ソニーは20日、バランスド・アーマチュア方式を採用したインナーイヤータイプのヘッドホン11製品を発表した。ラインナップは“リスニングタイプ”の「XBA-1SL」「XBA-2SL」「XBA-3SL」「XBA-4SL」と、iPod/iPhoneの操作が可能なリモコンを装備した「XBA-1IP」「XBA-2IP」「XBA-3IP」「XBA-4IP」、デジタルノイズキャンセリング機能を内蔵した「XBA-NC85D」、Bluetoothヘッドセット「XBA-BT75」、スポーツ向けモデルの「XBA-S65」。

発売日は、XBA-BT75のみ11月21日で、他のモデルは11月10日。価格は、XBA-1SLが7,455円、XBA-2SLが18,375円、XBA-3SLが24,675円、XBA-4SLが30,975円、XBA-1IPが8,715円、XBA-2IPが19,635円、XBA-3IPが25,935円、XBA-4IPが32,235円、XBA-NC85Dが43,050円、XBA-BT75が24,675円、XBA-S65が8,715円となっている。

フルレンジタイプのバランスド・アーマチュアドライバを1基搭載した「XBA-1SL」

フルレンジ+ツイーターという2基のバランスド・アーマチュアドライバを搭載する「XBA-2SL」

フルレンジ+ツイーター+ウーファーの3基のバランスド・アーマチュアドライバを搭載する「XBA-3SL」

フルレンジ+ツイーター+ウーファー×2の4基のバランスド・アーマチュアドライバを搭載する「XBA-4SL」

今まで、同社が発売してきたダイナミック型のヘッドホンには「MDR」で始まる型番が付けられていたが、バランスド・アーマチュアドライバを採用したモデルには、「XBA」から始まる型番が付けられる。もちろん、同社がダイナミック型の採用をやめて、全てバランスド・アーマチェア型に移行するというわけではない。音楽のジャンルやソースのフォーマットなどにあわせるため、両タイプをリリースしていくとのことだ。

バランスド・アーマチェア型は、ハイエンドなカナル型ヘッドホンなどによく採用される方式。一般的に使用されているダイナミック型のドライバが、コイルの取り付けられた振動板の振動によって音を発生する、いわば小型のスピーカーのような構造であるのに対して、バランスド・アーマチェア型のドライバは、振動子(アーマチュア)と呼ばれる金属の部品が磁石側に取り付けられており、この振動をドライブロッドで繋がれた振動板に導き、音を出す構造となっている。

レコードカートリッジのMMとMCの違いのようなものだが、カートリッジの場合は、コイル側が動作するMCタイプのほうが動作する部分の質量が少なくなるののに対して、ヘッドホンでは、バランスド・アーマチュア型のほうが少なくなり、より微細な音の表現が可能となる。また、ドライバ自体も、ダイナミック型と比べて小型化が可能で、同社のダイナミック型ドライバの体積が、13mm径で340mm3、9mm径で130mm3であるのに対して、今回採用されているバランスド・アーマチュアドライバの体積は80mm3となっている。

バランスド・アーマチェアドライバを採用したヘッドホンでは、ドライバを1基だけでなく、複数搭載しているものも少なくない。これは、バランスド・アーマチェアドライバの音域の狭さを解消するためで、スピーカーで言うところのツイーターやウーファーといったように、音域の異なるドライバを組み合わせることで、広い音域をカバーしようというものだ。

今回発表されたモデルでは、リスニングタイプ「SL」とiPod/iPhone用モデル「IP」の型番に付けられている数字が、そのまま使用されているドライバユニットの数となっている。ユニットの構成は、XBA-1SL/1IPがフルレンジ、XBA-2SL/2IPがフルレンジ+ウーファー、XBA-3SL/3IPがフルレンジ+ツイーター+ウーファー、XBA-4SL/4IPがフルレンジ+ツイーター+ウーファー×2。再生周波数帯域は、XBA-1SL/1IPがが5Hz~2.5kHz、XBA-2SL/2IPがが4Hz~2.5kHz、XBA-3SL/3IPがが4Hz~2.8kHz、XBA-4SL/4IPが3Hz~2.8kHzとなっている。

ハウジングの後ろ側には、ドライバの数がマークによって示されている。写真は、左側がドライバを2基搭載した「XBA-2SL」で、右側が4基搭載した「XBA-2SL」。このマークは、ドライバの数だけでなく、その配置されている形状も示している

一般的なバランスド・アーマチュアドライバを採用したヘッドホンでは、ドライバユニット自体をそのヘッドホンメーカーが製作しているのではなく、外部から調達しているケースが多い。それに対し、今回のモデルに使用されているドライバユニットは、すべてソニー製。

これにより、ドライバレベルでの音質コントロールが可能となった。一般的なバランスド・アーマチュアドライバがパイプ形状のエアーダクト構造を採用しているのに対して、フラット形状のエアーダクト構造を採用している点が代表例だ。また、複数ユニットを搭載したモデルでも、一般的なバランスド・アーマチュアドライバを採用したヘッドホンに比べて、かなり抑えた価格設定となっている。

全てがハウジング内に納められた「XBA-NC85D」「XBA-BT75」

ノイズキャンセリングヘッドホンでは、ヘッドホン自体のパーツに加えて、外部の音を拾うためのマイクやノイズキャンセリング回路、電源、操作系などが必要となる。そのため、ノイズキャンセリング回路やバッテリー部分などは、操作系とまとめて、コントローラーボックスという形で、ヘッドホン本体とは別ユニットとして装備されているケースが多い。Bluetoothヘッドホン/ヘッドセットの場合も同様だ。

XBA-NC85D/BT75では、バランスド・アーマチェアドライバの小型という特徴を活かし、これらを全て本体のハウジング内に収納。別体型コントローラーボックスを持たないスマートなスタイルを実現している(XBA-NC85Dでは、操作スイッチのみ別体化)。また、XBA-NC85Dでは、充電用のコネクタも専用のものではなく、3極の3.5mmステレオミニプラグをそのまま利用する。製品には、USBポートに接続する3.5mmプラグ用充電アダプタが付属している。連続動作時間は約20時間。XBA-BT75では、充電池を内蔵したキャリングケースが付属する。連続動作時間は約3.5時間だが、キャリングケース側のバッテリーで、XBA-BT75を2.5回フル充電することが可能だ。

バッテリーが内蔵されているとは思えないぐらいコンパクトなXBA-NC85Dのハウジング

充電は、3.5mmステレオミニプラグで行う。奥に置かれているのが、USBポートに刺して使用する充電アダプタ

Bluetoothヘッドセット「XBA-BT75」

バッテリーを内蔵したキャリングケース

洗えるスポーツモデル「XBA-S65」

XBA-S65は、「ダイナミック型に比べて外部との空気の出入りが少なく高密閉性」というバランスド・アーマチュアドライバの特徴を活かしたモデル。防水レベルはIPX5/7で、1mの水中に30分沈めても浸水せず、あらゆる方向からの噴流に対しても問題が発生しない。汚れた場合、水で洗うことも可能だ。装着方法はイヤーループ式で、ループ部分の大きさが自由に変えられるようになっている。

防水スポーツタイプの「XBA-S65」

アジャスティブルタイプのループハンガー