世界最大級のエレクトロニクスショー「CES 2017」が1月5日(現地時間)に開幕。さっそく、メイン会場のひとつLVCC (ラスベガス・コンベンション・センター)にあるサムスン電子のブースをのぞいてきた。

プレスカンファレンスでも「QLED」を連呼。量子ドットの優位性を繰り返しアピールしていた

エントランスをくぐると、そこは一面「QLED」の世界だった……。

QLEDとは「QD (量子ドット:Quantum Dot)」の技術を採用したテレビのこと。色彩感、コントラストや視野角を向上させるための技術として、かつては日本のテレビメーカーもシャープなどが取り組んでいたものだが、サムスンは近年のプレミアムクラスのテレビに、画質向上の決め手となるテクノロジーとして採用し続けてきた。

今年から上位クラスのラインナップを統合するコンセプトネームとして「QLED」を強く打ち出す方針を決めたようで、ブースの至る所にQLEDのアルファベット4文字を踊らせていた。ちなみに、昨年まで上位シリーズのコンセプトネームは「SUHD」(Superior、Specialなどの意味を持たせた"S"を冠するUHD=4Kテレビ)で、同じく量子ドットの技術を使っていた。

フラットパネルと曲面パネルの2種類を展開する

2017年のモデルは、上位機種「Q9」「Q8」「Q7」の3シリーズを中心に、4K HDR対応を押している。4日に開催されたプレスカンファレンスでは、北米でサムスンが4Kテレビの販売シェアを46.4%獲得していると、好調ぶりをアピールしていた。

8K解像度のQLEDテレビの試作機を展示。サイズは98型と65型

ブースにはカーブドディスプレイを採用するテレビを含めたQLEDのプレミアムモデルが一堂に並べられていた。映像をチェックすると、確かにぱっと見の色彩感は鮮やかで目を惹かれるが、ややコントラスト感がきつく、長く視聴していると目が疲れてきそうな気がした。画面に表示される自然の風景などをチェックしてみても、草木の輪郭はそれなりに精彩感があるのにも関わらず、やや平板な印象も受けてしまう。

テレビの展開に合わせて4K HDRコンテンツも独自のVODプラットフォーム「TV PLUS」で充実させる

サムスンが欧米、東南アジアなど自社のテレビを販売する国々で展開するVOD (動画配信)プラットフォームサービス「TV PLUS」は、昨年末に40,000タイトルの配信数を達成。ハリウッドの映画や音楽ステージ、各地域で放送されているIPテレビ放送のチャンネルなどを横串で射しながら検索して視聴できる。今年はここに4K HDRコンテンツを拡充していく計画があるようだ。また、今までなかったのが不思議な感じだが、iOS/Android対応のテレビ用リモコンアプリ「SmartView」もローンチされ、サムスンのインターネットにつながる上位テレビ(QLEDシリーズを含む)で使えるようになるという。

リモコンアプリ「SmartView」

ブースの一角には、確か2016年のCESやIFAでも出展していたQLEDの8Kディスプレイも並べられ、サムスンの先進性を来場者に向けてアピールしていた。

QDの優位性を多角度からアピール

テレビの他にもう一つ人だかりができていたのコーナーが、フロントドアに27.9型のタッチパネル液晶を積んだスマート冷蔵庫「Family Hub 2.0」だ。

インターネットにつながる冷蔵庫は、オンラインで検索した料理のメニューをディスプレイに表示したり、ホームネットワーク経由で映像や音楽を再生するといった使い方もお手のもの。本体にスピーカーを内蔵しているので、プラットフォームからアプリを追加すればSpotifyのストリーミング音楽再生なんかも楽しめてしまう。OSは、独自開発のTizen OSを搭載している。

サムスンはテレビと肩を並べる「スマート家電のコントロールセンター」、つまり中核としてスマート冷蔵庫を位置づけて、その多機能化・リッチ化に近年注力してきた。IoTやAIというバズワードは敢えて多用していないところに、スマート家電を欧米でいち早くリリースし、シェアを獲得してきた自信が感じられる。

スマート冷蔵庫「Family Hub 2.0」は北米でも大人気。声認識による操作も受け付ける

なお、毎年のことながらモバイル関連の展示については2月にバルセロナで大規模な展示会「MWC」が控えていることもあり、CESでは比較的"アリモノ"を中心に並べられることが多い。でも、今回はノートPCになるがIT関連の製品発表があり、新しいトピックも光るブースだった。秋に発表したスマートウォッチ「Gear S3」が好調であるためか、ブース自体が全体的に賑わっていたのが印象的。さすが北米で人気の高いブランドだ。だからこそ、日本でもサムスンのテレビや白物家電の実力をチェックできれば、と思ってしまったのは、筆者のわがままだろうか。その点、少し残念に思う。