む。クアラルンプール市内はモノレールや鉄道などが縦横無尽に張り巡らされている。交通機関の発達度合いは、東京までとはいかないが、名古屋ぐらいと想像してもらえばいい。車内はガンガンに効いたエアコンが気持ちいい。目指すのは屋台が沢山出ているというブキビンタンという地区。近くの駅から歩いて向かうことにするが、やはり外を歩いていると暑い。ショッピングモールがあったので一休みにと入ってみると、多くの店が閉まっていた。この日は金曜日。外資のチェーン店ではなく、地元のお店は安息日である金曜日は休みなのだ。ブキビンタンに行ってみると、イスラム教と関係がない中華料理店は普通に営業をしていた。

イスラム教の休日である金曜日。ショッピングモールの多くの店はシャッターがおりている

イスラム教徒の女性が被るスカーフを市場で売っていた。カラフルな柄が多い

パン屋さんでも、スカーフを被る女性店員

食事を済ませると、クララルンプールの顔ともいえるペトロナスツインタワーに向かった。88階建て、452メートルの高さは、ツインタワーとしては世界一。昼時のタワー周辺のオフィス街は、東京の大手町と何ら変わらない様子だ。正午を過ぎると昼食をとるため日傘をさした女性たちが思い思いの店に入っていった。

タワーの下には、伊勢丹など日本でおなじみのお店が多く入る

タワーからの風景。高いビルが沢山見える

お昼時のオフィス街

クアラルンプールでは、どこでも掃除が行き届いていた。街中はもちろん、店舗、レストラン、ホテル、ほとんどどこでも清潔さが保たれていた。「こういう街って、すごく伸びそうだよね」と友人が目を輝かせていた。

クアラルンプールの話が長くなってしまったが、次回、「イスカンダル計画」について報告する。