FXオンラインジャパン ストラテジストの森宗一郎です。市場の期待感と不安感が入り混じっている地合いの中、今週は来週の米雇用統計に向けて、リスク思考が持続できるかどうかが注目されます。

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先週末のG20では期待するほどの話題を提供するより、新興国の台頭、ソブリンリスクへの懸念、そして日本の疎外感が再認識された?という感じで、市場への影響はあまりなさそうです。むしろ、週末のEU/EMFに対して支援を要請したギリシャの話題がどの程度波及するのかどうかが、週明けのポイントでしょうか。

その後は、ゴールドマン・サックス、FOMC、金曜日の米経済に関連する話題が、NY時間に追加という展開でしょうか。

メディア等でも、皆様ご覧になれるかと思いますが、先進国の経済に関しては、どうにか一部で明るい兆しが出てきているものの、金融政策面においてはまだ足踏み状態。

一方、新興国は、一部のバブル懸念が出てくるなど投資家(いや、投機家も含めて?)の資本流入に過敏になるほど、経済状態は良い状態。そのため、これらの新興国投資に関連するポジションの積み上がりは依然高水準なうえ、BRICsの当局者たちは、二桁の成長率の響きは良いものの、過熱感という点では神経質になっているのではないでしょうか? 先週はインドが政策金利を引き上げ、ブラジルも今週の金融政策会合でどのようなアナウンスをするのか。

また、人民元の話題で揺れ動いている中国も、不動産投資に対する抑制策を打ち出すも過熱感を抑えられにくい状態では、さらなる引き締めをどのように行い、政策金利の引き上げまで踏み出すのかどうか、とある意味良い話題で新興国に対して市場は見ています。

そして、NY時間の話題となるゴールドマン・サックス、FOMC。前者は、徹底抗戦の姿勢となっていますが、市場では似たような取引が他の金融機関ではなかったかどうか、いや、ほかの方法でうまく乗り切った者はいないのであろうか?とやはり、情報開示に絡んで、法外な報酬をもらっている金融機関に対する風当たりはかなり強いです。

オバマ大統領も、わざわざウォール街まで出て演説をするぐらいですから、金融街の外では圧力がかなりあるようで、欧州当局ともからんで、今後の金融規制法案がどの程度進むのかが、今回の公聴会の材料になるかもしれません。この点を踏まえれば、米企業マインドの改善があるとはいえ、金融関連銘柄に関してはやや上値が抑えられやすい地合いが週前半はあるかもしれません。

また、翌日のFOMC声明において(FOMCは2日間にわたって会合)、最近の米企業業績発表と経済指標を受け、どの程度一歩踏み出して正常化への道のりを示してくるのかどうかを注目しておきましょう。地方経済との温度差があるために、急展開というシナリオはまだ描きにくいですが、ポジティブな話題には反応しやすい地合いになっており、下値固めとなるかどうか。

ただ、やはり、ギリシャの話題はいくら支援を要請したとはいえ、ソブリンリスクの火種はまだくすぶっている状態です。

前政権が残してしまった放漫財政の付けとはいえ、現政権はかなり厳しい対応を迫られています。ギリシャ国民はなぜすぐ対応できなかったのか? と憤慨し、24日の世論調査では3分の2が対応が遅かったと思っているようですが、前政権に対してはどのような意見を持っているでしょうか。

とはいえ、ドイツのショイブレ財務相は、ギリシャの経済改革が必ず実行されることが条件と示し、もう一方のコア国であるフランスのラガルド仏財務相は、ギリシャは09年の国内総生産(GDP)比で13.6%に膨らんだ放漫財政に責任があると指摘し、欧州諸国はギリシャの状況を監視し、約束を守らないようならブレーキを踏むことも必要との認識を示しました。これに対してギリシャのパパコンスタンティヌ財務相は、既に厳しい措置を講じており、支援条件は厳しいと反論しているようですが、国民からの圧力はあるなかで、過去のIMF支援を受けたデフォルト国に対する構造改革要求、国民の負担、などを考えれば、スペインも実行に移そうとしている年金支給開始年齢の引き上げなど、もう少し踏み込んだ実効性が示すことができるかどうか。

また、実際に実行に移せるかどうかという点でも市場関係者は慎重になっており、ユーロの反発も限定的ですし、ドイツ国債との利回り格差も依然高い水準です。市場としても、やはりソブリンに関連するリスク回避の話題は、まだ継続すると思っているのでしょう。

そう考えますと、IMMポジションで見たユーロのショートが縮小されたとはなかなか言いにくいです。市場としては、1.3000を狙っていく展開が高くなっているとみているようです。

EURチャート

4/20/10 week 4/13/10 week
Net -50,338 -55,746
ユーロ 4/20/10 week 4/13/10 week
Net -71,424 -55,464
ポンド 4/20/10 week 4/13/10 week
Net -49,298 -57,391
豪ドル 4/20/10 week 4/13/10 week
Net 78,904 80,674

そして、このソブリンリスクの話題ですが、財政赤字という点では、欧州内ではイギリスに対する格付け引き下げの話題もありますが、日本はどうなんでしょうか? 貯蓄率が高いことなどから問題視されにくかった?と思いますが、長引く景気低迷と高齢化に伴いその貯蓄率も鈍化しており、財政再建という点では日本は急務です。

ましてや、海外投資家においてはアジア戦略・アジア投資という視点では、あえて日本をはずすというリクエストも出ているとかで、資本流入という点でも疎外感があるのでは、さらに税収が減少する可能性があります。

格付け機関においても警鐘を鳴らしていることから、欧州域内でのソブリンリスク波及だけではなく、日本への飛び火というある意味身近な影響というリスクを考えたほうが良いかもしれません。

このように見ていきますと、新興国への魅力はありながらも、NY時間のイベント(業績発表もまだ続きます)で米資本市場とUSDがどの程度リスク思考で地合い改善していくかどうかを見極めつつ、ソブリンリスクの話題で、どの銘柄をショート戦略とするかを考えたほうがよさそうです。

今週の主な予定

4月26日(月)
(日)3月企業向けサービス価格指数
(休日)オーストラリア[アンザックデー]
4月27日(火)
(豪)第1・四半期PPI
(ユーロ圏)5月独消費者信頼感指数
(米)2月S&Pケース・シラー住宅価格指数
(米)4月消費者信頼感指数
(米)財務省2年債入札
(米)FOMC(28日まで)
(その他)ブラジル中銀、金融政策決定会合(28日まで)
ゴールドマンに対する公聴会
4月28日(水)
(日)3月商業販売統計
(豪)第1・四半期CPI
(米)MBA住宅ローン・借換え申請指数
(米)財務省5年債入札
(米)FOMC(声明発表)
(その他)ブラジル中銀、金融政策決定会合
4月29日(木)
(NZ)RBNZ、政策金利発表
(ユーロ圏)4月独失業率
(ユーロ圏)3月M3
(ユーロ圏)4月景況感・業況感指数
(米)新規失業保険申請件数
(米)財務省7年債入札
4月30日(金)
(日)日銀金融政策決定会合
(日)3月・2009年度全国コア消費者物価指数
(日)4月東京都区部コアCPI
(日)3月有効求人倍率
(日)3月完全失業率
(日)3月鉱工業生産速報
(日)白川日銀総裁会見
(ユーロ圏)3月仏生産者物価指数
(ユーロ圏)4月消費者物価指数速報値
(ユーロ圏)3月失業率
(米)第1・四半期雇用コスト指数
(米)第1・四半期GDP -速報値-
(米)4月シカゴ地区購買部協会景気指数
(米)4月ミシガン大消費者信頼感指数 -確報値-