有機ELディスプレイには映像表現に独自の強みがある一方で、克服すべき課題もある。それぞれのポイントを捉えて、REGZAはどのように克服しているのだろうか。

例えば有機ELは、次のフレームが画面に映る直前まで前のフレームを表示し続ける「ホールド型表示」の映像ディスプレイであるため、視聴者は視覚が捉えた直前のフレームが残像として頭の中に残る「動画ボケ(ホールドボケ)」の影響を受けてしまう。これを解消するために、X910シリーズでは毎フレームに黒色の画面を挿入して動画ボケを解消する「ハイクリア/ハイモーション」駆動モードを乗せて、よりクリアで精彩感のある映像を楽しめるようにした。

ハイクリア/ハイモーション駆動により、ホールドボケを低減する

また、高い動画応答性能を持っているがゆえに、もとのコンテンツに入っているランダムノイズも忠実に再現してしまいがちだ。ディスプレイの特性を把握したうえで、高性能な映像処理エンジンによってノイズを効果的に打ち消し、有機ELに最適な映像にチューニングしたことを、住吉氏はREGZAならではの強みとして語っている。複数メーカーの有機ELテレビを見比べる際には、そのメーカー独自の高画質化技術を詳しく知ることが大切だ。

さらに有機ELは、液晶に比べて寿命が短いと言われることもある。山口氏は「テレビの明るさが半分になった時点を寿命として捉えるのであれば、REGZAは液晶・有機ELともに3万時間を超えていることを独自のテストで確認しています」とし、家庭で楽しむ普通のテレビとして問題のない性能を担保できていると語っている。

経営企画部 山口孝一氏

画素自体が発光する有機ELの場合、一般的には同じ画面を長時間にわたって表示し続けたときに、その部分に「焼き付き」と呼ばれる現象が発生することがある。焼き付きが起きた箇所は明るさが低下してしまい、結果として映像体験の低下を招くことにつながる。

ブラウン管テレビの時代からこの課題に取り組んできた東芝では、映像の固定表示を検出した場合、画面の明るさを自動で制御したり、画素をずらしながら表示することで焼き付きを防止する技術を有機ELのREGZAにも組み込んでいる。「もっとも、固定パターンを一定時間出し続けない限り、普通にテレビで動画を見る範囲であれば気にする必要もほとんどないはず」と石橋氏は話す。