私はかれこれ20年近く、家計のやりくりの取材をしてきました。その中には、貯蓄が1,000万円以上ある人も、少なくありませんでした。その人たちが、とりわけ収入が多いというわけではありません。年収300万円台(手取り)というケースもたくさんありました。

また、お金を使わないケチケチ生活をして、ギスギス暮らしているわけでもありません。要するに、お金のやりくりが上手なのです。ということは、そのやりくりの仕方をまねすれば、誰でも1,000万円貯めることが可能というわけです。是非今日からまねしてみてください。

"おうちごはん"にかかる食費を上げる

食費を上げるとお金が貯まる!? ……そんなバカな!? と思う人が多いと思います。家計の出費を抑えるには、食費を減らすことが手っ取り早いというのがやりくりの定石だからです。もちろん、お得に買った食材を食べきって食費を減らすことが家計の支出額を抑えることにつながるのは間違いありません。そして、支出が減った分を貯蓄に回せるのも確かです。

ただし、それはやりくりの基本をマスターしている人の場合に当てはまること。まだそこまでたどり着けていない人の場合は、お金を貯めようと思うのなら食費を上げてみることが有効なのです。

「食費を上げる」といっても、外食費や市販のお惣菜、お弁当代にお金をかけるというわけではありません。「外食エンゲル係数の高さは、お金が貯まらない度に比例する」と私はかねがね実感しています。上げてもいい食費とは、"おうちごはん"にかかる食費のことです。

"おうちごはん"にかかる食費を上げるとお金が貯まる? (画像はイメージ)

食生活の乱れはお金の乱れ

「食費を上げるとお金が貯まる」と思ったのは、先日、取材させていただいた方のお話からでした。彼女は、20代前半は絵に描いたような浪費生活を送っていました。洋服好きなので流行のファッションを追う。ちょっといいなと思った服は買う。でも、すぐに飽きる。そしてまた買うの繰り返し。ブランドものも好きで、ブランドバッグもクロゼットにたまっていったそうです。

とはいうものの、20代前半の普通の会社員ですから、手取り給与は20万円台前半。服やブランドバックを買いたい放題できるわけがありません。彼女は服やバッグにお金をかける分、食費を切り詰めていました。もともと食べることにあまり関心がなく、料理も苦手だったので、夕飯がポテトチップスでも平気。カップラーメンが続いても、「なんとも思わなかった」と言います。服やバッグはたくさんあるけど、食事はカップラーメン、そして貯金もないという生活を送っていたというわけです。

そんな彼女が、自分がやりたいことに出会いました。ところが、お金がなくてその目標を断念せざるを得ませんでした。貯金はないのに、家のクロゼットには着なくなった服や飽きてしまったブランドバッグがゴロゴロある。「自分が今まで何にお金を使っていたのかと思いました」と彼女は言いました。

ここが、彼女の"貯まる生活"へのターニングポイント。お金を貯めるために、服やバッグをむやみに買わなくなりました。そして、仕事帰りにショップに寄らず早く帰宅するようになったので、家での食生活を見直すようになったそうです。

食生活が整うと暮らしが整う

「食べること=生きること」です。食生活を大切にすると心が豊かになり、なぜか自然と暮らしが整うものです。外食や市販のお弁当頼みの食生活ではなく、簡単なものでも家で作る"おうちごはん"にします。すると、家で過ごす時間が長くなるせいもあるのでしょうが、暮らしを見直すきっかけになるというわけです。

お金を貯めるにはライフスタイルがポイント。食費が多少高くなっても、食生活を大切にすると暮らしが整い、暮らしが整うとお金が貯まるという好循環につながっていきます。

※画像は本文とは関係ありません


村越克子
フリーランスライター。学習院大学文学部心理学科卒業。編集会社を経て、フリーに。主婦を読者対象とした生活情報誌を中心に執筆。家計のやりくりに奮闘する全国の主婦を取材し、節約に関する記事を数多く手がける。執筆協力に『綱渡り生活から抜けられない人のための絶対! 貯める方法』永岡書店など。