先日「iPod nano」と「iPod shuffle」の販売が終了した。今後Appleの純粋な音楽プレーヤーは「iPod touch」に一本化される。2000年代に音楽プレーヤーの一時代を築いてきたiPodは、スマートフォン全盛の時代に、これからどこへ向かうのか。また、音楽プレーヤーが果たすべき役割についても改めて考えてみた。

iPod nano

iPod shuffle

iPodが販売開始されたのは2001年のことだった。当時の日本国内の音楽プレーヤー事情を振り返ると、ソニーの「ウォークマン」はカセットテープからCDやミニディスク(MD)を中心とした光記録メディアを使うものへ完全に切り替わっていたし、シャープやケンウッド、パナソニック、アイワなどもその流れに続いていた。

筆者も通勤時間にはCD/MDウォークマンを併用して音楽を聴いていたものだが、CDプレーヤーは一緒にCDを持ち歩かなければないのが面倒でならなかった。かたやMDは市販のコンテンツが少なかったので徐々に使用頻度が下がっていた。

そんな折に登場したiPodは、パソコンとiTunesを使ってたくさんのCDを音楽ファイルとして取り込んで持ち歩ける、衝撃的に便利なポータブル音楽プレーヤーだった。発売当初はMacのみ対応していたが、2002年にWindows互換のあるiPodが発売されてから、筆者のまわりは瞬く間にiPodユーザーであふれかえったことを覚えている。

やがて間もなく、iPodの後を追うように国内外のオーディオメーカーがMP3やWMAといったフォーマットの音楽ファイルを再生できるHDD内蔵のプレーヤーを発売。ポータブル音楽プレーヤーの主流は、CD/MDからパソコンで取り込んだファイルを再生するものへと急速に切り替わっていった。

日本が世界に誇る音楽プレーヤーと言えば、誰もがソニーのウォークマンシリーズを思い浮かべるはずだ。iPodが発売された頃、ソニーは一足先にメモリースティック型のウォークマン「NW-MS7」を発売して、CDから取り込んだ音楽ファイルを聴くというスタイルを提案していた。

ソニー「NW-MS7」(1999年)

ところが、より音が良いとしていた独自規格「ATRAC3」に変換したファイルしか再生できなかったため、MP3やAAC、Apple Losslessといった幅広いファイル形式をサポートするiPodに大きく水をあけられてしまった。2004年に発売されたウォークマン「NW-HD3」がようやくMP3再生に対応した時点では時すでに遅し、iPodとの間には完全な差が付いてしまっていた。特に欧米では、ウォークマンはしばらく苦難の時を迎えることになる。

ソニー「NW-HD3」(2004年)